Sonar Members Club No.36

月別: 2017年2月

島津征伐

2017 FEB 27 19:19:27 pm by 西 牟呂雄

 総勢20万ともいわれる大軍勢を率いて九州に上陸した秀吉軍は、精強を持って九州統一の意気盛んだった島津勢を次々に攻略する。いかに勇猛果敢な薩摩隼人と雖も多勢に無勢、歴戦の戦上手の秀吉軍は大友・龍造寺といった田舎大名とはわけが違う。肥後口・日向口から攻め立てるとさすがに総大将島津義久も降伏・和議の腹を固めざるを得なかった。
 しかし、頭の痛いことが二つあった。一つは剛直を持って聞こえた実弟の歳久である。秀吉が九州に赴くと聞いて合議の中、全体が秀吉何するものぞと沸き立つようになった時に唯一人秀吉恐るべしと和議を唱えていた。義久にはその意見具申を一蹴した負い目があった。
 もう一人やっかいなのは、薩摩・大隅統一に抜群の功績を残した島津一門の庶流、新納(にいろ)武蔵野守忠元。胸に届くほどの美髯を垂らして奮戦し、今回も長宗我部勢を打ち破る働きをした猛将である。
 歳久は『だからあれ程やめろと申し上げた。そもそも和議にはその時勢というものが有り申す。旗色が悪くなったから降伏するでは後世憂いを残す事必定』と言い放てば、忠元は更に吼える。『オイ達ァまだ負けちょいもはん。これッしきのこっで和議とは薩摩ン武士の意気地はどこい捨てもした』と。
 しかし義久は薩摩人の気質を知り抜いている。突貫突撃では無類の強さを発揮するが、一端引き始めると誠に粘りのない。もはや止め時なのである。義久は剃髪した。
 新納武蔵守忠元、鬼武蔵とも親指武蔵とも言われている。数を勘定する際に一つ目は親指を折ることから、武功第一を称える故についた通り名である。
 いよいよ義久の次弟義弘まで和議を結ぶに当たり忠元も覚悟を決め、降伏の儀式に秀吉に謁見することとなった。
 剃髪し居並ぶ諸将の中を進み、深く頭を下げた。小柄であった為一層小さく見えたが、ただならぬ殺気を発していた。人たらしとも言われる秀吉はおもむろに尋ねる。
「よう参られた、武蔵守。まだワシと戦うつもりか」
 さすがにいきなりの言葉に周囲は息を飲んだ。
「如何に逆らいましょうや。しかし我が主人義久の命あればいかにも」
「あっぱれじゃ。音に聞こえた薩摩武士。どうか、我が配下にて10万石とらせるとしたらいかに」
「主人義久からであればありがたし。愚直者にて二君にまみえず。義久もまた秀吉様の主従の約を交わしておりもす」
 一同このやりとりに唖然としたが、秀吉が笑みを浮かべると座はなごやかになった。
 儀式の酒宴が張られ、秀吉は上機嫌で一献をつかわすと、忠元は長く伸ばした白髭を左手で持ち上げて飲み干す。
 細川幽斎はかねてより忠元が和歌の道に通じている事を知っていた為、その姿にこう声をかけた。
「鼻の下にて鈴虫ぞなく」
 受けた大杯を飲み干した忠元は、暫く視線を落としていたがグッと細川幽斎を見据えると通る声で上の句を発した。
「上髭をちんちろりんとひねりあげ」  
一同呆気にとられて一瞬静寂に包まれた。そこに遠慮のない大笑いが聞こえた、秀吉が笑い転げているのだ。それをきっかけにその場の全員がドッと湧いたのにつられ、忠元もまた渋面を初めて崩しニコリとして見せたのだった。

捨てがまり戦法

戦国奇譚 風雲小田原攻め 

黄金の茶室(見果てぬ夢) 


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忘れがたいワル(サラリーマン編)

