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ブラームス交響曲第3番の聴き比べ(5)

2018 NOV 8 22:22:37 pm by 東 賢太郎

カール・ベーム / ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

このDGの全集が出たのは大学の頃で1976年10月に買ってワクワクして聴いた。前年3月、ちょうど合格発表の前後にこのコンビが来日して1番をやり、TVにかじりついて観ていたのも懐かしい。後にCDでも入手して散々聴いたがやがて取り出すのは2,4番ばかりになった。3番はどうも感興がいまひとつだ。VPOの美音は聴けるが安全運転であり自発性が薄い。ヴィースバーデンで老いらくの恋に落ちていた男の情念はあまり感じず、美しいだけの3番は何を主張したいのか焦点が定まらない(総合点:3)。

 

ギュンター・ヴァント / 北ドイツ放送交響楽団 (1984、旧盤)

素晴らしい出だし。英語ならexpansive。なにかエネルギーが流れ出して広がり大きな希望を感知させる。それが微妙な和声の揺れでそこはかとない不安を織り交ぜてくる。この曲はこう始まらないといけない。第1楽章のテンポもこれだ。オケもベームのVPOとは大違いで楽興に乗り自発的(spontaneous)で筋肉質である。木管の質が高くOb.は特筆。第2楽章は誰より速いが全体のコンセプトの中では許容できてしまう。第3楽章はもう少し・・と感じるが耽溺しないのがこの頃のヴァントだ。終楽章のみがたっぷり目のテンポとなり内声の刻み、立体感ある金管のかぶせ方で堅固な骨格をかためる。大変立派な3番。(総合点:4.5)

 

フリッツ・ライナー / シカゴ交響楽団

エネルギッシュに開始するが第2主題で減速してロマンティックになる剛柔織り交ぜたアプローチ。剛毅な男の時に見せる翳りとやさしさがほろっとさせる高倉健モノの如きドラマがある。第2楽章、CSOの木管のとろけるようなうまさに感嘆。第3楽章は感傷を表には見せないニヒルさがいい。物足りない人はいるだろうが僕はブラームスにめろめろは似合わないと思っている。終楽章は鋼のようなリズムで剛毅が戻るが終結で深いロマンと安寧に包み込まれる。ライナーの強力な統率とCSOのアンサンブル力は人工的に聞こえるほどだがこれだけの水準の演奏は他で聴けない。まとまりのない演奏が多い難曲であり、あっさりし過ぎと感じる方が多いことも想像できるが、僕は3番のひとつの完成系と高く評価する(総合点:5)

 

エドゥアルド・ファン・ベイヌム / アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

56年のモノラルだがあのホールの素晴らしいアコースティックは感じられる。それあってのブラームスがいかに映えるか。僕はそれが欲しくて今の部屋と装置をしつらえた。筋肉質なベイヌムのブラームスはどれも逸品である(問題はこれをどう再生するかだけ、できればLPが欲しいのだが)。これもライナーと同様女々しさがかけらもない純正の男節であり、終楽章の血管の浮き出るような金管の鳴らしっぷりは剛毅であり、それが何物かに鎮められて沈着な心持ちに落ちていく虚無的終結は僕の思う3番に誠にふさわしい。好きな演奏の一つだ(総合点:4.5)。

ブラームス交響曲第3番の聴き比べ(1)

Categories:______ブラームス

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