OPSで見る今年のセリーグ予想
2019 MAR 27 19:19:23 pm by 東 賢太郎
今年のセリーグ、もちろんカープ4連覇と書きたいところですがオープン戦で気になったのは、やっぱり丸の穴です。丸は2018年NPBのOPSランキングでパリーグを入れても1位の選手です。日本一ですから年俸5億はふつうと思いますし、金満選手でもなければ巨人が特に金まみれ球団とも思いません。しかし悔しいのは、この引き抜きはOPSなる統計数値を見ると効果があるのではということです。OPSになじみのない方もおられるのでwikipediaから引用しましょう。
「OPS=出塁率+長打率」であり、2004年のMLBのデータを基にすると、各指標の(チームの)得点との相関係数は打率が0.849、出塁率が0.910、長打率が0.913なのに対し、OPSは0.955にも達する。日本でも1980年から2010年のデータで(チームの)得点と打率との相関係数が0.776なのに対し、OPSとの相関係数は0.941に達している。
OPSは長打が打てれば高く(いわゆるスラッガー)、その選手は当然クリーンアップだから得点貢献が高いのはあたりまえであるなど万能のデータではないという批判もありますが、スラッガーだけど出塁率が高いのは選球眼が良い証ですから投手としては最も嫌な打者です。かつては王貞治がそうでした。1位(丸)と2位(鈴木)が3・4番で並んでいるということは全プロ野球選手で最も嫌な1,2位が連続して打席に入るということで、この連続という乗数効果が大きいのです。鈴木誠也は2度に1度は丸(出塁率約5割)が塁にいる状況で打席に入っており、しかも初回に必ずその可能性があるということです。長打を打たれても歩かせても、相手の先発投手は立ち上がりから窮地に追い込まれ、5番以下が打てば簡単に得点されてしまう。2番・菊池が2割3分の絶不調でも3・4番の並びの破壊力がそれをもみ消し、それがカープの打線のつながりとなり、逆転のカープのかなめでもあったということです。
丸が抜けたことでカープはそれを失います。「丸の穴を埋める」と簡単に言いますが、OPSの高い選手は即席で作ることはできませんから3番に少なくとも昨年のOPS上位選手を置くということです。ではそれは誰かということですが、カープにはいません。昨年のOPS3位以下10位までの選手をご覧下さい。
3・山田、4・ソト、5・筒香、6・ビシエド、7・坂本、8・岡本、9・バレンティン、10・糸井
カープの選手は松山が16位、田中が22位、野間が23位、菊池が30位で、規定打席に達しなかった候補者の昨年のランキングにあてはめると、安部は29位、西川は18位、バティスタが15位、期待の長野はNPB9年の平均値で21位(.783)、2011年のキャリアハイ(.847)でも15位です。唯一高いのは曾澤捕手の12位(.893)ですが、彼が8番にいたからあった打線の繋がりの減殺であいこです。つまり、長野を含め、「3番・丸」の穴をすぐ埋められる人はいないということです。ということは鈴木誠也の責任とプレッシャーが増しますし、相手はもちろん彼を徹底マークしてくるし、それで調子を落とせばさらに得点力は削がれます。穴を埋めようと皆でもがけばけが人が出やすく、厚みがなくなることもリスクです。
一方で、巨人は岡本(8位)が4番におり、今年は彼がOPSでもっと上位に行くとすると、カープの丸・鈴木とほぼ同じ得点力のある3,4番ができることになります。当初、原監督は「丸2番」構想でしたが、先日「丸3番」を発表し、その方針が確定したようでカープファンとしてはとてもまずい。しかも丸の前に2番坂本がいるとなると、(7位)×(1位)×(8位)の「3連ちゃん連鎖」ができて脅威となる。7と8のカンチャンに1がスッポリはまった効果は非常に大きいと思います。つまり得点力においてカープが落ち巨人が上がるプラマイ効果は統計値の裏づけから確度が高く、丸の引き抜きは悔しいがお見事な戦術であったと言うしかありません。
ではそれで巨人がカープに代わって優勝できるかどうか?ゲーム差が縮まる、あるいは逆転する可能性も投手力次第であるでしょう。ただ、カープの力を削ぐことには成功しても他チームに対してはどうか?台風の目になるのはDeNAベイスターズかもしれないと思います。なぜなら、丸が広島にいようが巨人にいようがDeNAは当事者でなく中立的であり、お客さんだった巨人に多少取りこぼしても得意としているハマスタでの広島戦をもっと有利に戦えれば浮上機会になります。OPS上位打者、ソト、宮崎、筒香、ロペスが2~5番に並ぶと