2017 FEB 25 19:19:35 pm by 西 牟呂雄

 世の中には『これでよく破滅したり捕まったりしないもんだ』と感心させられる輩がいる。

 これから話すのもその中の一人で忘れ難い人物だ。中背のがっしりした体型にドラエモンを思わせるマスク、決してイケメンではないが人懐こい顔をしていた。
 実に有能で実務能力に長けた男で、仕事は良くできる商社マン。体力も抜群のタフなネゴシエータであった。神奈川県の某高校では野球部で、桐蔭学園には負けたが一応甲子園を目指して練習に明け暮れたという。
 更にギターが上手く、僕は一度バンドを組んであまりの技量の高さに舌を巻いた。編曲もこなしてくれて各パートの譜面をサーッと書いてしまう。自分で編成したバンドでは玄人受けする凝った曲をレパートリーにしていた。
 こいつはしかし凄腕のワル。特に女癖が悪かった。
 何でそんなにモテるのか誰にも分からない。しかし現在の言い方ではフェロモン全開とでもいうのかいつでもイイ女が周りにいて、より取り見取りのよう状態なのだ。僕とは趣味が全く違うので、女性問題で睨みあうということにはならない。アッ女性蔑視という話じゃなくて恋愛の話ですから。可憐な感じの女性が好みだった。
 いまから考えると、彼は自分のような人間に興味を持つタイプの女性を瞬時に見分けることができていたようだ(僕には彼が魅力的とは全く思えなかったが)。これも一種の才能なのだろう、要するにモテまくる。
 商社マンをやっていたから忙しかっただろうに。結婚を機に、すでに相当の修羅場をくぐっていたから、少しはおとなしくなるかと思ったが全くそうならなかった。
 当時は僕もサラリーマンで互いに忙しかったから待ち合わせは六本木の店で夜中の12時といった具合。そのまま朝まで飲んで出勤したこともあった。おかげでその後こちらは体を壊し入院する騒ぎを起こしてしまった。
 退院してきて会ってみると、なんと同時期に奴も大ピンチに陥っていて夜も眠れない状態だったとか。
 それ以来奴は『共振の法則』を発見したと言い、自分がヤバくなると時々僕に連絡を寄越した。
「アノー、最近何かありましたか」
 不思議な事にそういう時にまた僕の方もエラいことになっていて(こっちは大体が酒と仕事がらみだったが)お互い『やっぱりね』等と言って善後策を相談していた。
 その男、数々の人生の危機一髪を潜り抜け、今日さる会社でエラくなっている。勿論バツイチだが、先日会ったら相変わらずだった。

 もう一人挙げておきたい。学生時代の遊び仲間なのだが、当時から得体の知れない奴だった。実はこいつともバンドを組んで仲良くなった。全く不真面目でモノを考えたことがないのではないかという印象を持ったものだ。
 ところがこいつは要領のよさが天才的で、特に帳尻合せに関しては神業的な鮮やかさを見せた。全く勉強なんかしないくせに就職に必要なAの数を揃え、ウソにウソを重ねて就職を決めてしまう。志望理由は特になかったはずだ(無論面接でそんなことはおくびにも出さない)。
 僕が2年程離れていた東京に舞い戻って来て再会した奴は遊びに遊んでいた。奴の勤務先は結構な給料で知られていたが、実家にいたので全て使い果たして更に巨額のツケをため込んでいたっけ。
 こいつの場合は、前述のワルとは違ってミョーに怪しげな女性がウジャウジャしていた。どう怪しいかというと極端に年上だったり物凄い美人の飲み屋のネーチャンで、ただ深みにはまることは無く単なる遊び仲間のようだ。いわゆる女好きではなかった。
 そういった付き合いを通じては本能的にアブない世界に近づいて行き七転八倒してまた元に戻るようなことを繰り返していて、同時にサラリーマンをどうこなすのか見ていてハラハラした。要するにモノを考えていない破滅型ともいうタイプかもしれない。
 答えは簡単で、アイツはロクに仕事をしていなかったのだ。ここぞ、という所の一発芸でごまかしていたが、いくら何でもそう長くは通用しない。そうこうしている内についに地雷を踏んだ。どこかのオネーチャンの借金取立てに首を突っ込んで小遣いを稼ごうとしたら恐い目に会ったらしい。 
 するとまた実にいいタイミングで海外に転勤の辞令が出る。大変に治安のよろしくないアジアの国で、大方の見方は露骨な左遷だったが勘違いしたのか本人は嬉々として赴任していった。
 コイツは長ーいこと連絡が取れずに噂も聞かなかったが(聞きたくもなかった)バッタリ地下鉄の駅で出会った。僕は気づかず向こうが『ニシムロ?』と言うのでシゲシゲと綺麗にハゲた頭を見て仰天した。品のいい紳士になっていたのだ。

 二人書いたところでバカバカしくなったので止める。後少しいるのだがまた別の機会に。断っておくがこいつらは決して善人ではない。ただ運が少し良かったから何とかなったに過ぎない、スレスレの人生を送っているのだ(多分今も)。

