Sonar Members Club No45

日: 2017年1月26日

旅する哲学 南イタリア・ナポリへその③オペラ

2017 JAN 26 16:16:11 pm by 野村 和寿

ナポリ・サンカルロ歌劇場

ナポリ・サンカルロ歌劇場まばゆいばかりの絢爛な光。1階席から客席を臨む。

われらの存在のなかには 至高の時がある。

その時はくっきりと際立ち 保つのだ。

われらを力づける美徳を・・・・・・  ワーズワース

念願がかなってナポリのサン・カルロ歌劇場でプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」のチケットが入手でき、歌劇場に入ることができました。僕の席は、5階のまさに天井桟敷席でしたが、舞台装置が歌手の表情から、観客の様子までてにとるようにみることができました。なんといってもここは、赤を基調にした座席と、まばゆいばかりの金で縁取られたまことに見事な歌劇場です。案内嬢まで赤のワンピースを着ています。一番驚いたのはオーケストラの手慣れていることと、カンタービレになると、オケが歌手をあおり、歌手がまたオケをあおるというように、まことに理想的な、イタリアの節になります。オケがこれだけ積極的にアンサンブルをやっているのは日本ではなかなかおめにかかれないことです。上の写真は、休憩時間に1階席からロイヤルボックス、そして、上の階をみあげてみました。すごいでしょ。

ナポリ・サンカルロ歌劇場②

5階にある天井桟敷席から舞台下手の桟敷席を臨む。

世の中に行きたいところがどこかと聞かれたら、サンカルロ歌劇場といつも、思っていたくらい、ナポリで行ってみたかった所です。やはり、ナポリはすごかったです。なにしろ、1737年の開場というヨーロッパで(ということは世界で)最初の歌劇場です。何度かの火災にあったからかもしれないのですが、会場には、なんと消防士さんが、消防士のかっこうのまま待機していらっしゃるのにはびっくりしました。お客は、いまだにスノッブな貴族趣味の人たちが多くて、華やかな社交場の感もありました。今日の公演はいわゆる定期公演客向けだからなおさらなんでしょう。いいおじいさんが、歌い手によってどのくらい演目の印象が異なるかを知り合いに議論をふっかけたりして、奥さんもなんかうれしそうに見守るという感じです。

サンカルロ歌劇場桟敷席から天井のあかりシャンデリアをながめる。

サンカルロ歌劇場桟敷席からあかり道具・シャンデリアをながめる。

一方、オーケストラや歌い手はそれとは関係なくて、きわめて自由に音楽を語るといった風情で、音楽を動かしているのはまさに自分たちという感じでした。5階席のバルコナータと呼ばれる5階席からみた2階席から上のバルコンです。ひとつひとつは、部屋になっていて、鍵を閉めたりもでき、中でなにがおこなわれているかわからないという仕組み。サンカルロ歌劇場の音楽の次にもり立てるものといえば、まばゆいばかりの光にあるかもしれません。こんなご時世で、LEDが断然効率的なのでしょう。しかし、ここにある光あふれるまばゆい光は、白熱で、ろうそくのひかりの代用をしています。あたたかな光がシャンデリアからも、いろいろな照明からも降って参ります。

サンカルロ歌劇場のオケピット

サンカルロ歌劇場のオケピットです。

休憩時間に1階からみたオーケストラ・ピットです。けっこう深く広く作ってありました。休憩のときは楽団員は三々五々で十分に休憩を取る人や、マーラーの交響曲第1番”巨人”とリムスキー=コルサコフの”シエラザード”をさらっている人などもいました。それにしても、ナポリのオケの金管楽器は、昔のラッパそのものみたいな音がしています。なにか味のあるラッパの音がしています。

きょうの演奏はいつものプッチーニの「ラ・ボエーム」とも少し違っていました。ちょっとマニアックなのですがご紹介。

まず、幕が始まる前に、第2幕で出てくる子どもたちが演壇上に姿をみせ、そのなかの一人が、演出家のメッセージを代読します。第1幕は、主人公ミミとルドルフォの出会い、場所は貧しい屋根裏部屋、2幕は、打って変わってパリ シャンゼリゼでの楽しいクリスマスの時間となるのですが、「人生とはかくも不思議に、いろいろなことがおこります。それはときには衝撃的だったりしますが、必ずいいこともあるのです。ですから1幕と2幕は切れ目なく演奏します。」

