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僕が聴いた名演奏家たち(ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー)

2018 AUG 4 16:16:39 pm by 東 賢太郎

6月の読響定期。サントリーホール、入り口に見慣れぬコーナーがあり、近寄るとロジェストヴェンスキーさんの写真が目に入りました。去年のあの凄まじかったブルックナー5番シャルク版のポスターもある。あれ、また来るのかな?まずい、買ってないぞ。いやいや、そんな話はきいてない、指揮棒やスコアが展示してあるし、そうではないぞ、まさか、まさか・・・。嫌な予感がしてネットを検索し、最悪のニュースを知りました。

恐れていた日がいよいよやってきてしまった。僕がクラシックにめざめた中学のころに大家~中堅だった指揮者は本年6月16日のロジェストヴェンスキーさんの逝去をもってすべて故人になったということです。巨星墜つ。同世代のクラシックファンの皆さん、大家の時代の終焉です。

若い皆さん、いま大家である小澤、メータ、ハイティンク、プレヴィン、レヴァイン、インバル、ムーティ、ブロムシュテット、デ・ワールト、デュトワ、シャイー、ラトルらは、当時はまだまだ小僧か青二才の扱いで、一部の人は極東の島国ではレコード市場の表舞台に現れてもいなかったのです。

高2だった1972年に、夢に出るほど没入していた悲愴交響曲がどうしてもききたくて、清水の舞台から飛び降りる心持で高価なチケットを買ったのがロジェストヴェンスキー / モスクワ放送交響楽団の来日公演でした。プログラムは紛失し前半の曲目もまったく覚えてませんが、今はなき渋谷公会堂だったことは確か。そこで「海外オーケストラ来日公演記録抄」というブログを拝見すると、これだったことが判明しました。

 

5月27日(土曜): 渋谷公会堂
チャイコフスキー / ピアノ協奏曲第1番 (Pf・ヴィクトリア・ポストニコワ)
チャイコフスキー / 交響曲第6番

 

これぞ僕が人生初めて聴いたオーケストラの演奏会でした。行った理由はもう一つあって、中学生のころ父に買ってもらったスッペの「軽騎兵序曲」と「詩人と農夫」のEP盤(右)が1万枚あるレコード/CDの記念すべき最初の1枚でその指揮者がたまたまロジェストヴェンスキーだったからです。初物づくしの指揮者でした。

高2の5月27日というと僕は硬式野球部で夏の大会予選に向けて投げまくって故障した頃でした。我慢してましたがやがて激痛で右ヒジをまっすぐに伸ばせなくなりました。鍼灸師、電気治療院に通いましたが治癒せず、背番号1番から14番に降格された絶望のときです。クラシックという違う道の喜びを見つけたのか偶然そうなったのかは覚えてませんが、運命だったと思うしかありません。

後の欧米赴任時代にはロジェストヴェンスキーのライブを聴いた記憶はなく、もっぱら彼はレコード上の大家でした。スヴェトラーノフと違い独奥系レパートリーのイメージが薄く、交響曲がプロコフィエフとシベリウスの全集、シュニトケ2、3、4番、ミヤスコフスキー1,2,5,22番、マーラー5番、ブルックナー5、8番、チャイコフスキー4,6番、幻想、ショスタコーヴィチ5、12番、グラズノフ2、6番、あとラヴェルのダフニスを買っていました。

ライブでは帰国してから読響で何度か。奥さんとのR・コルサコフのP協、チャイコフスキーのイオランタなんて珍しいものも聴かせていただいたし、この人はどんな複雑な楽譜でもすぐ読めて解析できるんだという鮮烈な印象があります。なんといっても火の鳥と春の祭典は、なぜこれを録音しないんだと不思議なほどの深みある演奏でした。そして昨年のブルックナー5番(右)。その前のショスタコ10番を仕事でパスしていたのでこれが聴けて本当に良かった。芸劇で5月19日、母が亡くなる10日前でその前日も病室で泊まりでしたが、この演奏は衝撃でした。きっとこれは母が行かせてくれたんでしょう。

凄かったロジェストヴェンスキーのブルックナー5番

僕のクラシック音楽史は彼の「軽騎兵序曲」によってはじまり、これによって幕を閉じました。思えばウィーンで初めて聴いたニュー・イヤー・コンサートは軽騎兵で始まり、やっぱり最後のコンサートになったオイゲン・ヨッフムの演奏会もブルックナー5番でした。

「エースと4番は育てられない」(野村克也監督)。そう思います。名指揮者もそうでしょう。長らくお世話になり、たくさんの楽しみをいただきました。心よりご冥福をお祈りします。

ラヴェル「ダフニスとクロエ」の聴き比べ

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