真っ先駆けて 雑感

ハマのマイクと呼ばれた男


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名前はどう表記されるか

2017 FEB 24 20:20:58 pm by 西 牟呂雄

 阿倍仲麻呂は遣唐使で入唐したが科挙の試験をパスして玄宗皇帝に仕えた。
 気になっていたので唐の記録でどう表記されているか見ると『朝衡』または『晁衡』と表されていた。想像するにこれで『アベェ』とでも発音していたのだろう。
 ところで中国は同じ漢字でも地方によっては呼び方が違っているのを気にしない。『陳』姓はマンダリンでは「チェン」だが福建系では「タン」と呼び習わす。これが当たり前と感じているので鄧小平(デン・シャオ・ピン)を日本語で「とう・しょう・へい」等と読み上げても違和感は無いそうだ。  
 
 倭寇が高麗沿岸で大暴れしていた頃、その一部が鎮浦に上陸して城郭を構えたところ逆襲されて船団を失った。帰る手段を失って破れかぶれになったのか暴れ回った末に、元(モンゴル)の武官だった李成桂の総攻撃を受けて全滅する。その首領の名は阿只抜都(あきばつ)と記録されていて10代の美少年だったという。ナントカという日本名を当て字したのだろうが一体本名はどうだったのか。九州にある「赤星」とか「秋葉」という家の出身かも知れない。高麗語のアギ(子供)とモンゴル語のバートル(勇者)の合わさったニックネーム説もある。当時半島は元の属国だった。
 李成桂は公的には全州李氏の朝鮮族としているが一説には女真族で後の李氏朝鮮の初代である。
 一方当時の高麗王朝は元の間接統治で王位を決められていて、忠烈王は元の首都である大都(現在の北京)に常駐した。その息子達の忠宣王はイジリブカ(漢字表記「益知礼普花」)、忠粛王はアラトトシリ(漢字表記「阿刺訥失里」)、忠恵王は「普塔失里(ブダシリ)」とモンゴル名を持ち、大都で育ちモンゴル風の辮髪にしていた。元寇の時は高麗兵が先頭に立って押し寄せてきている。お互い様なのだ。

 その後、今度は豊臣秀吉が止せばいいのに大軍を半島に上陸させる。
 どうも個別戦闘では勝つには勝つのだが、兵站は途絶えるヤル気はなくなる、中には朝鮮に寝返るのも出てくる(逆も多かった)。
 現地での表記の「沙也可」という日本人は投降し、軍が引き揚げた後に国境警備や反乱の平定、女真族との戦いなど活躍する。国王から「金」姓を賜り今日まで家系が続いている。友鹿洞(うろくどん)一帯のキム一族で、一村全てが金姓の両班だ。すぐに朝鮮語が喋れたのだろうか。
 かつて司馬遼太郎は綿密に取材し「沙也可」は日本では左衛門の朝鮮読みだろう、と推測した。他に多少の無理筋だが鉄砲集団の雑賀党の者でサイカのことだという説もある。

 明治になって政府が戸籍を管理するようになると、日本語表記がなくて困った人たちが出てきた。アイヌの人達だ。元々苗字も文字も持たなかったので多くはそのままの名前や住んでいた地名に漢字を当てて名前にした。
 話題の北方領土の色丹島にはロシア配下の千島で洗礼を受けロシア名の人々がいて、苦労して苗字を造っている。ストロージョフさんは須藤に、ノグラウウィンさんは埜倉(のぐら)に、プレチンさんは吉市(よしいち)といった具合だ。
 最近はフィンランドから帰化したツルネン・マルテイさんが「弦念 丸呈」とかラモス 瑠偉とかポピュラーになって、キラキラ・ネームの方が何系だか分からない。

 ところで僕はその昔、中華圏(香港・台湾・シンガポール・杭州・北京・上海)に行くとサインする時に西 室建と書いて「ウォー・シー・シー・スー・チェン」等と自己紹介した、すぐ日本人だとバレた。
 ソウルでチェックインする時は니시무로(ニシムロ)等と表記して「ナー・ヌン・ニシムロー」とやったが、錬達のフロント・マンに「にしむろさんですね。お待ちしておりました」と日本語で返事されてしまった。

フ(ホ)ァン・チン 名前考 黄金

春夏秋冬不思議譚(名前考)

漢字は楽し 色彩編


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かくも儚い淡雪

2017 FEB 22 21:21:41 pm by 西 牟呂雄

淡雪

 浅い冬の日差しを浴びれば芝生に溶け込んでいってしまいそうな、このハカナゲな淡雪はどうだろう。
 豪雪の被害に遭われた方々には申し訳ないが、この程度では残った雪の方が哀れに見えなくもない。
 どうにも雪掻きをしたり足跡を付けたりする気になれず、放っておく。
 ここのところの冷え込みは厳しいが、この傍らには福寿草が黄色く咲いていかにも春が近い。
 二月の風の強い日にはこの芝生を焼いて目土を入れなければならないのだが、大幅に遅れそうだ。

