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東北楽天イーグルスがなぜ強いのか

2013 AUG 14 18:18:39 pm by 東 賢太郎

東北楽天ゴールデンイーグルスが強い。今現在5.5ゲーム差でパリーグ首位を独走している。戦力はというと去年より大幅にアップした印象はない。外人(ジョーンズ、マギー)ぐらいだが彼らの長打が勝因かというと、ホームラン数69はパで下から3番目だし広島の75より少ないのだからそうともいえない。やっぱり勝ち続けのマー君を筆頭に投手陣が圧倒的にレベルアップしたのだろう。

楽天は2005年に球界再編の中で誕生したが、球団創設後の2試合目はロッテの渡辺俊介に1安打完封で26対0という壮絶な負けだった。東大や京大だってリーグ戦でこんなに激しくは負けないし、こんな負け方をしたら選手は一生のトラウマになる。勝負の怖さに背筋がぞっとしたのを覚えている。東北のかたは思い出したくない試合と思うので書くのは申しわけないが、男が真剣勝負に負けるというのはきわめて残酷なものだ。

今年の楽天で凄いなと思ったのは、星野監督がファンに怒ったことだ。日ハムの二刀流大谷にホームランを打たれてKOされた永井に拍手を贈った楽天ファンに、星野さんは「理解できない」とかみついた。東北のファンはやさしいのだろうし賛否両論あると思うが、僕はやはり理解できない。プロの試合はショーじゃない。頑張ったんだからいいじゃないかでは、真剣勝負には勝てない。

小学生のころ、ケンカしたりイタズラしたりで僕の母は学校へ何度も呼び出されたらしい。らしいというのは、そのことは後から知ったので当時は知らない。なぜなら母は息子をかばって父に言わなかったからカミナリが落ちなかった。だから学校をなめていた僕はまたやってしまう。やがてとうとう父が知ることとなって、カミナリどころかスパルタの公立中学へぶちこまれてしまった。

母性原理と父性原理というものがある。母は守ってくれ、甘えさせてくれ、癒してくれ、許してくれた。父はその逆で理のかたまりであり、かたときも甘える相手ではなかった。中学では更生して少しは勉強もしたが高校受験に失敗して、どうもこれではいかんと思いだした。唯一優越感のあった野球も高校では鼻をへし折られてしまった。このへんが、自分の母性原理からの離陸だったように思う。こてんこてんに負け続けて、みじめに残酷に踏みつけられて、甘えとったら勝てんという原理が自分の中に芽生えてきた。

今の世の中は、ちょっと語弊があるかもしれないが、父性が影をひそめて母性が勝る、ひどいときにはそれが押し売りされるような気がする。浪人時代の星野さんのスピーチを聞いたことがあるが、唯我独尊の自信家というイメージではなく、彼はひとえに負けることが嫌いなのだと思った。負けたくないから父性が勝った人になる。だから負けたやつをかばうファンに怒る。これは真正のカミナリ親父だ。

マー君は神の子なんておだてられてもうれしくない。たぶん。ところが星野監督には「何やってるんだ。お前は30勝できる投手だぞ」と怒られたらしい。最高に見事な叱り方と思う。母性の監督や投手出身じゃない監督にこれを言われても彼はおそらく馬耳東風だ。うれしかったにちがいない。死に物狂いでマウンドに行くだろう。若手の投手にもそれがテレパシーのように伝染しているだろう。

2005年の残酷な負け。東北の人と一緒に優勝を願ってイーグルスを応援したくなる。

 

 

 

 

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