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シティ銀行の個人業務売却

2014 AUG 21 2:02:26 am by 東 賢太郎

シティ銀行の個人業務売却にはいろいろ思う所がある。国内の資金量3兆6千億円は地銀の30位ぐらいで決して小さくはないが、そこからの預貸業務収益がシティの株主の眼から充分に大きいとは思えない。低金利下で資金需要が伸びない現況から、グローバルの資本配分で日本が劣後したとして不思議ではない。

シティがリテール業務でターゲットにしたのはハイネットワース(HNWまたは富裕層)の取り込みと思われる。今回の決定は、長年にわたるそのターゲット追求を放棄したということであり、長期にわたるデフレがあったとはいえ個人の貯蓄が減少したわけではない日本市場にどうして見切りをつけたのか、非常に興味があるところだ。

日本のHNWビジネスは砂漠の蜃気楼だ。巨大な湖に見えるが、近づくと消える。シティに限らず世界の名だたる金融グローバルブランドがプライベート・バンク(PB)の看板を掲げて試みているが、成功したという話はただの一度も聞いたことがない。海外ブランドに弱い日本人なのにどうしてなのか皆が不思議に思っているが確たる正解はどの外資も見えていないようである。

いや正確には、見えていないのは外資系の本社幹部で、日本で執務に当たっている日本人幹部や社員の気の利いた人はわかっている。わかってはいても、せっかくいい給料をくれるのだからそれを教える必要もない。今回、シティ幹部や株主はやっと長年のレッスンを経て蜃気楼の真実に到達したということなのかもしれない。

スイス時代にクレディ・スイスのPB部門の幹部がこう教えてくれた。「PBとはね、お客様と一緒に遊んでプライベートを共有するビジネスなんです」。この原則に照らすと、日本がダメな理由がおぼろげだがわかる。それをご説明しよう。

日本のサラリーマンはお客のプライベートを自分の上司や会社と共有する。まずこれが論外である。信用して秘密を明かせる人のことをセクレタリー(secretary)という。会社でペラペラしゃべる人にシークレットを言う道理がない。コンプラ部門に報告義務でしばりつけられたサラリーマンには困難である。

しかしもっとダメなのは遊ぶ方だ。HNWと遊んで「プライベートをこの人と共有したい」と思うほど楽しませるのは、満員電車で通い500円の弁当を買っているサラリーマンには気が遠くなるほど無理だ。なぜかは説明できない。つまらないからだろう。

接待ゴルフや宴会が遊びだと思っているならHNWビジネスは永遠に無理である。それが通用するのは大企業のサラリーマン社長や経営者である。なぜ通用するかというと、彼ら個人はHNWの一員ではないからだ。

HNWの多くは日本における事業の成功者である。日本国内のなまじっかな話題や知識でサラリーマンが太刀打ちできる相手ではない。海外についても、仕事も遊びもよく知っている。付きあっている人のレベルが高いので情報はもとより諜報も知っている。

資産は自社株がほとんどで事業はうまくいっている。うまくいったからHNWなのだ。だからその配当利回りを上回らない事業や運用など興味をもつ理由がない。証券会社や銀行の店頭にチラシが置いてあるような金融商品を紹介してみればいい。二度とアポイントは取れなくなるだろう。自社商品だけ売ろうと意図するなら自殺行為だ。

最後に、これが一番大事だ。HNWは人を見抜く。見抜いてきたからHNWになったのだ。巧言令色などひとたまりもない。だから本音で体を張って付きあわなくてはならない。本音のないプレゼンやセールストークだけの人、体を張る胆力のない人とは毛頭無縁のビジネスである。

僕の経験から思いつくことをざっと書いてもこんなもので、シティが大志を抱いてHNWビジネスの看板を掲げたところで、それを現場でやるのは所詮は日本人だ。金融経験が必要だから全員が元はどこかのサラリーマンだ。

だから必然的に無理なのである。

 

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