ピッチャーは自信過剰か
2016 NOV 16 18:18:54 pm by 東 賢太郎
「ピッチャーというのは概ね自信過剰じゃないと務まらない」
西室オーナーの2016プロ野球 3強チーム影のオーナー鼎談(極秘) でそう発言してしまっているが、僕ごときの球歴でほんとうはそんな偉そうなことが言えたもんじゃないから少しいいわけをする。それは僕は野球の球を放る以外の偏差値は何ひとつ高くない少年であったことだ。
運動神経はないので投手しかやったことがない。おそらく理解されないが、ゴルフの女王だった不動裕理は体育が2だったとどこかできいた。同じ動作を繰り返す投手はゴルフに似ている。だから硬式の投手経験者で僕ほどそれだけという純粋培養もきっと珍しく、ほかに取り柄がないのだから自信を持つならそこしかなくて(現にそうだった)だから過剰なんだというのがいいわけだ。
でも結論をさきにいうと、わけわかんなくなるけど、過剰じゃないんだ。むずかしいが説明してみたい。まず投手は頼るのは自分だけなので自信がないと務まらない部分はたしかにある。なければ18メートル先から打者が思いっきり打ち返してくるマウンドにいるだけで命が危険だしこわい。こわいとストライクが入らない。だから最初のうちは自信が10だとすると12~3ぐらいに突っ張っていくイメージもあった。
しかし、ピッチャーはそういうカラ元気が役に立たないことを打たれるたびに思い知らされ、自分にシビアになる。お山の大将というイメージがあるのは身体能力の高いでかい人が多いからで、むしろ変化球の握りをマニアックに研究するオタク部分もあって(ダルビッシュがそうらしい)、僕は球の伸びオタクだからブルペンで伸びが悪いと試合前から今日はいかんと結果がわかってしまった。結構繊細なのであって、自分は説得できないから自信過剰にはなりようがないんだ。
一応野球少年はみんなピッチャーをやりたい。みなタマが速いがそれは当たり前で球筋というのがある。直球の質だ。野手には投げられないし高目は素人はまずバットに当たらない。それは将棋や囲碁の差みたいなもんで、アメリカ人のチームメートが打撃練習で20球で1球も当たらなかったと言ったのはやってきた野球がそういうレベルならきっと当たらなかったんだろうと思う(覚えてないが)。
あの大会、第1試合で優勝候補に11-2で大勝し、翌週の三菱商事戦は初戦をみた相手にビビり感もあって10-0の5回コールド7奪三振でノーヒットノーランだった。ピッチャーはどっかでこんな感じのやったぜ体験してる。してないと1、2度の大失敗でめげてしまう。めげたらそこが終点だ。あの伊良部いわく、そうやって一寸先が見えない霧の中を山に登って行ってどこかでもう限界だとなる。その地点が高校か大学かプロかメジャーかなんだそうだ、その世界は深遠で実感できないが。
だから自信過剰じゃないと務まらないかというとそうではなくて、基本的には成功体験だけ覚えてるアバウトさと、今日もそうなるさという楽観的なメンタルじゃないと剛球があってもピッチャーは苦しいと思う。どんなに自分を鼓舞しようと自分知ってるからまっさらなマウンドに登るのはいつも怖いし強そうな相手だとケンカと一緒でひるむ。いきなり四球だったり真芯で打たれると今日はダメかなとなってしまう。
米国の初戦、相手は優勝候補とはきいてたがよ~しやったろうじゃねえかと思ってた。ところが試合前のノック見てこりゃ凄いと思ってしまい、これがまずかった。先頭にストレートの四球、2番に初球を左中間二塁打と、5球で1点取られた。そこで「やばい、コロラドから飛行機でやってきて負けたらシャレにならん」と思った。あとは覚えてないが最終回に相手から「意地見せようぜ~」の声がでてやっと勝ったと思った。火事場の馬鹿力だ。普通は過剰な自信や気合ぐらいでそういうことは起きない。
日ハムの増井と吉川はプライドの問題よりもエヴェレスト登山してた人に、わるいな明日からアイガー北壁だみたいなもんだったろう。失敗したら誰が責任とってくれるの?もあったろう。プロのピッチャーは自営業者だからね。監督は人事権がないから店長みたいなものだけど栗山は選手実績ないからかえってコーディネーターに徹することができて日ハムの経営スタイルにうまくハマってる気がする。優秀なマネージャーだね。
西室オーナー、ピッチャーは偉そうなこと言うは人の話は聞かんわでいつも申しわけないが、実は小心ものなんだ。
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西室 建
11/16/2016 | 9:06 PM Permalink
東オーナー、
いやメチャクチャおもしろい!
繊細なところもある、ということだな。
もうちょっと解説してくれたまえ。
私は江夏投手のファンだったが、あのキャッチャーのサインに首を振って拒絶するスタイルにシビれていた。
あれはどういう心境なのかな。
江夏投手も確か『ピッチャーは繊細なものだ』と言っていた。
東 賢太郎
11/16/2016 | 11:55 PM Permalink
打たれるのが怖いんだよ、江夏みたいな絶対打たせないタイプのピッチャーは。ガラスのハートが傷つきたくない、でもキャッチャーはそこまで考えてそのサインを出してないんじゃないか?そういう時に首ふるな恐らく。黒田も渡米前はそういうタイプだったが、アメリカで打たせるタイプのピッチャーになって帰ってきた。その転換ってエヴェレストからアイガーより厳しいぞ。江夏も晩年はリリーフになって転換したが野村克也が口説き落とすのに大変な苦労したそうだ。