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小津『晩春』に出てきた巌本真理

2016 DEC 28 9:09:31 am by 野村 和寿

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昭和24年(1949年)完成の映画『晩春』(小津安二郎監督・松竹)をデジタルリマスター版で見ました。

書斎で書き物をしている笠智衆扮する父・曾宮周吉。大学で経済学を教えている学者。執筆の清書を手伝っている助手・服部昌一。服部が、文献のところで、フリードリッヒ・リスト(1789−1846 ドイツの経済学者)のつづりをLisztと。誤記する。曾宮は、本当は、Listが正しく、Lisztは音楽家のリストだとたしなめます。助手の服部に主人公曾宮紀子(原節子)が、音楽会に誘われます。

ポスターには、巌本真理提琴演奏会 4月26日土曜日 午後3時開演。音楽芸術家協会主催 入場料350円450円 演奏会場は、東京・築地にあった東京劇場(後に映画館・東劇)。

潔癖症の紀子は、誘われ演奏会には姿をみせず、服部の隣の席が1つ空いたままにになっています。観ている側に、空き席をみせるだけで、紀子が、誘いを断った。ちょっといえば、ファザーコンプレックスで実に男性に関して奥手だということを示します。

画面に巌本真理の演奏場面は出てこず、ヴァイオリンが聴こえてくるだけです。

ただそれだけなのです。小津の映画らしく、音楽があくまでもとても品の良い添え物として使われています。でもヴァイオリンの調べがあまりにもきれいなので、弾いていた曲を調べてみました。

ヨアヒム・ラフ(1822−1882年・スイス)の作品で、ヴァイオリンとピアノのための6つの小品 Op.85 (1859)の中のカヴァティーナ Op.85-3でした。

小津を観るときに音楽は実は相当に暗示的でしかも、なかなかよいのです。音楽がしゃべりすぎることがないのです。それでいて品がいいのです。

映画『晩春』監督 小津安二郎 脚本 野田高悟、小津安二郎 原作 広津和郎 出演 原節子、笠智衆、月丘夢路 音楽 伊藤宣二 製作 松竹大船撮影所 フォーマット 白黒スタンダードサイズ(1.37:1) 1949年9月公開

巌本真理(1926−79年)は、弦楽四重奏団を自ら組織していて、上野の東京文化会館小ホールでベートーヴェンのカルテットの全曲演奏会を定期的に開催していました。ぼくも一度、聴きにいったことがあります。たしか1970年頃だったと思います。ぼくには正直、なにしろ高校生だったので、ベートーヴェンのカルテットは、あまりわからなくて難しい曲だなと思ったくらいで、今考えるともったいないことをしました。ぼくも未熟でした。%e3%81%84%e3%82%8f%e3%82%82%e3%81%a8%e3%81%be%e3%82%8a

写真は、1948年頃の巌本真理 映画内に登場する巌本真理提琴演奏会の案内板今は建て替えられてありませんが東京・築地にあった東京劇場(東劇)は、ヨーロッパ風の劇場で、ぼくも1971年頃に高校の放課後に、ここでマルチェロマ・ストロヤンニとソフィア・ローレンの共演した『結婚宣言』という洋画を観た記憶があります。

下の写真は、1949年映画公開時のポスターです。原節子と笠智衆、月丘夢路のほかに、三宅邦子や杉村春子の名前も連ねています。モノクロ作品でも、ポスターは天然色だったんですね。

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