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シューマン弦楽四重奏曲第3番イ長調作品41-3

2014 OCT 10 18:18:40 pm by 東 賢太郎

シューマンの室内楽で好きなものというと筆頭格になるのがこの曲です。室内楽の年と言われる1842年にピアノ四重奏曲、同五重奏曲、ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための幻想小曲集とともに3曲の弦楽四重奏曲(順にイ短調、ヘ長調、イ長調)ができましが、その最後のものが3番です。ピアノ入りの曲の方が一般にはよく聴かれており、弦楽四重奏はあまり人気がないようですがもったいないことです。

schmann sqこの曲とつき合うきっかけは米国留学中、83年8月に行った欧州旅行の折、ザルツブルグで買ったLPでした。地味な曲ですがすぐ耳になじんできます。特に終楽章アレグロ・モルト・ヴィヴァ―チェの弾むようなリズムは前年に初稿が書かれた交響曲第4番との近親性を思わせる特徴あるもの。ロマンティックで静謐な第3楽章アダージョ、高貴で心にしみいる味わいをもった深い音楽なんですが、そう思うと短2度が美しいバラの棘のようにささってきて一筋縄ではいきません。彼の室内楽の緩徐楽章でも出色のもの、この楽章は何度聴いてもいいですね。

第1楽章の出だしは序奏部(Andante espressivo)がありますが、主調ではなくニ長調の6の和音(d-b-f#-a)に乗って5度下降する主題から入ります(スコア赤枠内)。この主題 f#-b-b は移動ドで読むとミ-ラ-ラ-ですが、変イ長調の6の和音に乗って c-f-f とやはり五度下降でミ-ララ-と入るベートーベンのピアノソナタ第18番の冒頭と酷似しておりびっくりします。

ベートーベンの当曲の稿に書きましたが、僕には18番の出だしは Ludwig、Ludwig! と聞こえるのです、どうしても。それはきっと恋人がおこしてくれる声じゃないでしょうか。それならこっちは?  いわずもがなですね、Clara(クーララー)でしょう。

 

schumann sq

もうひとつびっくりがあります。スコアの青枠内です。第1Vn、第2Vn、Va 、Vc と受けつがれる下降音型はブラームスの弦楽四重奏曲第1番ハ短調作品51‐1の第4楽章にも現れ、もっと有名なものでは交響曲第1番ハ短調作品68の第3楽章にも現れるのです(これは一聴にして明らか、誰でもわかります)。

つまり、師匠の傑作であるこの曲をブラームスが敬愛してまず自分のカルテットに、そして後に同じハ短調である交響曲に本歌取りしたことは(誰も指摘したのを見たことがないので僕の想像になりますが)充分あり得ることと考えております。シューマンが宣言した 「ベートーベン=シューマン」 のリンク。それにつなげて自ら 「シューマン=ブラームス」 と宣言することでベートーベンとつながるのです。

両曲ともブラームスにとっては満を持したジャンルの処女作です。だからこそどちらもモーツァルト、ベートーベンを強く意識したハ短調であります。その特別なメルクマールである両曲に、もうひとつ、自分を世に出してくれた恩人でありもう故人となっていたシューマンの刻印を押す。それによって自分はベートーベンにリンクする。「師匠のおかげで」という実にブラームスらしいメッセージと思うのです。もちろんそれはクララに聞かせるためであり、彼女はそれに気がついたことでしょう。

余ほどのクラシックマニアかシューマン・フリークを除くとこの曲を全部記憶している方は少ないでしょう。この機会にお耳になじませていただければ幸いです。

melos僕がよく聴いているCDはこちらです。メロス弦楽四重奏団の86年の録音で、89年ごろロンドン時代に買ったものです(29.97ポンドのタグがついている)。この団体は第1Vnのメルヒャーが亡くなって残念ながら2005年に解散しました。このCDでは第2Vnはゲルハルト・フロスですが93年からイーダ・ビーラーに交替しました。彼女の演奏をその93年にフランクフルト時代に住んだケーニッヒシュタインのお城でのコンサートで聴きました(ラヴェル等)。途中で彼女の弦が切れて大変でしたが、シュロス(お城)コンサートの素晴らしい雰囲気は忘れがたく、まだ小1と幼稚園だった2人の娘が人生初めて聴いた(寝ましたが・・・)コンサートはこれでした。そういうことでも思い出深いCDであります。

ブルックナーとオランダとの不思議な縁

 

(こちらもどうぞ)

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