(4位)×(11位)×(5位)×(17位)
となり、4連続OPS上位の打線の得点力は12球団でもトップクラスである上に広島戦だと元気な捕手の嶺井などがいてカモ意識を持たれているように感じます。同時にヤクルトの青木、山田、バレンティンの、
(12位)×(3位)×(9位)
もあなどれない。広島は二大お客さんだった巨人、ヤクルトと拮抗して星を潰しあってしまうと漁夫の利で投手力もうしろが盤石なDeNAが有利です。DeNAは今永、浜口、東の左投手が復調してカープ戦で勝ち越すような事態になると、優勝してもおかしくないと思います。
最も気になるのはカープ先発投手陣です。打力が落ちる分は投手力でカバーするしかありませんが、大瀬良は良しとして野村は去年から読めないし、ジョンソンがどこか故障していたら暗雲がたちこめます。岡田、九里、アドゥアは安定感なし、結局、新戦力の床田と島内とローレンス次第となるとフランスアを回すしかなくなり、8回が不安になるのです。得点力が落ちますから先発投手のプレッシャーが増すのは確実であることを考えるとここが鬼門。
投手陣は「黒田効果」がすでにはげ落ちてます。野村、岡田の凋落、15勝もした薮田が消えてしまうなど尋常ではなく、いかに黒田が精神的支柱だったかということです。その意味で新井の引退も大きいですね、しかもそこで支柱役を期待された菊池があっさりメジャー宣言してしまう。守備はともかく彼の打撃はメジャー級ではなく、あれはFAの布石とみんな思ってます。男気はもう消えたわけで、丸を見て曾澤、田中もというムードがチームに出ているとしたら瓦解のシグナルかもしれず、とても心配です。
唯一明るい話題の小園ですが田中がいるのは痛しかゆしで、サードで使う手はないでしょうか。候補だった堂林ですがOPSが新人時代の.718がピークで年々着実に低下し、キープしているのは外角のくそボールを振って三振する姿だけ。昨年の.559は客観的にもう一軍選手の数字ではないですね。ということで結論としては、バティスタ、メヒアの大化け、新加入の外人投手の想定外の活躍でもないと4連覇は不安があります。
ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。
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東 賢太郎
3/30/2019 | 12:09 AM Permalink
大瀬良が丸を4連続三振に切って取りました。圧巻です。大瀬良は心配してないのです、ここから先ですね。床田に期待です。菅野は去年も開幕の阪神戦を福留のホームランで落としてますが、安部をなめた一球以外は何も悪くなくカープも打てませんでした。さすがに二級の投手になると一気に打ちますが、この勢いを是非保ってほしい。
中島龍之
3/30/2019 | 9:37 AM Permalink
東さん、OPSの観点から見た予想とは面白いですね。DeNAは強力打線になりますから、投手が頑張れば、優勝ありですね。広島はOPSの視点からは弱いようですが、しぶとい得点力はさすが優勝チームですね。
東 賢太郎
3/30/2019 | 10:48 AM Permalink
統計は未来を予知はしませんが、長いことやるとその数字に寄っていくということは言えます。ただ波乱要因があって、①ダークホースや新人の大化けと②数字を読めてた人のケガですね、この2つだけは読めません。②は祈るしかないですが、戦力の厚い球団、つまりソフトバンクはどこより有利です。広島も、セリーグではそうです。①の方は、統計がないわけですから、ここが面白いですね。DeNAは化けるまでもなく読めてた人が帰ってくるだけなので確率は高く、優勝候補です。巨人は①を資金力で腕づくでやったわけですが、丸の実績からもう誰も波乱要因とは思っておらず勝って当然と思ってます。丸の成績が落ちるリスクの方が波乱要因で、補強って難しいですね。その意味で、ロッテの外人2人が狭くなった球場でホームランを量産すると波乱含みです。
東 賢太郎
4/1/2019 | 12:16 AM Permalink
開幕三連戦、カープは巨人に1勝2敗で、本稿で危惧している方向に行かないことを願うのみです。巨人は原監督のオーラがあなどれないと思いましたし、逆にカープは黒田・新井のアニキ・男気オーラがなくなったのが大きそうです。丸流出も男気消滅の一環として起きた事件であって、その丸は緊張感の中で1本しか安打を打てませんでしたが、その緊張感は「丸がいなくなって本当に大丈夫か?」というカープファンからの本音の目線によるものでもあって、カープの下位打者までビビってますね。あんまりよい発進ではありませんでした。
