賛否両論、その1「フルトヴェングラー(前半)」
2013 MAR 9 11:11:24 am by
確か東京渋谷区の恵比寿に「賛否両論」という名のレストランがあります。行ったことはありませんが、東京駅構内にそのレストランで作っている「駅弁」が売られていて、その存在を知りました。
強く支持してくれる大ファンがいてくれる一方で、同じくらい強く否定するアンチの人が出るくらい、強烈な個性を持った料理を作りたいとの、オーナーの思いから名付けられたそうです。
そこで、クラシックの音楽家の中で、強烈な個性を持った人を、4〜5人、私なりに選び、「賛」と「否」との両面から私見(あくまで私なりの思い込みに満ちた私見です。)を述べてみたいと思い立ちました。
一人目の今回は、指揮者として没後60年近くになりながら、いまだに絶大なる人気を持つ、ウィルヘルム・フルトヴェングラーを挙げてみました。
「賛」の側面
何と言っても分かりやすくメリハリの効いた解釈・表現でクラシック音楽のファンを沢山生み出したことが功績だと思います。私自身も彼のベートーヴェン第5交響曲(1947年盤)や第9交響曲(1951年バイロイト盤)などがキッカケでクラシック音楽ファンとなりました。
やり過ぎなくらいテンポや強弱をいじりにいじり、手に汗握るスリルは他の指揮者では、まず味わえません。そのテンポもモーツアルトの交響曲40番第一楽章は全ての指揮者の中で最も速く、ベートーヴェンの田園交響曲の第一楽章は全ての指揮者の中で最も遅い、という具合に非常に極端なケースが多いです。
そして、上記に録音年を記したように、同じ曲を振っても、その時、その時で表現がかなり違って来るという点もフルトヴェングラーならではでしょう。指揮者の高関健さんはフルトヴェングラーの運命交響曲のレコードを8種類も持っていて、聴き比べているそうです。(東さんは、それ以上、お持ちかもしれません。)いわゆる「同曲異盤」がフルトヴェングラーほど数多くの種類が出ている指揮者は他にはいないでしょうし、そこに彼の凄さがあると思います。
「賛」の部の最後にフルトヴェングラーの名盤を私なりに3つ選んでおきます。
☆ベートーヴェン第9交響曲(1951年バイロイト盤、ライブ録音) ・・今では、終結部の異様な速さ等、異論を覚える部分もあるが、曲の捉え方 が他の指揮者とは全然違い、他の指揮者が振った同曲とは全く違う曲に聞 こえる。ライブ録音ならではの、一発勝負の気迫や集中力もすさまじい。
☆シューマン交響曲第4番(これは同曲唯一の録音) ・・スタジオ録音のために興奮し過ぎる彼の欠点が出ず、曲そのものの本質を 緻密に、かつドラマティックに描いている。
☆シューベルト未完成交響曲(1953年ベルリンフィル盤、ライブ録音) ・・これほど暗く激しい表現の「未完成」を私は聴いたことはありません。
長くなりますので、フルトヴェングラーの「否」の側面については、次回に記述させていただきます。
失礼いたしました。花崎洋
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東 賢太郎
3/9/2013 | 10:45 PM Permalink
僕のフルトヴェングラー原体験はブラームスの1番(52年2月10日、ベルリンフィル)のLPでした。完全に打ちのめされました。これと4番(48年)は同曲演奏でトップクラスと思います。ベートーベン5番、所有しているのは残念ながら高関氏に2枚及ばず6種類でした。録音年は37、43、47(5月25日)、47(5月27日)52、54です。いいと思うのは47年5月27日だけです。彼の演奏音源は一応市場に出ているものはほぼなんでも聴いているはずですが、正直申し上げて僕はあまり聴きこんでいるほうではないかもしれません。ライブで聴いたらといつももどかしくなってしまいます。第9も含め、僕がベートーベンを覚えたのはトスカニーニです。
花崎 洋 / 花崎 朋子
