将軍様はカネの臭いがわかる男である
2017 MAR 3 12:12:36 pm by 東 賢太郎
きのう12才下の後輩が来て、新しいことに手を出しちゃだめだという話になった。証券出身はつぶしが効いて全33業種を相応に知っている。しかしそれは耳学問で丁稚(でっち)からしてはいない。30代で小売業で起業して十余年、ちゃんと成功している彼にしてそういう言葉が出る。
彼も高校球児でホームランを何本か打ってる。でも最近始めた草野球でストライクが入らないとか2塁牽制はどっち回りでしたっけとかきいてくるのは内野手だったからだ。同じ野球でも丁稚からやっていないポジションだとそんなものなのだ。
運動なら丁稚はせいぜい15才までだろう。ハタチは遅い。わりと似ているといってゴルフも無理だ。「だったらまた野球やれよ、こっち7で本業3ぐらいで人にやらせてさ」という結論に至った。野球とは証券ビジネスのことだ。「なるほどですね」。体でわかってる人に説明はいらない。
かたや政治となると33業種ですらなく、何もわからない。友人が出馬したので09年に民主党を応援してしまった。衆議院議員さまとなったので教わって元大臣と食事までしたがやはりよくわからない。野党の田舎のプロレスは愉快な出し物だが、国会自体がプロレスの側面もあるだろう。お仕事の実況中継は与野党全員の晴れ舞台だ。特権階級共同体で役を演じている。
英国の議員さまのプレイはもう少し品よく、ドルリー・レーン劇場のお芝居であって、観客に階級があるから役柄がより見えやすい。かたや米国はそれがない建前だがロビイングがおおっぴらで族議員だらけ。見え見えの嘘の羅列で真意はとても見えないが国民性は単純だから落としどころはけっこう見えたりする。
そういうものだから政治家の言葉というのはエスペラント語みたいに意味不明なのだ。そしてその意味不明にうまいこと隠れて食ってる人間がたくさんいる図式は万国共通である。そこに運悪く出現してしまったのがトランプ大将軍さまだ。ツイッター直撃ミサイルの炸裂で、そういう連中のスポークスマンであるマスコミの嘘っぱちがばれてしまった。
大将軍は誰でもわかる言葉を吐く人類初の政治家である。あれを馬鹿だわからないと平気で言ってしまう日本のマスコミほど米国のマスコミは馬鹿ではない。徹底毀誉褒貶戦略で陥落できないとなると逆にすり寄るだろう。そうなったとき他国の将軍さまの品格がどうのとか、ヒマつぶし未満に完璧にどうでもいい発言で尻馬に乗っている連中は実は自分が失業の危機なのだ。
丁稚からやってる政治家が政治を語るなら嘘半分でもまだ聞くが、選手と焼き肉を食っただけのスポーツ新聞の記者がプロ野球の解説者という恥ずかしい図式はいい加減にご勘弁願いたい。まして英語もできないのがメジャーリーグの解説だ。それじゃ嘘がばれるので「専門家」なる者を連れてくるとソフトボールの選手だったりする。
歯に衣着せる必要のないネット民はましだが彼らの情報は国内に限った話で米国のことなど誰もわからない。僕もわからない。ニューヨークの友人に電話できいたって、じゃあ彼が僕に安倍政権の今後をきいて日本がわかるかってことだ。意味ない。つまり、その彼が米国通だろうと専門家だろうと個人の意見などウチの隣のボブがこう言ってました程度の話にすぎない。そんなものを信じてはいけないのである。
我ながら言ってる意味が不明になるが、しかしながら僕はトランプ将軍の言ってることだけは痛快なほどよくわかる。オバマやヒラリーの裏ありげで空虚なエスペラント語や嘘っぱちのマスコミの10倍ぐらい。彼が我々証券マンと同じほどカネの流れを基軸にものを考えてるなら説明がつく。自身の丁稚時代からの経験値がそうさせるのかゴールドマンが入れ知恵してるか。「ビジネスマンだから」と人はいうがビジネスマンは資金移動表など見ないことを彼らは知らない。
こういうことは投資判断に関わるのでソナー・アドバイザーズのブログにしか書かないが(トランプの噂も七十五日 )、自分の頭がその時点のベストな情報でどう反応したか復習するのは自分のリスク管理に大事で、さかのぼって自分の書いたものを時々読んでみるが、去年の6月、大統領選の5か月前に書いたこれが気になるソナー・ファイル No38(これから世界で起きること)。
ここにいみじくもこう書いている。
根本的に世界をおかしくするのはヒト、モノ、カネの velocity の低下だ。私見ではこれが最大のリスクである。それを忌避するなら EU に参加料を払う意味がないし、脱退が続くし、EU の存在意義も消える。それはグローバリズムの配当がないということであり、世界は保護主義により狭隘化する。関税で貿易量が減り企業収益は低下して金融収益は減りマネーの需要は低下し、ひいては税収も減る。velocity の低下は国家も殺す。このことは米国でトランプの出現で示唆、予言されていたが、Brexit で確認されてしまった。
将軍さまはこの世界経済の危機を救ったスーパーマンであることを米国の民もマスコミも気づいてはいないだろう。とりあえずだけのことになる危険はまだあるが。将軍さまは知っている。経済のうえにのみ政治は成り立っている。彼なしで米国もEUももたないし、中国もロシアも破滅することだって。
突如として1兆ドルのインフラ投資なんかがでてくる。議会もマスコミも面食らってわけがわからない。日本のセンセイがたなどもうお手上げでダンマリである。それがなぜ唐突に出てきたか?僕がどう読んでいるかは上記の抜粋部分からおわかりだろうか。将軍は America First! を吠えながら世界の資金移動表を見ている。彼が「カネの臭いをかぎ分ける能力のある男」であることはほぼ確実である。なぜなら丁稚からやっていないポジションのことは野球部にいてもわからないからだ。
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