NHKハイビジョン マルタの猫 ~地中海・人とネコの不思議な物語~
2013 NOV 21 0:00:57 am by 東 賢太郎
地中海に浮かぶ小さな島・マルタ島は、世界中で最も猫が住みやすい場所といわれている。漁師町サンジュリアンで、捨て猫を拾って育てている女性や、ひたすら野良猫にエサを与え続ける独身男性など、猫を愛し猫とかかわっている人たちのさまざまな人生模様を描く。
こういう番組でした。100分間じっくり見せていただきました。僕はTVはほとんど見ませんが、ネコ科が出れば何時間でも見ます。ディスカバリー・チャネルのライオン特集みたいなものは丸一日でもOKです。猫と一緒に育ちましたので。
地中海のマルタ島は人口の約2倍、70万匹の猫がいます。昔から漁師が船荷を鼠から守るため猫を連れてきたのでこうなったそうです。とても大事にされていて「マルタ猫協会」という立派な団体まである。感動ものです。誰にもじゃまされず1か月ぐらいいてみたいものです。番組はその大勢の猫にかかわる幾人かの島民の人たちの生き様を描いたもので面白かったです。
協会長さんいわく「犬はエサをくれる飼い主を神と思っています。猫は飼い主がエサをくれるのは自分を神と思っているからだと思うのです」、まったくそのとおり。神と思っています、僕は。さすが猫の達人です。猫は飼い主を観察し、完全に見抜いています。だから猫をわからない人には寄り付きません。わかる人とは適当な距離感で共存できます。お互いそれが心地よいことを知っているのでいちいち尻尾を振るようなことはしないのです。この番組は猫を神と思う人たちが出てきます。
男性マニュエルさんは毎日スーパーでキャットフードを大量に買い、島を歩き回ってえさをやっています。彼の表情から猫が喜ぶことがうれしいという純真な気持ちが伝わります。誰でも彼を知っていてキャットマンとあだ名される。何をしている人かは不明で資金源は親の仕送りか。「結婚しないのですか」と聞かれ、しばらく考えて「そういう暇がありません」。島の子供が彼は頭がすこし変な人だという。とんでもない。聖人です。4度結婚したちょっとわけありの感じのフィリピン女性が彼に10ポンドあげてハグするシーンがぐっときました。
英国人のバーバラさんは離婚してマルタに移住した女性です。死にかけた子猫を洗ってお腹にびっしりとくっついた蚤を取ってあげる。5回流産して子供はとうとう授からなかったという話もされます。知的な感じの女性です。インタビュアーの「では今は猫が子供のかわりですか」はペットを何かと擬人化する日本流の質問。「子供とペットは同じにできません。猫は大事なパートナーよ」、大人の答えでした。しかし彼女の猫への聖母のような愛情も無条件なものです。
お金や名誉や保身で動いていない人たちがどんなに強くて美しく見えたことでしょう。人の幸せってなんだろうと考えました。僕は猫好きを通りこして「猫好きの人」好きでもあります。母も妹も捨て猫を次々と拾ってきて育てるなど、これは遺伝子でしょう。お二人のようにそれが人生をかけた献身にまでなるというのは尋常の好き加減ではありません。敬意を表するしかありません。この番組を作られた方もそこを描きたかったのかな。ありがたいことです。
番組とは関係ないですが、マルタの猫を撮られた動画があったのでお貸りします。大変すばらしいです。
猫たちの姿もいいですし、これを撮られた方も大好きです。
(追記、2月10日)
飼育数で猫が犬をぬきそうだという話、いいですねえ。別に犬がどうこうでなく、捨て猫に里親がたくさんできるじゃないですか。僕がいっしょに暮した5匹、そしていま家族のノイもぜんぶ捨て猫です。それがどうしたというんでしょう。たくさんのかけがえのない思い出をくれるんだから人生の大事な一部です。若い頃の人生、猫がいないなんてことは考えられなかったのです。
今だってそれぞれ撫でた頭の形や声やじゃれかたを忘れません。僕は猫と遊ぶプロだから、あの猫はこれじゃ喜ばない、これならのってくる、この距離だと捕まるみたいなことが全部わかる。それがまたそれぞれちがうのです。猫に貴賤なしです。僕は血統書なんかぜんぜんいらない、むしろ雑種の平凡な猫のほうがずっと好きです。
猫は一般に飼い主でも人間を下に見てます。しかし家族のうち僕だけには一目置いていて、おぬしやるな、只者ではないな、何者だ?と思っているのです。だからこっちもお前は何猫だ?といつも返してる。これはどういうわけか、なにか猫好きオーラでも出てるのか、初対面の野良猫でもそうです。あんまり逃げないし、寄って来るし、場合によっては遊んでやってもいいよという顔をしてる。
だから家で僕がヒモやらハタキやらカシャカシャぶんぶんなんかを手に取るや、さっと緊張感が走ります。そして武蔵と小次郎みたいな一騎打ち、真剣勝負の空気となる。猫はシロウトはすぐ見ぬいてなめるし、下手くそなのですぐ飽きます。しかし僕とやるとやがて息が切れて降参となるのです。
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西室 建
11/21/2013 | 11:19 AM Permalink
マルタ島は私も一度行ったことがあります。
元英領から独立した国家ではありますが、その前は聖マルタ騎士団の所領で、当時の要塞ヴァレッタの城跡が荘厳な威厳を保っていました。通貨はその頃まだポンドだったような。
マルタ騎士団は実は今でも存続していて、ローマに自治領(といってもワン・ブロック)があり、しかも国連にオブザーバー参加しています。実態は赤地に白十字の救急車を走らせている慈善医療団体に過ぎないようですが。
それよりも、かの地には第一次世界大戦の際、日英同盟の縁で地中海に派遣された駆逐艦榊(さかき)が大破し、殉職者が出ています。その顕彰碑があって訪ねてみました。ネーヴィー・ファンとして密かな自慢です。
東 賢太郎
11/21/2013 | 3:22 PM Permalink
マルタ島はスイスのころ地中海クルーズで寄ったはずだが2~3時間の寄港で終わってしまい史跡も猫も知らずに終わった。インターネットがある時代だったらと悔やまれます。