3/10/2013 | 2:52 AM Permalink
福田さん、コメント有り難うございます。振り返って見ますと、私が音楽に本当に入れあげておりましたのは、それほど一生懸命には勉強しなかった大学時代と、仕事が自分に合わず、上司との人間関係に悩んでいたサラリーマンの時代で、今の仕事に変わってからは、つまり人前である意味、自分を全てさらけ出し、完全燃焼させなければならなくなってからは、音楽との付き合い方にも変化が出て来たようです。つまり音楽に没入するというよりも、自分を癒す意味合いが強くなったり、とか。もう一つ、今の仕事に変わってからは、以前好きだった、ドラマや演劇を見るのが、逆に、嫌になってしまいました。福田さん、冷静に接するのも、ある意味では、「正しい反応の仕方」とも思えますが・・ 花崎洋
花崎 洋 / 花崎 朋子
3/10/2013 | 3:02 AM Permalink
東さん、コメント有り難うございます。ブラームス第1番の1952年盤は、がっちりとした造型の完璧な演奏ですね。ブラームスの4番の方は、東さんに貸していただきましたジュリーニの演奏を聴きましたら、第1楽章以外は、それほど良いとは思わなくなってしまいました。音楽のプロの方々とお話ししていても、フルトヴェングラー好きの人は、ほとんどいないように思います。何となく理由は推測がつきます。トスカニーニのベートーヴェンの交響曲でしたら、私は第3番英雄が好きです。花崎洋
東 賢太郎
3/10/2013 | 11:31 AM Permalink
バレンボイムはじめフルトヴェングラーになりたかった指揮者は多いですよね。高関氏もそうでしょうか。ブラームス4番を聴いていてひょっとしてヨッフムまでも?と思いました。フルトヴェングラーのいじめにあったカラヤンはトスカニーニに憧れましたがこれもひょっとして「アンチ」だったかもしれませんし、憧れても真似できないのはピアニストのホロヴィッツと似ているかもしれませんね。彼は多分強烈なオーラを放つ人で死ぬまで女性にもすごくモテたそうでオケの団員まで信者にしていたのではないでしょうか。それはバレンボイムやヨッフムでは無理だろうなと思います。カルロス・クライバーが長生きしていればもしやと思います。トスカニーニですが3番は僕も大好きです。ただ彼で開眼したのは実は1番で、目ても覚めてもこればかり聴いていた時期があります。
花崎 洋 / 花崎 朋子
3/10/2013 | 12:18 PM Permalink
東さん、有り難うございます。フルトヴェングラーが女性にモテたというか、女性にだらしなかった話は私も聞いたことがあり、隠し子が39人いたという噂とか、最後の正妻だったエリーザベト夫人も3人までは隠し子の存在を認めていたとか。
高関健氏のベートーヴェンはライブ演奏を聞いた限りは、速めのテンポの筋骨型の演奏で、むしろトスカニーニ的な印象を持っています。トスカニーニの第1番、私も気に入っております。手兵NBCとの晩年録音のCD、録音も良いですし、あとトスカニーニが壮年期に、BBCを振った1番も、とても印象に残っています。花崎洋
東 賢太郎
3/10/2013 | 6:42 PM Permalink
ありがとうございます。僕のはNBCでした。この1番とローマ3部作は僕には他に選択肢が必要ありません。ロッシーニ序曲集、メンデルスゾーンのイタリアもそれに準じます。ブラームスは4曲ともたまに聴きます(フィルハーモニアのが好きです)。ベートーベンはほかに2、3、9番をよく聴きます。彼はスタジオ8Hでもカーネギーホールでもテンポはほとんど変わりません。フルトヴェングラーとは完全に異質な演奏家ですね。
花崎 洋 / 花崎 朋子
3/11/2013 | 7:16 AM Permalink
そうですね。乾き切り残響のほとんどないスタジオと、残響豊かなホールで、テンポをあまり変えない、いかにもトスカニーニらしいと思います。ローマ3部作、イタリア交響曲は、非の打ち所のない名演だと私も思っています。