中島龍之
4/2/2019 | 8:03 PM Permalink
広島のスタートは、いまひとつでしたね。ただ、エースの大瀬良、四番鈴木は健在なので軸があれば戦えるのは間違いないですね。巨人の原監督はさすがの実績ある監督を示した3連戦でした。
東 賢太郎
4/2/2019 | 10:57 PM Permalink
中島さん、きょう巨人・阪神のドームの開幕戦見てきましたが巨人は強いですよ。岡本が外角低めを強烈な二塁打、ゲレーロの強烈な一発で苦手ガルシアを粉砕し、丸が第1号を打つと大歓声で大変な盛り上がりでした。去年のカープを見るような元気さです。阪神はなすすべなしでだめですね、最下位でしょう。カープは去年鬼門だったナゴヤドームでジョンソンで負けました。
中島龍之
4/5/2019 | 10:25 AM Permalink
丸は働きそうですね。派手な感じはしませんが、いつのまにかMVPの仕事する選手なのでしょう。広島は丸の抜けた3番をどうするかですね。いまのところ巨人以外は並んでいるので6試合終わったので、次の6試合でどう組み立てるか注目です。
東 賢太郎
4/5/2019 | 9:53 PM Permalink
中島さん、ついに今日、最下位と書いた阪神に3-2で負けました。しかも大瀬良で。ご指摘の丸の穴は絶対に埋まりません、統計はうそをつかないからです。それは覚悟していましたが、良い方向に競争が増して全体の上げ潮で補えると思ってました。ところがです。それは確かにあるのですが、それを飲み込んで打ち消してしまうもっと巨大な下げ潮があるのです。黒田・新井ロスです。黒田が帰ってくる前の年までカープはこんな感じで巨人に上から目線でなめられてました。つまり、いわゆるひとつの「行ってこい」だった可能性があるのです。奮起を期待します。
東 賢太郎
4/8/2019 | 9:03 AM Permalink
阪神9-0広島。昔懐かしいスコアですね。本稿に書いた危惧がほぼ当たりつつある。丸の穴で「打てない→投手に重圧→打たれる→打者に重圧→ますます打てない」という負のスパイラルを懸念してましたが、なんとカープにはあり得なかった守備力の問題まで起きていることがわかってきました。
安部、西川、堂林のサード守備は12球団最低です。レフトは長野を勘定に入れてもやはり最低クラスであり、巨人は吉川尚が明らかに左方向を狙って打っていた。菊池、鈴木のいる右方向と比べ格差ありすぎです。スパイラルに加えて守備力まで落ち、投手の足を引っ張るというファクターが加わりそうです。
中島龍之
4/8/2019 | 4:04 PM Permalink
広島の今は投打の不調悪循環ですね。4月は我慢で、5月のカープのシーズンに期待しましょう。3番問題をどう解決するかが、緒方監督の力量にかかってますね。
東 賢太郎
4/9/2019 | 12:55 AM Permalink
丸のOPSも補えませんが、39本もホームランを打つ選手もいません。丸、エルドレッド、新井の迫力は野間、安部、西川にはぜんぜんないです。相手投手は当ててきて嫌だなとは思うかもしれないですが破壊力の恐怖感がない。誠也だけ抑えればいい打線になりました。松山の奮起と、バティスタ、メヒアの大化けに期待するしかないです。
東 賢太郎
4/9/2019 | 10:11 PM Permalink
ヤクルト10-1広島。毎日、昔懐かしいスコアですね。しかもホームです。ジョンソンがどこか故障していたら暗雲がたちこめますと書きましたが雷雲かもしれない。ベンチは真っ暗。まあ去年まではベンチが何もしなくても「馬なり」に勝てていたということです。新井とエルドレッドに帰ってきてもらったらどうか。
中島龍之
4/10/2019 | 10:56 AM Permalink
エルドレッド、新井の穴も痛いし、ジョンソンがこの調子だと投手立て直しも時間かかりますね。放出した福井がパ・リーグで使えそうだし、今年の陣容は少し難しそうですね。
東 賢太郎
4/11/2019 | 1:30 AM Permalink
50年もカープファンやってますので10点取られて大敗なんてのはぜんぜんどうってことない。しかし、1イニングで12失点というのはあらゆる野球で人生初めてです。完全にベンチでなにかがプッツンしたように見えましたが、ここまで落ちればもう怖いものはないでしょう。