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今年3回目の手術たちあい記

2017 NOV 23 3:03:37 am by 東 賢太郎

お袋、親父ときてこれが3回目だ。手術は朝9時からだった。状況次第で僕が署名をしろといわれる。待合室に一人であり、昼になっても食欲もなくずっとそこにいた。メールしたりして紛らわせていたが集中しない。それにしてもずいぶん長い。そろそろあのメシアンのオペラが終わるころだなと思った2時半ごろ、とうとう執刀医に呼ばれた。緊張のなか摘出部位を前に詳細を聞いたが、とりあえずの吉報で胸をなでおろした。

従妹は12人いる母方イトコのうちのすぐ下で妹のように育った。男は4人という弱小勢力であり、ウチはネコまでメスで完全なる女系と言える。おばあちゃんは気丈な九州女でキセルと酒を手放さなかったし叔母さん方もお袋も強かった。そういう中で育つと女の方が実は偉いんじゃないかと刷り込まれてきた気すらする。少ないからか男らしくしなさいと育てられたが、思えばそれはけっこうつらかった。男だからといって別に強いわけではないのだ。

小学校でみんなでやる教室の掃除はしないでホウキで野球をしてた。家でもしたことなく、女の子に邪魔もの扱いされるだけだった。まして台所仕事にいたっては論外だ。今でもできないからお袋がそう育てのだろうが、さすがのこの世代でも友人で同じことを言う男はひとりしかいない。そういう楽をする代償として、男らしくしなさいがどかんと来る。だから僕にとって女々しいことは悪であり、金を稼ぐのは当然であり、女子供を守るのは義務であり、日本風ノブレス・オブリージュなのである。

お袋は若いころをはじめに都合5回も大きな手術をして、そうやって育てた息子がいまだに入院すらゼロなのは身代わりになってくれたと信じるしかない。思えば入院中も傷が痛かったのだろうが泰然としたものだった。自分がそういうことになったら・・・とても無理だ、注射だけで。だいたいが全身麻酔など生理学的メカニズムすらわかっていないものを、目が醒めなかったらどうするんだとまったく信頼がない。

ということで、怖いものは見ないようにしようということでここまできてしまった。5時間半にそんなこんなでいろんなことに思いをめぐらせていたが、考えれば考えるほど万事に気弱になっていく情けなさで、病院においては気丈な考えは微塵も出てこない。仕込まれた男らしさなんかふっとんでしまって3日もいたらそれだけで病気になりそうだ。そういうことというのは健康あってこその恵みだと思い知る。

従妹はしばらくして麻酔から醒め、やつれてはいたが泰然と帰ってきた。女の方が実は偉いんじゃないかという思いは病院においては決定的なものである。

 

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