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ブレイン・ストーミングとは?

2013 SEP 6 1:01:22 am by 東 賢太郎

今日はランチから始めて13-18時にひとつ、ディナーで20-22時にもうひとつ、2つのブレイン・ストーミングを行った。最初のはお客様である広島のM社長と彼が構想したある新規ビジネスについて5人で、夜のは大手ローファームのパートナーであるO弁護士と昨日出張に同行していただいたN税理士と3人で練っているあるビジネスプランについてだ。

ブレストは一般に4つの原則があるとされる。

①結論はなし②大胆な推論やアイデア歓迎③質より量を歓迎④アイデアを合体させ発展させる

である。これはMBAコースに学んだ人にはおなじみだが日本的方法ではない。日本人は結論が出ない会議は得意だが、それは会議のための会議というしょうもないやつだ。しかし①はそういうことではなく、あえて結論を出さないという目的を持った方法論だ。②の大胆な推論やアイデア、これは日本人は不得手だろう。心では名案と思ってもこんなことを言うと馬鹿にされるのではと空気を読んでしまう。③もそうだ。熟考の末に気の利いた案を1つだけ言うのが良しとされる。あれもこれもどうですか?というのはいかにも軽い。④も下手だ。折衷案という虻蜂取らずの中途半端な結論と同義語になりがちである。

いかにも米国流なのだが、これはゼロから何かを生んだり決めたりするときに非常に有効というのが僕の経験である。何がいいかというと、まず、何かを発表したり、説得したり、決めたり、採決をとったりしなくていいから参加者の気が楽だ。結論がいらないから間違っても許される。だからリスクを取った大胆な発想を披露できる。これがとてもいいのだ。大胆に大胆が屋上屋を重ねて、非常に面白い、それまで誰も気がつかなかったアイデアが出ることもある。ソニーのウォークマンがそうやって発案されたのは有名な事例である。

もう一ついいことは、質より量がルールなので何でも気軽に言えて口数が増え、疲れないのだ。現に今日は7時間もこれをやったのに、全然疲れていない。なぜならいつもしゃべって会議に参加しているからだ。人の話を黙って聞いているほど世の中でつまらないものはない。得てして証券マンはそれが大の苦手だ。僕など1時間もしたら確実に居眠りだ。野村を辞めてみずほに行って、2時間も3時間もそれに粛々と耐えられる銀行員の忍耐力には感心したものだ。そういう会議で何か生産的なアイデアが出たためしがないのにも同じぐらい感心したが。

僕は大学は法学部だったが、これまた講義をひたすら聞くばかりで退屈きわまりない。入試風景でTVによく出る法文1号館25番教室というばかでかい部屋で睡魔と闘う日々であり、必然的に足が遠のいてしまった。だから米国に留学してブレストの面白さはとても新鮮だったのだ。米国人の発言を聞くと、全米トップにもなったウォートン・スクールのMBAコースともあろうものが、小学生に毛が生えたようなアイデアが堂々と出てみたり、とんでもない知識レベル、例えば2次方程式が解けないみたいなことが発覚したりする。しかしそんなことを気にしたり笑ったり見下したりする者は誰もいない。

日本で、別にMBAを取ったわけでもないのに、ブレストを当然のようにやっているのは中小企業のオーナー社長だ。ワンマンももちろん多いが、幹部やときには若手代表も入れて喧々諤々やっている人もいる。ツイッターなどで意見を言って世間様とブレストしている経営者もいる。逆にやっていない最右翼は大手金融や重厚長大企業エリート幹部だろう。日本のリーディングカンパニーの意思決定が硬直化、ガラパゴス化していく一因はこういうところにあると思う。

①-④で最も重要なのは②大胆な推論やアイデア歓迎であると思う。目的は④アイデアを合体させ発展させる、にあるのだが、議論を弁証法的に大きく発展させるのは②だ。学生にお勧めしたいのは3人以上で模擬ブレストをやってみることだ。4人以上いるなら審判(ジャッジ)役を1人置いて、誰が議論を進めるのに貢献したか採点して競い合うとどんどんうまくなるだろう。議題は何でもいい。「駅前のつぶれかけのラーメン屋をはやらせる方法」はどうだろう。「クラスで一番モテないA男に一番美人のB子を口説かせる方法」なんてもっと面白くないか(B子を自分で口説くのは反則だ)。自分でビジネスをやるというのはそういうことを日々考えるということだから、役に立つこと保証つきだ。

 

某社との案件会議

Categories:______日々のこと, 徒然に, 若者に教えたいこと

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