ヘンリー・マンシーニ 「刑事コロンボのテーマ」
2015 DEC 15 23:23:22 pm by 東 賢太郎
前回にMistyでご紹介したイタリア系アメリカ人作曲家のヘンリー・マンシーニ(Henry Mancini、1924-94)は誰でも知っているテーマを紡ぎだした名人であります。美しい旋律を書けるというのはひょっとしてどんな複雑な楽曲を作るよりも希少な才能なのではないでしょうか。
最も有名なのはこれでしょう。『ティファニーで朝食を』(1961)の挿入歌「ムーン・リバー」(Moon River)です。原作ではオードリー・ヘップバーンが歌うのですが僕はこのアンディ・ウィリアムズの美声で覚えましたね。小学校低学年でした。
こっちも誰でも聞いたことがあるでしょう。ピンク・パンサー(1963)のテーマです。これはジャズっぽいですね。
マンシーニはジュリアード音楽院に学んでいますが、チェコ系のオーストリア人、エルンスト・クシェーネク(Ernst Křenek )の弟子であります。この人はグスタフ・マーラーの娘アンナ・ユスティーネと結婚しており、マーラーの交響曲第10番遺稿から第1,3楽章の校正・改訂を行なっています。マンシーニはばりばりのクラシック本格派の教育を受けているわけですね。
ちなみにクシェーネクのピアノソナタ第3番はグレン・グールドが弾いたスタジオ録音の名盤があり、このライブ録音の透明感とタッチはさらに素晴らしい。しかし作曲者はグールドの解釈を嫌ったそうです。
さて、僕が好きである刑事コロンボのテーマですが、これもマンシーニ作曲なのですね。ところが当曲はコロンボだけのテーマではなく、NBCミステリー・ムービー(NBC Mystery Movie)というTVドラマ枠のテーマで、コロンボは同時間枠に放映されたいくつかある作品のひとつのようです。
コード進行はこうです。
G/Am/D/G/Em/Am/D7/G/ G/Am/D7/E7sus4/E7/Am/Cm/Gmaj7/E7sus4/E7/Am(on g)/D(on G)
曲締めのインパクトあるAm(on g)/D(on G)ですが、ラヴェルのクープランの墓(メヌエット)の結尾の和音とそっくり(というか調までまったくおんなじ)ですね。
マンシーニもこれを愛奏してたんじゃないかと想像してしまいます。
ついでに、このメインテーマを弾いている電子楽器はオンド・マルトノで、メシアンの「トゥーランガリラ交響曲」で大活躍します。
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中島 龍之
12/16/2015 | 1:27 PM Permalink
MOON RIVERは、アンディ・ウイリアムス・ショーで聴いてました。ヘンリー・マンシー二は、映画音楽の第一人者のイメージでした。耳に残る音楽を作ってますね。こういう音楽を作る人はクラシック音楽からの流れですよね。
東 賢太郎
12/17/2015 | 4:26 PM Permalink
ガーシュインはラヴェルに弟子入りしようとしたし(断られた)、バカラックはミヨーに習ってますね。有名な先生についたかどうかはともかくクラシックのピアノの技量が相当ないとああいう曲は書けないと思います。