 

鮮やかな福寿草

鮮やかな福寿草

 ネイチャー・ファームも本来『土返し』といって一度畑をかき回すのだが、とてもじゃないがヤル気になれない。それで昨日はスノボをやりにゲレンデに行った。
 するとだ、体重移動がうまくいかない。ちょっと厳しい斜面では前傾で突っ込めない。よくないフォームの典型だが、スピードを殺すために右足の(山側の)”落とし込み”が早くていわゆる横滑りになってしまう。
 危ないな、と思ったら転倒した。こんな日はダメだ、と直ぐにリタイア。
 実はある星占いに『レジャー中の怪我に注意』とあったからだ。

東側からみた変な富士山

東側からみた変な富士山

 そこで全部でいくつのパターンがあるか考える。
A.ここでやめてアー良かった B.このまま続けてなんともなかった C.このまま続けてアクシデント D.この日はなんともなく今月中も無事に過ごす E.この日はなんともなく別の日に怪我をする

 この他にも、そもそも僕の技術がどうか・斜面の入り方・ゲレンデの混み具合・雪面の固さ・体調、と様々な要素がからみあって結局怪我をするかどうかはやってみなけりゃ分からない。星占いはある程度統計だろうが、当たる確立は物凄く低いのではないだろうか。
 等と意味のないことを、溶けゆく淡雪を見ながら一日考えていた。

 すると夜、僕と誕生日が2日しか違わない(即ち星占いは一緒)ある男が、ゲレンデで大コケして十字靭帯損傷だ、という連絡が入って青ざめた。止めておいてよかった。

奇怪で苦しい夢


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秋・喜寿庵10月の花

奇怪で苦しい夢

2017 FEB 20 20:20:03 pm by 西 牟呂雄

 夢といっても先日ワシが見て驚きつつ目覚めた不思議なユメの記憶だ。あんまり奇想天外なので書き残したくなった。

 ワシはどこかの会社で人事企画を担当しているようで、業務改革の一環として一週間を6日間にして5勤一休の革命的社内カレンダーを作っている。この日程で国民の休日を入れると現在の週休二日プラス祝日のローテーションが効率的に組めて、日本のホワイトの生産性が飛躍的に上がるという研究を発表した(らしい)。そしてそれを各製造現場に落とし込んだ時に実際の勤務時間がどうなるのかを必死で計算しているのだ。
 別にそう複雑なことではなく、2と3の最小公倍数6を単位として一週間と定め、365日を6で割った61週で一年とする、割り切れなかった分を閏としてその会社の年末年始で数時間縮め太陽暦に戻す。この奇怪な計算を夢の中でセッセとやっているのだ。
 そしてここが夢の夢たるところだが、その計算途中に何とワシ自身がセンター試験を受けに行かなければならないことになっていて、それが何故か試験開始が4時半のようなのだ。時計を見ると4時10分で焦り狂う。
 と、ここで目が覚めた。夜中の二時でグッショリ汗をかいていた。

 ワシの世代はセンター試験も共通一時も推薦やAOもなかった。だからセンター試験など記憶にあるはずがないのに、何故そうだと夢の中で分かったのか謎だ。
 フロイトは潜在的な願望の自己表現と定義したが、ワシはそもそも試験なんか大嫌いなのであってそれが昂じて受けたこともない試験を脳が作り出したのか。そもそも考えてみると社会人になって人事の制度設計をしていたはずのワシがなんでセンター試験を受けるのか。
 と冷静に考えてビールを飲んでまた寝た。

 すると明け方に今度はマーク・シートを塗り潰している場面が夢に出た。本当に試験を受けているらしい。そして試験官のような人が僕を注意するのだ。
「名前が違っているよ」
 と。
 何をバカなと名前の欄を見ると油目と書いているではないか。そしてワシの脳はあぶらめと読んでいる。油目 凛という異様な名前になっているのだ。アブラメリン?
 途端に場面が変わってワシはその油目と言う人の替え玉受験をしていたらしく、誰かに怒られていた。そして口から出まかせに言い訳していた。
 アブラメリンという難民が優秀なのでワシがその代わりに受験するからワシの脳に憑依して試験を通る計画だ、と喋った。
 恐ろしいことに場面が変わってワシを怒っている人は今度は新設された外務省移民局の役人で、警察を呼ぶと激高した(何故そうなったのか分からない)。

