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カープ丸選手のFA移籍について

2018 NOV 18 19:19:37 pm by 東 賢太郎

FA宣言したカープの丸の去就が注目されている。カープファンとしては複雑だがここまで努力した丸を応援してやりたいし、何人も主力選手を引き抜かれても強くなるシステムを確立したカープ球団の経営努力も応援したい。

まずFA制度についてひとこと。僕はドラフトという制度は基本的人権である職業選択の自由を侵害する憲法違反だと考えている。プロ志望届を出してNPBで働く資格を得るのはいい。それでNPBと契約して給料をもらうなら何の問題もない。どの球団に所属するかは新人の赴任地の振り分けに過ぎないからだ。

ところが実態は契約するのは球団であり、NPBは単なる業界団体なんです、12社どこに就職できるかは会社がくじ引きで決めますというのだ。全社の処遇が一律ならまだしも、本店所在地も初任給も出世や退職後の人生航路の期待値もぜんぜんちがう。このリスクを一方的に選手に取らせる仕組みは、どこから選択権が選手から球団に移るのか理論的に明確でない。

NPBは戦力の均衡を図って興行を盛り立てたいからくじ引きという偶然性の要素を求める。それが嫌なら選手はプロ野球はあきらめるしかないという別個の不均衡を生む。かような場合は経済的な補完手段しかないのが通常である。例えばドラフト会議の場において、その枠組みの中で、競合した選手は契約金をオークションにするのだ。根尾選手、巨人が3億円で落札!という風に。

かつてはそれを裏でこそこそやっていた。それでできたドラフトだろうという声も出よう。しかし3億円払ってもポスティングでメジャーに売れば20億円入るから金を借りてでも投資しようという球団もあろう。それを堂々と表でやれということ。すれば選手は職業選択の自由は放棄しても経済的に報われるからフェアだ。要するに「セリ」はいかんというなら「くじ引き」はどうなんだ、目くそ鼻くそじゃないの?という意見である。

FAという制度は、「セリ」をしないドラフトの不均衡を時間差で金銭的に解決するものだ。子供のセリはいかんが大人になればいいだろうというわけのわからないものともいえる。戦力の均衡を図るNPBの意図に反するが、球団の経営力の差で「均衡化」に反旗を翻す余地は残そう(まあ巨人のためだが)、そして選手の基本的人権を尊重したということにもしようというおためごかしだが。であるからして、選手は誰に気兼ねなく金銭重視でFA権を行使してよいという結論になるのだ。

カープファンとしては丸がそうしては困る。しかし僕は「理」で突き詰めた結論に感情で逆らわない人間だ。丸は巨人、ロッテに行ってよい(もしアフターケアを入れて最高条件ならばだが)。カープはお金でなく男気スピリットで帰って来た黒田、新井という求心力で3連覇した。それを中心で支えた丸はもう十分にいい仕事をしたし、球団は丸の引き留めで従来のポリシーを変えるリスクを冒すべきでない。丸が抜けても必ずあとは育てる実績があるが、スピリットというものは変質すると容易に元に戻らないからそのリスクは巨大なのである。

私事で恐縮だが、今になって自分の来た人生航路を振り返ると、野村をやめた2004年に他社からオファーが3つ来て、つい「他球団の評価を聞いてみたい」と魔がさした。あのとき野村では若手の台頭で居場所がなくなってきており、君が必要だという声は甘く響いた。それに乗ってしまった決断がどうだったのか、残る道を選ばなかったのだから知りようがないが、まだ選手で行けると思ったので東証1部上場企業役員の肩書だった2つはお断りして部長のオファーをとった。だから金銭ではなく仕事をとった。

丸選手は迷うだろうなと思う。でも僕らと違いプロ野球選手の実働年数は少ない。年金もない。実績なんて済んだことであって、力が落ちればご苦労さんで戦力外通告だ。だから金銭的価値での評価を絶対に優先すべきと思う。新井は居場所がなかったし黒田はすでに超富裕層だったのだ。男気は関係ない。お金は天から降っては来ません。男は稼いでなんぼの世界でプライドをかけて戦っているのです。君が必要だという甘い声は無視。金があればそこから先はどうにでもなる。もちろんカープも含めてドライにクールに条件だけで決められたらいい。

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Categories:______プロ野球, ______広島カープ

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