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クラシック徒然草-モーツァルトのピアノ協奏曲-

2014 JAN 2 3:03:03 am by 東 賢太郎

僕にとって人生に欠くことのできない、いわば至高の楽しみというものがいくつかありますが、モーツァルトのピアノ協奏曲を聴くことはその最右翼のものです。

僕が人並みにモーツァルトを楽しめるようになったのは遅くて大学時代です。ロシア物と近代音楽からクラシック入門したため、それまでは全然だめでした。入学してすぐフェレンツ・フリッチャイ指揮のウィーン交響楽団の3大交響曲を買い、そこそこ気にいりました。しかし決定的にモーツァルトの魅力を知ったのはオットマール・スイトナー指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団の交響曲集(パリ、ハフナー、リンツ、プラハ)でした。そして、ピアノ協奏曲の方でそれに当たるのはエリック・ハイドシェックとアンドレ・ヴァンデルノート指揮パリ音楽院管弦楽団による20、23、25、27番でした。

そこからだんだん好きになって、弦楽四重奏曲「不協和音」、クラリネット協奏曲、オペラ「魔笛」、「コシ・ファン・トゥッテ」を全曲暗記するまでハマってしまいました。会社に入るとそういう時間はなくなりましたが、3年目に留学生に選ばれたので悪いことにまた時間ができてしまったのです。若かったので真綿にしみ込むように音楽が頭にはいりました。MBAを取ると即ロンドン赴任でしたが、これがまた僕にはラッキーで、モーツァルト大好きの街ロンドンでさらに深く深く彼の音楽にのめりこむことになりました。

ロンドンの郊外にあった家では毎日寝ても覚めてもクラシックを聴いていたのは当然で、土曜日は家内と車で街に出てLP、CDを買い中華料理かイタリアンを食べるのが日課ならぬ「週課」でした。一時期、モーツァルト、ベートーベン、ブラームスばかり聴いていて、そういう時期に生まれてきた長女は言葉を話す前にブラームスの4番を覚えました。そんなに聴いたら飽きるか?飽きないからクラシックはいいんです。確かに新世界交響曲を聴いても昔の感動はもう得られませんが、この3人の音楽を飽きるには人生は短かすぎます。

そういう中でも、モーツァルトのピアノ協奏曲はどうにもならいほど魅力があって、ブラームスの第1交響曲は今日は結構という日はあっても、そっちにそういう日はありません。これから彼の曲を聴いてみようという方はピアノ協奏曲から入るのがお薦めです。オペラは長いし交響曲は彼の代表作というほどではありません。シンガーソングライターみたいな存在だった彼が自分を売り込むコンサート・ステージ用に最も気合を入れて書いたシグナチャーピースは何といってもピアノ協奏曲なのです。

僕の場合、どれが好きかというのはなかなか難しくて、やはり最後の方の20-27番がいいのですが、27番よりは9番をよく聴いたりもします。10、14,17,19番もよく聴きます。いや12,15,16,18もいい。こういうことになって結局選べないのです。それでも、最高峰が24番であることはことあるごとに公言していて、ただしそれはそのジャンルということではなく、彼の626曲の全作品中で「レクイエム」「魔笛」などと並んで僕が重要な音楽と捉えているからです。

ハイドシェックどうしてもその次を挙げろと強盗にでも脅されれば、しかたなく25番です。それから僅差で20,23番です。この3つは上記のハイドシェック盤(右2枚)があるのが有難いことで、P協だけでなくモーツァルト入門という意味でも強力にお勧めします。この23番など愉悦感の極みで、これがつまらなかったらモーツァルトとは縁がなかったと思っていただくしかないでしょう。ただ、どういうわけかこのEMI録音の名演はCD屋でもi-tuneでも見かけません。このピアニストが再録音したからでしょうか。そっちはだめです、あくハイドシェック25まで若かりしころのヴァンデルノート・パリ音楽院Oの方を探してください。25番もこれが僕のトップ3に入りますし、20番はいろいろな解釈があるのですがこれの変幻自在な表現はやはり一級品です。27番もいいです。モーツァルト好きでお持ちでないかた、これはマスト・アイテムです。こういうスタイルがお好きでない方も納得されるでしょう。ハイドシェックは有名なシャンペン酒蔵エイドシークの御曹司です。彼も年を取って、最近の録音は僕はあまり好きではありません。しかし1962年録音のこのころは、まさに天才的な演奏をしていたのです。

レコード会社は何をやっているのかと思いますが、探してもないものはないのかもしれませんし、海外にお住まいの方はより手に入れにくいでしょう。今年はモーツァルトの名曲を多めに取り上げてみようと思っていますので、その都度、現在市販されているものの中からお薦めのCDは書くつもりです。

Categories:______クラシック徒然草, ______モーツァルト, クラシック音楽

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