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東北海道の物語、その1(歴史の街、厚岸)

2014 SEP 10 15:15:41 pm by 中村 順一

急に思い立って、週末の土日で道東に行ってきた。北海道が好きなのだ。特に東北海道は特別だ。日本の他の地域にはない何かがある。

北海道は、札幌への集中が進んでいる。札幌は人口約190万人の日本第5位の大都会になった。でも北海道の他の地域の人口は減少している。道東も例外ではない。道東の最大の都市は釧路だが、かつて20万を越えていた人口は現在では18万人。今後も減少予想だ。でも道東には歴史もあるし、日本最大の大平原もある。北海道の中でも道東は歴史的に道央(札幌周辺)への対抗意識があり、人々は開拓に全力を尽くしてきたのだ。判官びいきの筆者は、そんな道東を応援してきた。

マイレージ活用の週末だけの短期旅行だ。飛行機のマイレージは直前にキャンセルしても、キャンセル料が3000円しかかからないのがいい。天気が悪くては意味がないので、金曜日まで、天気をチェックしていたが、まずまずそうなので、よし、行こうと決断。土曜の早朝のJALで釧路空港へ。その後、あこがれの根室本線(花咲線)に乗り、東へ。1両のローカル線で、超赤字路線だが、最果ての線路として、マニアには人気がある。1時間弱で厚岸に到着。

厚岸は道東では長い歴史のある街である。2回目の訪問であるが、前回は時間が足りず、十分に見れなかったので、再訪である。

厚岸は古来、東蝦夷地におけるアイヌ民族の居住地として栄え、松前藩は寛永年間(1624~44)にアッケシ場所を開設している。東北海道では最古だ。幕府はロシアの進出を警戒して、蝦夷地を幕府の直轄領に再編成し、人々の心の拠り所として3つの官立寺院を蝦夷地各所に建設した。東蝦夷地には、当時の中心地であった厚岸に”国泰寺”を開いた(設置の決定は1801年)。その後明治政府は近郊に屯田兵村を開設している。天然の良港に恵まれ、戦前は日本海軍も停泊地として使用していた。新鮮な牡蠣が一年中食べられることで有名。

さて、厚岸駅に着いた、早速タクシーをチャーター、費用はかかるが、効率よく観光するにはこれしか手はない。有名な”桜亭”という食堂で牡蠣にありつく。これが超美味。まずは大満足。昼食後、太田屯田兵村の記念館へ。記念館にいた女性は屯田兵村の歴史を語りだした。

「私の住んでいる家は、H家です。越後の古い武家で、本庄の地に城を持っていました。明治維新で没落した為に、当主の一大決心で、北海道の屯田兵に応募し、太田にやってきたのです。今でも、当時入植したところと同じ場所に住んでいます。私は、函館から嫁にきたのですが、H家とは血が繋がっていないので、未だに赤の他人です。今でも床の間に上がることは厳禁です。見合い結婚で主人とは結婚する前、ほとんど1~2回しか会っていませんでした。こんな昔の殿様の家に嫁に来るなんて、すごく大変なんです。この記念館での仕事も、私は歴史が好きなので、係員の募集があった時、是非やりたかったのですが、主人の親族から大反対がありました。私も頑張って、嫁の義務は必ず果たす、必ず両立させる、と約束して、やっと許してもらったんです。両立は結構大変で、今は毎日3時間くらいしか寝ていません。私の函館の実家は教育関係だったので、息子達の教育に関しては、私も必死でやりました。お陰様で、2人とも湖陵高校(釧路湖陵高校のこと、道東一の進学校、毎年東大に数人、北大に多数の合格者を出す)に入れました。学区域外からの受験だったので、すごく厳しかったんですけど。主人の親族からも評価してもらえました。」

いや、凄い女性だった。こちらが聞いてもいないのに、一方的に説明してくれた。どうも、H家には未だに明治の開拓時代の古い考え方が強く残っているようだ。H家以外にも、明治時代からの場所に住んでいる家はたくさんあるとのことだった。この女性の人生も大変そうだが、見るからに明るい性格、今後も何とか幸せに生きていくのだろう。ご主人の歳を聞いてみた。70歳とのことだった。歴史的には、太田屯田兵村は成功した事業とは言えない、との評価のようだが、ここには戦前の習慣がしっかり残っている。写真は撮らせてくれなかったが、女性の今後の人生の幸福を心より祈りたい。

女性と別れて、記念館の次は国泰寺に行った。徳川幕府が蝦夷地の教化を目的に作ったこの寺の所管は、十勝、釧路、厚岸、根室、国後、択捉の6場所に及んだ。ここの住職は定期的に所管地域を回っていたようだ。山門が当時のまま残っていて、扉には徳川家の表徴、”葵の紋”が彫り込まれていた。最上徳内、近藤重蔵、間宮林蔵等も訪れている。境内には近藤重蔵が色丹島から持ち帰った”色丹松”があった。

国泰寺の後は、見晴しのいい、”愛冠岬”へ。天気が良く、小島、大黒島もきれいに見えた。素晴らしい景色だった。(続く)

 

 
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