読響定期(テミルカーノフ指揮)
2018 FEB 17 1:01:02 am by 東 賢太郎
指揮=ユーリ・テミルカーノフ
ピアノ=ニコライ・ルガンスキー
チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 作品43
ラヴェル:組曲「クープランの墓」
レスピーギ:交響詩「ローマの松」
ルガンスキーの弾いたアンコール(ラフマニノフ前奏曲作品32-5)が絶美で強烈に印象に残った。僕は彼のラフマニノフ第3協奏曲(イワン・シュピレル / ロシア国立アカデミー交響楽団との旧盤)を最高の録音のひとつと思っている。作品43より3番をやってほしかった。
フランチェスカ・ダ・リミニはあんまりおもしろい曲と思わない。ローマの松はラテン風でなく終曲のエンディングに向けてひたすら音圧が上がる。まあとにかくでっかい音がしますなというシロモノ。クープランの墓。木管がいただけない、オーボエがまずくて集中できなくなってしまったし、フレーズの繰り返しが全部省略というのはなんだ、欲求不満がつのるだけであった。
昨日たまたまyoutubeでクープランの墓をいろいろ聴いており、久々にプレリュードが胸にしみた。これのもたらす心象風景がどこで刷り込まれたのか記憶がないが、僕を虜にする劇薬的な効能がある。量子力学の入門書を読んでいたら物質を作る原子核の周囲にある電子は光が当たると瞬時に位置を変えるとある。その前はどこにあったかわからないが、当るとぱっと動いて物質の性格を変えている(はず)らしい。
プレリュードが聞こえると自分の脳内で電子がぱっと動き、全細胞の電子がある位置に同期していつも同じ風景を錯視させ、同じ恍惚とした気分をもたらす。それがギリシャなのかエーゲ海なのか地中海のどこかかは知らないが、たぶんそのあたりだ。それを現実に見たというより(そんなに何回も行っていない)細胞のどこかにあるずっと遠い先祖の記憶みたいな気すらする。この曲がひょっとして自分の最も好きな音楽であっても文句は言えない。だから自分で弾かなくてはいけないがなかなか手に余る。とにかく難しいのだ。
プレリュードで好きなのはこれだ。イタリア人指揮者ジェルメッティがドイツのオケとは思えないラテン感覚でせまる。この曲はこのぐらいオーボエをはじめとする木管が上手くて色香がないと話にならないのである。セクシーでないラヴェルなんか犬も食わない。
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Categories:______ラヴェル, ______演奏会の感想
野村 和寿
2/19/2018 | 11:57 AM Permalink
指揮者ジェルメッティは、長いことローマ歌劇場の音楽監督をやっており、また夏のキジアーナの指揮者講習会の指導もやっていたので、ぼくの医者の友人も講習会にてジェルメッティの薫陶を受けたと聞きました。日本人はたくさんこの講習会に参加しているので、習った人は多いようです。たしかにイタリア人らしい節回しでオケをドライブできる指揮者で、ドイツのシュトットガルト放送響もジェルメッティにかかるとずいぶんとラテン的に鳴るんだなあとぼくも思いました。
東 賢太郎
2/21/2018 | 12:10 AM Permalink
野村君、このジェルメッティのラヴェル集はCapriccioレーベルから出ていましたが僕の宝物となっています。録音が古いわけでもないのにこういうものが廃盤なってしまうとなると、ヨーロッパの音楽鑑賞文化の衰退すら心配になってきたところです。