カルロス・クライバー/ベルリン・フィルのブラームス4番
2017 APR 2 1:01:57 am by 東 賢太郎
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レコード芸術誌の「巨匠たちのラスト・レコーディング」という企画によると、僕が聴いた演奏会のライブ録音が人生ラストだったという大指揮者が二人いました。オイゲン・ヨッフム(ブルックナー5番)とジャン・フルネ(ブラームス2番)です。
ほかにも最後のマーラー(ショルティ、5番)や最後のブラームス(カラヤン、1番)なども指揮姿とともに鮮烈に記憶にあって、「巨匠の時代」があったとするならばそれは僕らの世代の眼前で静かに黄昏を迎えていったのかもしれないという感慨を新たにいたしました。
幸いなことにその4つの演奏会はすべて正規の商業録音が残っています。音がいいだけに会場の空気まで生々しく蘇ってきます。もうひとつ、カルロス・クライバー(1930-2004)の、最後ではないがたった2回しか人生で振らなかったベルリンPOとは最後だった演奏会(ブラームス4番)があって、これについてはすでにブログに書きました。
クライバーは日本通で和食も好きで、お忍びでよく来日していたと某社で彼を担当していた人に聞きました。ベルリンの演奏会は正規盤がなく米国製の海賊盤が残っていますが彼はこれを秋葉原で買って愛聴していたそうです。それをyoutubeにアップしましたのでどうぞお聴きください。
これをいま聴きますと不思議な気持ちで、モノラルであるせいもあるのでしょうか、レコードを擦り切れるほど聴いたフルトヴェングラーやトスカニーニも実演はあんな感じだったのだろうかと逆体験の空想に浸ることになります。
好きなオーケストラ、好きな曲だけ振って、好きなようにスケジュールを組んで貴族のように生きた男。前述のかたに彼の出自もお聞きしましたが、もうこういう人は二度と出てこないだろうと思います。
それは現在の我々がクラシック音楽と思って聴いている音楽が最後に生まれたのが20世紀前半のことであって、その作曲現場の空気を知っていた世代の演奏家が世を去っていったことで終焉を迎えたものだからです。
個人的に、第2次ベル・エポックとでも名づけたい良き時代であり、そういえばこんなに長く70年も大きな戦争がなかったのも良きことでした。ご本家ベル・エポックは第1次大戦で終焉しましたが、今度はその禍なきことを祈ります。
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かめ
4/3/2017 | 8:34 PM Permalink
ブログのリスタート、安心しました。
カルロス・クライバーのこの演奏は某音盤組合に落ちていたものを拾って密かに聴いていました。ベルリンの連中の物凄い集中力と緊張をはらんだ演奏ですが、こういう物はいつもできるわけではないでしょうし、やっているほうも聴いているほうもそれでは身が持たない。繰リ返し聴くメディアには馴染まないものです。一期一会がふさわしいのでしょうね。そういえば、チャーリー・パーカーの隠し録りされた有名なものと似たような印象を持ちました。切れば血の出るような・・こんな演奏を毎晩やっていたら身も心もボロボロになってしいます。
東 賢太郎
4/4/2017 | 1:25 AM Permalink
かめさん、ご迷惑をおかけしました。
おっしゃる通りこの日はホールに満ちた演奏家と聴衆の強烈なオーラに当たったようでぐったり疲れてしまいました。クライバーの発していた「気」が尋常でなかったのですが、BPOが第3楽章あたりで火がついてきてもう双方が止まらなくなって、会場ごと渦に巻き込まれてもっていかれたという感じでした。クライバーは終わって放心状態に見えましたし、こちらもお隣にいらしたピアニストの田部京子さんともどもしばし言葉が出なかったです。これ以来そういう経験はありませんし、たぶんもうないのでしょうね。チャーリー・パーカーのそれは存じませんが、なんというアルバムですか。
かめ
4/4/2017 | 10:07 PM Permalink
ディーン・ベネデッティという人が、執念で隠し録音したものです。すべてパーカーのソロのみという少々つらいものでもあるのですが、バルトークが録音機材をもって民謡収集に明け暮れたのを想います。
MOSAICというアメリカのマイナーレーベルから出ていました。