 ここで再度目が覚めた。昨今の大統領令に反応しての夢だったのだろうか。怖くてその日はもう眠るのをやめた。あー怖ろしかった。

かくも儚い淡雪


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喜寿庵紳士録 ヒョッコリ先生Ⅱ

2017 FEB 18 12:12:58 pm by 西 牟呂雄

 喜寿庵で庭を掃いていたら『やあやあやあやあ』と声が掛かったので振り向くと、例のヒョッコリ先生がニコニコしながら入ってきた。
「いや寒いね。落ち葉、これどうするの」
「せっかくだから畑に埋めてます」
「ナニッここに畑なんかあるのかい」
「はい、こっちですよ」
 すると『あーそう』とか言って一人でスタスタと行ってしまった。面倒なので放っておいたら直ぐに戻ってきた。
「良く落ち葉を入れてあるね。だけどあのままじゃダメだ。土壌の酸度が上がっちゃうんだよ。春先に石灰でも混ぜてやらないと野菜は大きくならんよ」
 へえ、そういうもんか。
「良く分かるんですね」
「土の色が黒すぎるからね。舌先でもピリピリしてる」
「えっ舐めるんですか」
「いや違う。舐めちゃダメ。舌先にちょっと付けて吐き出すんだよ。下手に噛むと破傷風になるよ」
 この人は農業従事者なのかな。それにしちゃ学者みたいな口ぶりだ。
「肥料は入れてるのかい」
「面倒なんで何もやってません。正真正銘の無農薬野菜ですよ」
「ハハハ。それじゃロクなもんはできないな」
「物凄く低い生産性ですよ。別においしくもないし」
 ちょっとムッとしたが毎日やれる訳じゃないから仕方ない。先生は崖下の渓流を覗き込むようにして一人で喋りだした。
「戦争中タカシさんがこの崖の下に防空壕を造るって言い出した時には僕やめろって言ったんだよね」
 等と訳の分からないことを言い出した。
「ところがここは岩盤の上だからとても手で掘れるような場所じゃない。そうしたら削岩機を買ってきてワシが掘るって言いだして、みんなあきれ返ってほったらかしたんだ」
 そりゃこの崖に防空壕なんてバカなことを考えるやつは少しアブないんじゃないかな。
「防空壕ってこんな何も無いところに空襲なんかあったんですか」
「あのね、あの時分いくらアメリカだって飛行機全部にレーダーなんか載せられないよ。B-29は有視界飛行でくるから高高度で目印になるのは富士山だけなんだ。そこから旋回して東京を爆撃した。帰りも同じコースで帰るからこの上あたりは良く飛んでたね。ある時帰りの際に落とし残した爆弾を捨ててったらしいんだがそれが隣の町に落ちて何人か亡くなったんだよ」
「えぇ!こんな所で戦災者がでたんですか」
「そうなんだよ。それでタカシさんがやたら張り切っちゃって・・。あの人は何でも自分でやってみて懲りないとやめないから」
 タカシさんって誰の話をしてるんだろう。
「山登りだってそうだよ。正月にご来光を見るって言い出して暮れの忙しい時に行っちゃったら八合目あたりで50Mくらい滑落したことがあってね。裏立山の時も一週間くらい連絡が無くて遭難したって大騒ぎになった。山仲間が捜索隊を作って探しに出発する時に電報が入ったんだ」
「裏立山ってなんですか」
「立山を富山県側から登るルートのことだよ。ザイルだピッケルだって外国製の高いモン揃えて自慢してたな」
 どうでもいいけどタカシさんて誰だ。先生ももうあっちの方を見ながら喋っているし、僕も勝手に箒を使い始めたがそれでもズーッと喋り続けていた。この人は少なくとも僕より年上だが、もしかすると20才以上年をとっているんじゃないか。そうなると80を軽く超えているはずだ。
「それでこの街にも進駐軍が来たよ。そうしたら中学(旧制らしい)の英語の先生が通訳しようとしたけれど聞き取れないし喋っても通じないんだ」
 僕は背中を向けていたが、声が震えているのを感じた。何故かは知らないが先生は泣いているのだ。相槌も打たずに手許を動かした。
「タカシさんも張り切っちゃって通訳を買って出たけどダメで、その時に曲がりなりにも会話できたのはこの町じゃタカシさんの奥さんだけだったんだよな」
 何の話しをしているのか、何に感極まったのかさっぱりわからないが、余計なことを尋ねるのも憚られて黙っていた。おそらく自分の若かった頃を思い出し、そのタカシさんだかその奥さんの話にかぶせて色々な思いがこみ上げてきているのだろう。オレ、こういうの弱いなぁ、と参った。
 箒を掃く音だけがシャッシャッと聞こえていた。
 そういえば名前も聞いていない。だけど何回もあっているから今更何て訪ねればいいのか、ド忘れした振りでもしようか。
「あのー、そういえば最近は何をなさってるんですか」
 振り返ったら姿を消していて、カラカラと枯れ葉が転がった。又名前を聞きそこなってしまった。
 

