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クラシックは「する」ものである(1)

2014 AUG 2 2:02:05 am by 東 賢太郎

先日書いた クラシック音楽の虚構をぶち壊そう  はずいぶんたくさんの方にお読みいただいているようでありがたく存じます。

音楽はもともと歌ったり踊ったりするものだったという考え方、いかがですか?ブログを書きながら自分のクラシック音楽50年史をふりかえる日々ですが、やっぱり音楽は聞くだけじゃもったいない。三島由紀夫にマゾって言われちまうし、そんならサドでいってやろう、こっちから能動的に音楽に作用してやろうと思うのです。

小さい頃だからまったく記憶がありませんが、ラジオドラマ「赤胴鈴之助」の歌が好きでおもちゃの刀を振りまわして踊っていたらそれが親戚に知れわたり、とうとう祖父のお通夜でリクエストが出て故人の枕元でやったそうです。このとき2歳でまだしゃべれません。どうも性根から歌ったり踊ったりが大好き人間だったようです。

歌って踊ってはそのまま鉄人28号、鉄腕アトム、スーパージェッタ―、宇宙少年ソラン、少年探偵団、エイトマンへと行って、どれもTVに合わせて歌ってました。そしてその流れでベンチャーズのテケテケに行きましたが最初は「口(くち)ギター」。体が小さいのでウクレレを与えられましたが、テケテケらしくないというのでさんざんねだってギターを買ってもらいました。もちろんそれを弾くのも歌って踊っての延長です。その先にクラシックがくるわけですが、では小学校の音楽の成績はどうだったかというと通信簿は堂々の「クラス最低」、要はビリでありました。

これはいいわけがあって、母は妹にピアノを僕にヴァイオリンを習わせたのですが、耳元でキーキーいうのが生理的にだめで鳥肌が立ってしまうのです。おけいこを泣いてボイコットしてついに野球小僧に転身が許されました。そのトラウマでしょう、学校の音楽も大嫌いになり、唱歌はいやだし笛のピーピーはこれまた鳥肌が立つしで先生がピアノに向かったすきについに窓から脱走までしました。当時の風潮ですが音楽は「女のやるもの」であり、そんなのが好きだなんて野球仲間に言おうもんならコケにされそうな空気もありました。

ということで、僕の「歌って踊って」は文部省指導要領と一度もクロスオーバーすることなくクラシックに突入していきます。そのへんのことはこのブログに書いてあります( ベンチャーズとクラシック)。「女の芸事」の世界に入るのかいやだなという羞恥心がありましたっけ。ビートルズ、ベンチャーズの曲はべつに卒業したという感じでもなく今でも聴きますし、2歳からそこまでの「歌って踊って」路線がクラシックで途切れたかというと、ぜんぜんそんなことはありません。だけどテケテケと女の芸事はあまりにちがう。俺のクラシックはきっと変なんだ、異端児なんだというコンプレックスがいつもありました。

ところが長いことヨーロッパに住んでいて、そこの文化にどっぷりつかり、現地のいろんな方々と飲んだり食べたり話したりしていると、キリスト教徒である彼らの人生には教会へ行って賛美歌を歌うというのが当たり前のように組み込まれていることがわかったのです。もう赤ちゃんのころからそうしてる。僕も何度も教会に行ったことがありますが、牧師がなんだか長々としゃべって眠たくなると、ちょうどいい頃合いにオルガンが鳴って歌になる。するとそのへんに讃美歌集の楽譜が置いてあって、それを順繰りに回してくれてみんな難なく上手に歌うんです。そういうことが学校で教わるんではなくて生活の一部になっているんですね。

ヨーゼフ・ハイドンやフランツ・シューベルトは子供のころ、ウィーンのシュテファン教会の合唱隊、今でいうウィーン少年合唱団で歌ってました。意外に思っていたのですが、あの文化を知ってみるとなんでもない自然なことですね。教会で歌い家庭で親に楽器を習いそういうプライベートな空間の中で空気を吸うみたいに音楽を「する」。才能があれば有名な先生の弟子になってその道で食っていく。でもそういう職業音楽家を聞くアマチュアも、楽譜を見て初見ですんなり歌えるぐらいの「する人」だったんですね。

そういう経験をしてみると、「赤胴鈴之助」にはじまる僕の音楽ヒストリーも意外にヨーロッパ的には普通なんじゃないかと思うようになりました。オギャーと生まれると僕らは僕らなりに讃美歌の代わりにそこらへんにある音楽を覚えます。それは面白いから自然に覚えるんで、誰かに言われてそうなるんじゃないわけです。この「面白い」というのが音楽を音楽たらしめているエッセンスだと思います。そして、子供は面白そうなことは自分でやりたくなる。そうやって自然に「する人」になるのです。

クラシックを「する」、これは楽器で弾くよりもっと簡単な方法があります。歌うのです。僕は家では大声で歌い、手はたぶん指揮者より動いてます。完全に音楽と一心同体というか、本当に入ってしまったときはトランス状態といいますか。何を歌うか?交響曲や協奏曲や室内楽をです。ベートーベンやらブラームスやらの。パートはその時の気分でチェロだったりヴィオラだったり、裏声でホルンなんかも。フルート、トランペットは口笛ですが僕のは隣りの部屋にいた人が今のモーツァルトのレコード、口笛入ってるんですかとまじめにきいたぐらい音程とリズムに細心の注意を払ってます。

コンサートホールではこれができないのでつまらない。じっと聴いてるのは苦手です。もうここまできたらいつかオーケストラ1日借り切って僕の趣味のとおり皆さんに弾いていただくぐらいしかないですね。魔笛なんかやりたいですね。あれは全曲オケパートを歌えるオペラです。ただ難点はパパゲーノの首つりのところ、それからパ・パ・パ・・・なんですね、あそこに来るとどうしても泣いてしまう。トシで涙腺がゆるんだわけではなく、若い頃からあそこに弱いのです。モーツァルトの音楽が強いんですね。

こうやって僕はクラシックを「して」います(そのレパートリーを順次ブログにしています)。オーケストラ曲を歌うなんて変だとお思いでしょうか。そうじゃないというのは、僕はチェロを習ってわかりました。あの楽器は僕のトラウマになったヴァイオリンのキーキーが出ません。だから弾きながら気持ち良くて一緒に歌う。すると男の声域ちょうどぐらいなんです。なるほどそれならオケのチェロパートを歌ってみよう。そうやってこの道にたどり着いたわけです。

嘘だと思われたら、男性のみなさんは「裏声」で、女性の方はそのままで、サン・サーンスの白鳥、これを一緒に歌ってみてください。

どうです、できましたか。けっこう気持ちよくありませんか?男の方、高いd(レ)がきれいに出ましたでしょうか(僕の声はそれがギリギリです)。この音域のチェロ、音質は男の裏声そのものということがわかりますね。しかも、天下の名チェリスト、ピエール・フルニエと合奏!彼の微妙なポルタメント、フレージングの秘密までよくわかってしまう。こうやって音楽の先生が教えてくれたら窓から逃げなくてもよかったなあ。

クラシックは「する」ものである(2)ー放浪記ー

 

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