このかたこそわが東家に１６年もの長きにわたって君臨した女帝「チビ」様である。

我が家は５匹のねこたちに支配された艱難の歴史を有する。初代のチコ帝を除き、なぜか全員が女帝であるが、好んでそうなったわけではない。つぎつぎと侵略された結果なのである。なかでも２代目の帝位にあったこのチビ様は、権力ではマリア・テレジアを凌駕し、美貌では楊貴妃をしのいだと後世の史家たちが評するのにそう時間は要しないであろう。

チビという比較的平凡な帝王諡号は、幼少時に臣下が親しみを込めて贈ったものである。しかし長じても変わらぬお姿ゆえ、即位して改名が必要ではないかという国論がわきあがったことはない稀有な例といえよう。

侵入したおそろしい形相の野良猫に容赦なく繰り出される彼女のねこパンチは、民の身としてたのもしい限りであった。名の通りの小柄な体躯にもかかわらず、おんみずから我が家を守る断固とした姿勢は、次期日本国首相には必須の帝王学として学んでほしいものである。

写真はねこパンチのたゆまぬ鍛錬に励まれる貴重な一枚。高い集中力と澤穂希なみの反射神経でハタキをとらえる０．２秒前である。このように、一日も休むことなく誠心誠意お手伝い申し上げた者こそ、しもべの僕であった。

チビ（１９７３－１９８９）

感謝をこめて

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