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喜寿庵紳士録 ピッコロ君

喜寿庵紳士録 ヒョッコリ先生 Ⅳ

喜寿庵紳士録 ヒョッコリ先生

花盛りの喜寿庵 八月の花

本当だろうか 暗殺‼️

2017 FEB 15 21:21:38 pm by 西 牟呂雄

 この人  マカオの怪人 が毒で暗殺されたって・・・。時系列的には以下である。

 日米首脳が名指しで「脅威」と声明 
   ⇓
 よせばいいのに総理アメリカ滞在中に独裁者が頭に来てミサイル発射
   ⇓
 大統領・総理二人で揃って強く非難
   ⇓
 国連安全保障理事会で制裁決議採択 中国も賛成
   ⇓
 中国はシブシブ『いいかげんにしろ』と圧力をかけた(推測)
   ⇓
 独裁者が体制転覆を嗅ぎ取り新体制の核となりうるスペアを”消す”(推測)
   ⇓
 習近平の面目丸潰れで怒り狂って制裁開始(推測)

 ここから先は得意のゲーム理論・利得表を作って見立ててみよう。但しあまりに複雑になりそうなので、中・朝・韓の3国間の利得表で計算してみた。
 すると結果は韓国の大混乱。
 大雑把に起こりうる最適ポイントだけ列記してみるとこうなった。
 まず中国が石油パイプ・ラインのコックを閉じ、同時に人民解放軍を国境に配置。困った北は政治混乱の続く韓国の親北勢力に統一をチラつかせてアプローチする。韓国現政権は当事者能力を欠いているため腰砕けになる。大統領不在の国では唯一の右派組織となった韓国陸軍が極度に緊張する。朝鮮人民軍も部隊を引っこ抜いて対峙することとなる。結果大統領選挙の日程さえ決まらずに一月過ぎると・・・。
 
 3カ国以外に地政学的にもっとも影響のある国は日本だが、今回の計算の中に組み込むスキームが全く思い当たらなかった。仮にあるとすれば独裁者が『拉致問題の真相はこうだった』と頭をさげる、できないか。
 トランプ大統領が秘かにデニス・ロッドマンを特使として派遣し、核の廃棄と引き換えに独裁者に第三国(といっても受け入れ先は思い当たらない。ヨーロッパの何処か?)への亡命を示唆する、無理か。
 ここは一つ韓国陸軍白骨部隊(国境の最強部隊)の精鋭が潜入、秘かに独裁者を拉致監禁し大統領職務停止中の朴槿恵氏が中心の人民統一党による革命政権の樹立を宣言する・・失礼しました。
 とにかく38度線でプッツンした両軍が撃ち合うことだけは避けていただきたい。

 って明日は故金正日総書記の生誕記念日じゃないか!

マカオの怪人


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安倍 VS トランプ ゴルフ対談

2017 FEB 14 5:05:14 am by 西 牟呂雄

安倍総理(以下 安)「グッモーニン、ミスター・プレジデント」
トランプ大統領(以下 ト)「シンゾ!なんだい改まって。ドンと呼べよ」
安「OKドン。夕べは手厚いもてなし有難う」
ト「さあ、やろう。おっとシンゾがオナーか」
安「よし。アッ(チョロして)」
ト「オーノウ。ハハハハ。行くぞ(ナイスショットだ)やった!」
安「やっぱりプレゼントしたドライバーはいいだろ」
ト「そうだな。これに関税をかけるわけにはいかないな」
安「(歩きながら)TPPはしばらくしょうがないな」
ト「言っちまったもんしょうがない。中間選挙まで2年はかんべんしてくれ」
安「フフフフ。尖閣防衛の為には仕方ないか」
ト「(ファースト・パットを大はずしして)だめだ。移民のせいだ」
安「オイオイ。まあ内政には干渉しない(ワン・パットで入れる)。よし!」
ト「それはおれが送ったパターだろうな?」
安「オフ・コース」

ト「TPPはすぐにやらんがあんなもんなくても中国は封じ込めるぞ。安心しろ」
安「わかってるわかってる。マティースは凄い迫力だったからな」
ト「だろ?アイツは日本が好きだから選んだんだぜ」
安「さすがはドンだ。ドン・コルレオーネみたいだ」
ト「ワハハハ!違う、オレはドイツ系だぜ」
安「バイ・ザ・ウェイ。コッチに来る前にアキオ・トヨタと良く話しておいたよ」
ト「心配するな。自動車を名指しにしてるが標的は中国とメキシコだ。関税なんかかけられる訳ないじゃないか。油が安けりゃまた7千CCのアメリカ車が流行るさ。早い話が日本車が買えないと困るやつは多いさ」
安「ドンらしいやりかただ。よくわかった」