第1幕の舞台装置が、ひいていき、2幕のシャンゼリゼがでてきても驚かないでください。こうした「幸せな時間」は、誰にでも訪れるといいのですが、不幸にして幸いなる時間を過ごせない人々もいます。そうした人々のために、まずは祈りましょう。」といって、観客全員が起立し、不幸な人々のために、黙祷を捧げました。不幸な人々とは誰かと特定していないのに、起立、黙祷いかにもカトリックの国の考えそうな話です。そして、1幕が終わると、しずかに、場面は転換していき、シャンゼリゼが現れる。このことに、演出家は美しい幸せ時間をかけているようです。まことに不思議な演出家のメッセージ、そして観客の不思議な「黙祷」でした。

第2幕のシャンゼリゼの通りの舞台を、こっそり5階から撮影したのでどうぞ。『ラ・ボエーム』は、1幕2幕続けて上演され、第3幕の間に幕間休憩です。広大なロビーです。中には記念写真をとる、グループも。とにかくシャンデリアがいくつも光を放つ中で、ほとんどの観客が、女性はカクテル・ドレス、男性はすくなくとも上着にネクタイ着用です。ぼくも蝶ネクタイとミッソーニのジャケットをもっていってよかったなと思いました。こうしてナポリの夜はえんえんとふけていきました。

休憩時のロビー

休憩時のロビーです。不思議にもここには売店もバーもありませんでした。

オペラの係員

オペラの案内嬢。赤のワンピースは歌劇場の絨毯と同じ劇場のカラーです。これでも、客の案内とかしていらっしゃいました。

ちょっとピンぼけなので恐縮なのですが、根性がないので、隠し撮りです。ナポリ サンカルロ歌劇場の案内係は、歌劇場のビロウドの赤で統一した場内で、赤のワンピースを着用しています。日本のクラシック会場のように、いかにもの案内係の制服ではなくて、どちらかといえば、夜会にも着て行けそうな、カクテルドレスにもなるようなそんな服装です。みなさんお若く、とてもきれいに会場に花を添えています。そして、与えられた任務はきちんとこなしています、客の誘導とか、客への気配りとかなかなかよろしいです。文化とは、それぞれの役割をお互いにきちんとこなすということなのかもしれません。

オペラ『ラ・ボエーム』の舞台

オペラ『ラ・ボエーム』の舞台 カーテンコールです。

サンカルロ歌劇場の音楽の次にもり立てるものといえば、まばゆいばかりの光にあるかもしれません。こんなご時世で、LEDが断然効率的なのでしょう。しかし、ここにある光あふれるまばゆい光は、当然のように、昔からの白熱球で、ろうそくの光の代用をしています。あたたかな光がシャンデリアからも、いろいろな照明からも降って参ります。

指揮者にいわれてそうするのではなく、オケが自然発生的にするクレッシェンド、そして、曲の変わり目の決然とでる確固としたもの、オケが音楽を作るというプライドの上に、ときにはテンポさえも、自在に操り、それに音量が加わりまさに目指す音楽がありました。若いイタリア人の指揮者君はただただ、交通整理に夢中でしたが、オケはそんなことおかまいなく、自由にプッチーニをやっておりました。

以下友人(シカゴから)のコメントを残してくれました。

素晴らしい!野村さんのコメント、手に取るようにわかります。

プッチーニはソロのみならずアンサンブル・オペラなんだよね。それが手にとるようにわかった。明るい場面と悲劇的な場面で当然ながら音色を極端に変えている。それに忠実にオケが動くと、プッチーニというのは、道具としてのオケの扱い方が上手なんだなと思う。指揮者にいわれてそうするのではなく、オケが自然発生的にするクレッシェンド、そして、曲の変わり目の決然とでる確固としたもの、オケが音楽を作るというプライドの上に、ときにはテンポさえも、自在に操り、それに音量が加わりまさに目指す音楽がありました。和解イタリア人の指揮者君はただただ、交通整理に夢中でしたが、オケはそんなことおかまいなく、自由にプッチーニをやっておりました。

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