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ワールドカップのポーランド戦は是か非か?

2018 JUN 29 23:23:21 pm by 東 賢太郎

デイリースポーツ新聞は阪神が勝つと一面は常に阪神。これが例外なしの不文律だったが、今回のポーランド戦では、「阪神3連勝」、「能見100勝達成」の大ネタを捨てて初めてサッカーを一面にしたそうだ。ワールドカップのポーランド戦は物議をかもした。あんなのを見せられたらサッカーはつまらんスポーツだなと思ってしまう。

あれがYesかNoかは、本質を突き詰めればサッカーが「スポーツ」か「ゲーム」かという宗教論争なのである。だから結論はない。なぜかというと、ゲームというものは勝てば官軍である。勝たないと意味ないから手段は問わない。極論すれば、バレなければいかさまでもいいし相手がクレームしなければルール違反でもいい。

パチンコで負けて出てきたおっちゃんに「惜しかったですね」、「いいゲームしましたね」、「次につながる負けですね」なんて声かけてみればいい。「兄ちゃん、あんたアホちゃうか?」でおしまいだろう。将棋も囲碁もチェスもポーカーも麻雀も、負けた人に救いの言葉はないのである。

しかしスポーツにはそれがある。敗者もいい戦いだったと讃えられて報われたと思えるものがある。勝敗はもちろんプライオリティーだが時の運でもあり、勝負の中でみせる技術、勇気、フェアプレー精神を是々非々で評価しようという心の在り方がスポーツの根幹にはあるのだ。

サッカーをスポーツと考えるならあれは誰が見ても異論のない無気力試合である。イエローカードの差など何枚あろうがなかろうが、チームごとレッドカードで退場であろう。一方でサッカーをゲームと考えるならあれは他力本願だろうが負け試合の時間かせぎだろうがなんだろうが、是であろう。

西野監督はワールドカップをゲームとして戦ったわけだ。だからあれは是である。彼はルールに則って合理的な判断をしたわけで、ではその根拠となる彼の使命は何かというと、野球場にも大勢いる「ファウルが誤審でホームランでもうれしい。なぜ?勝ったからだ。勝てばいいじゃないか、なんであろうと」という類の人たちをエンターテインすることだからだ。勝てばいいじゃないか、なんであろうと、の人たちが西野はボケだとけなし、翌日に勝つと神だと讃え、鉦や太鼓をたたき、そうやってサッカーを支えマスコミの井戸端会議をにぎわわせてくれるからだ。デイリースポーツの編集長はだから悩んだのだ。西野は苦渋の決断と言ったが、本来サッカーはスポーツであるという信念との齟齬に苦しめられたのであろうと同情する。

なぜかというと、僕はあれを見せられると、サッカーは問答無用でつまらないと思ってしまうからだ。そうではないことは知っている。ミラノのサンシーロで、8万人のスタンドがごうごうと揺れどよめく中で観たインテル・ミラノとACミランの白熱戦など一生忘れることはない。西野監督はワールドカップを「ゲーム」と割り切って勝ち上がりルールにコンプライアントな戦略を採ったが、そのルールがああいうことを招いてしまうのはサッカーにとって損失と思う。「無気力試合はチームごとレッドカードで退場」のルールも導入したら何か不都合でもあるのだろうか。

 

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