ト「ナイス・ショット!やるじゃないかシンゾ」
安「ベットはだめだぜ。世界最強のドンにはかなわない」
ト「ウワハハ。ところでプーチンってどんな奴なんだい」
安「以外とくだけてみせる。ユーモアもある、というか冗談好きだ。ドンとも話しは弾むだろう」
ト「なにしろ一月の間にアメリカとロシアの大統領に会えるのは今シンゾだけだからな。オレもそのうち会わなくちゃならん」
安「ISを潰すんだろ」
ト「ブッシュ親子がイラクをやってメチャクチャにしたのをオバマがほったらかしにしてあんなもんが蔓延しやがった。それプーチン乗るかな」
安「ドンのことだ、もうとっくに話をつけてるんじゃないのかい。でもその話マジ乗ってくると思うよ」
ト「そうか!」
ト「シンゾ、G7とかちゃんとオレの側にいてくれよ」
安「何だい?ドンらしくもない。みんな寄って来るよ」
ト「おい、分かってくれよ。移民の話でどいつもこいつもイヤ味ばかり言いやがって」
安「テロ反対とだけ言ってればいいんだよ」
ト「このあいだメイにあったけどつまんない女だぞ、あれ」
安「そんなこと言ったらメルケルの方がヤバいぜ」
ト「頼むよ。オレはこう見えて人見知りなんだ」
安「わははは。オット、ナイス・バーディー!(ハイタッチ)」
ト「センキュー!しかしホント。G7なんか行きたくないよ」
安「大丈夫だ。日米同盟を強調すれば誰も何も言わない」
ト「G20もか?シー・チンピンにも会いたくない」
安「絶対大丈夫だ。それじゃウラジミール(プーチン)をこっちに引き摺り込もう」
ト「シンゾ。このグリーンは仕掛けがあって物凄く逆目の芝だぞ」
安「アッ、本当だ。こんなにショートしてしまった」
ト「ヨーシ。こうなったらもう一泊しろよ。あしたもやろうぜ」
安「おいおい、そりゃさすがにマズい。じゃ、もうハーフやろうか」
ト「いいぞ!そうこなくちゃ。行こう行こう」

アッ⁉️ミサイル撃っちゃった。‼️

安倍総理 VS オバマ大統領 (パールハーバー)

架空緊急極秘対談 トランプ VS 習近平


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ファイターズ 今年の秘策

2017 FEB 12 10:10:24 am by 西 牟呂雄

 昨年の日本一ファイターズは連覇が出来るだろうか。年末の秘密オーナー会議ではやはりホークスの優位が(不愉快にも)確認された。
 更にキャンプに入って大谷の足首が良くないという嫌な話が表に出てしまった。オマケに中田はツベコベ抜かしてアリゾナには行かない。陽はもういないし。
 投手は高梨・白村あたりが上がってくるのに期待するが、問題はクローザーだ。

 そして今年の要注意はイーグルスである。あの顔を見るのも嫌な岸が加入している。島捕手のリードで熱投されると実に面倒な相手である。岸のカーヴ対策を万全にして、真っ直ぐは全部捨てなければ。
 その分ライオンズはBクラス間違いなしなので、西武ドームで叩いてしまえばなんとかなる、今年は所沢に行ってみよう。
 ロッテもあの縦ノリ応援には手を焼く。マリン・スタジアムはオープン・ドームだからここは雨乞いでもしてペースを狂わせる。
 糸井のいなくなったオリックスはチョロい。金子を潰してしまえばどうってことない。

 そして問題は今年も勿論実力日本一のホークスである。なにしろ昨年の CSセカンド・ステージ は 勝・負・勝・負・勝 と全くの互角。ホークス中島オーナー(影の)も緻密な戦略を立てて余裕綽々だ。しかも迷惑なことに松坂が復活するかもしれない。
 そもそもいつもホークス戦でヘトヘトになって、次のクールで負けが込むというパターンだから、抜本的に戦略を見直す必要がある。
 現在栗山監督と秘密裏に話し合って、今年はホークス戦に大谷を投入するのを止めるように説得を続けている。
 そしてここが肝、今年からヘッド・コーチになった達川コーチの手腕を削いでしまわないと手が付けられなくなるだろう。達川コーチは広島機動野球の申し子だ。
 従って主に私のテレパシーで、ピッチャーを代えたがらない工藤監督と早めの継投を進言する達川コーチの仲を悪くさせるのだ。
 更にネットスポーツ新聞、ソナー・ベースボール・ニュースを発行して、連日「達川意見具申無視される」とか「工藤監督コーチ陣と不仲」とかいうデタラメを連日配信して、ホークス首脳陣を疑心暗鬼に陥らせる。

 ・・・ダメか。今年も苦労しそうだ。ハンカチ王子!化けてくれー!

交流戦秘策 ファイターズ 他言無用


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さらば4番ピッチャー大谷(札幌最終戦実況版)

プロ野球3オーナー極秘鼎談

ブログスペースを借りました Ⅱ  

2017 FEB 11 10:10:21 am by 西 牟呂雄

 又、西室さんの許しを得て書き込んでいます。
 ここに引っ越してから一月が経過しました。ジッと芝生にうずくまっているという暮らしを続けています。あっ自炊しています。
 すると本当に猫がやってきて、目が合ったのです。さすがに夜は母屋で寝ますが(今は寒いもので)夜はもっと頻繁に来ているようです。
 来る猫は3匹いて、白・アメリカンショートヘア風茶色・頭の黒い奴です。そして二匹は頭の黒い奴を苛めているように思えました。そこで何か言いたくて声を出したところ、例によって「ミヤァ!」と言ってしまい、二匹は逃げてしまいました。それで残った猫と仲良くなることができたのです。

友達

友達

 その話を西室さんにすると「あー、こいつか」と写真を送ってくれたのですが、この猫でした。勝手に『シナシナ二世』と名付けたそうです。

 ところで最近、実に視力が落ちてきているのを実感しています。ただ前回白状したように全く運動というものができないので、視力といっても動体視力のような機能ではなく見えるものが見えないのです。
 もっと詳しく言うと視力機能がコントロール出来ていないようで、実際にある物が暫く認識できていない、そしてそれが突然回復するといった感じなのです。
 シナシナ二世も突然視界に入ってきたり消えたりしています。近くまで来てくれるのは嬉しいのですが、発症中はなでてやったり出来ません。それはいいのですが薄目を開けてウトウトしている時に突然顔がワッという感じで視界に入ったりするとびっくりしてしまいます。それまで見えていなかったのでしょう。
 いや、もっと言えばこの猫の実態は写真と一致するので間違いないのですが、私が発症しているときに猫が見えても、本当にそこにいるのかどうか。何しろ触っていないので幻覚かもしれないのです。無為自然

 不安に駆られているときに西室さんがやってきたのでその心配ごとを打ち明けました。すると
 「いよいよヤバいな。実像が認識できないとそれは人間ではない、というのと同じだ。」
 とあっさり言います。
 私は益々恐くなり、一緒に本当のシナシナ二世がいるのか確かめてくれるように懇願したのです。
 「あいつがいつここへ現れるなんて分かるわけないだろ。それじゃ、ホレ、これがオマエだ」
 とシャメを撮って私に見せました。それを見て恐怖のあまり『わーー!』と叫んだのですが口から出た音は「ニャ~~!」だったのです。

 暫く失神していたようでした。目が覚めると西室さんはいません。気を失う直前の記憶まではしっかりしていましたので、何が起こったのか覚えています。慌てて鏡を見に行くとチャント私でした。
 一体何であんな姿で映ったのでしょうか。皆目検討がつきません。視覚が完全におかしくなったのでしょうか。
 二日ほど途方に暮れていると、毎日のように起こっていた症状が出ないのです。そこで食料の買出しに行ったり掃除をしていました。
 夜、メールが入りました。
「先日は目の前で気を失ったので驚いてそのまま帰った。どうも見せる写真を間違えて猫の写真を見せたようだ。スマンスマン。」
 と書いてありました。正直ホッとしました。ところが直ぐ次に送られてきたメールは「本当に写したお前のシャメはこれだったよ」とあって、以下の画像が添付されていたのです。IMG_0298

 ここで初めてあの人の悪意が分かりました。
 親切そうに山荘を貸してくれるフリをして私を観察し、症状が悪くなるように仕向けていたに違いありません。
 私はあの人にいいようにされて精神がボロボロなのに、出て行くところもないのです。
 このブログを読まれた方、できれば精神医療にお詳しい方、どうか私を救ってください。助けて下さい。

 今ではもう私自身があの悪魔のような人の想像の産物、架空の人格のような気さえして来ました・・・・。

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ブログ・スペースを借りました Ⅳ

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