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副業解禁はウソ。好きなことを大事になさい

2019 JUN 9 13:13:30 pm by 東 賢太郎

筋トレは成果が出ているものの首が痛く、それを話したら他人をあまり褒めない後輩のF君が「神の手です」というのでかかってみた四谷の理学療法士Mさん。素晴らしい。彼女に「見えませんね」と言われてそうか俺は64才だったのかと我に返ってがっかりする。ジムの外転筋マシン150Kgでカラ元気がついてしまっている。

昔からみんなに言っているが金融の仕事が好きでこの道に入ったわけではぜんぜんない。人生、物心ついてから一貫して好きなのは音楽であって、アーティストの方が向いていたのかなと直島の現代アートを見ていて思った。きのう野球を観ていて好きなことで飯が食える選手たちがうらやましかったが、しかしあれを毎日やるのはしんどいだろうとも思った。両立しようがしまいが野球に煩悩が出てくるだろう。だったら「好き」ぐらいは「飯」から隔離して汚れないようにしてあげた方がいいのかもしれない。

僕は家事はしない。料理はもし本気でやれば相当うまいはずだがしない。そう母親に厳しくしつけられているので忠実に守っているのである。家内の作ってくれるものに満足しているしそれがWhen I am sixty fourの歌詞で貴重なこととわきまえてるし、敬意をもって女性の専門領域と思っているし、本気でしないならへたな職域侵犯だ。ということで、食事は出るのをじっと待つから猫と同格である。この点においても、子供時分から猫といっしょに育っていてよく先を越されていたから自然なことだ。むしろ、猫様がいてくれて僕は精神の平衡状態が保てているのだから先に食べていただいて当然である。

昔から生徒会長やキャプテンの柄でないから社長業はできればやりたくない。むしろ嫌である。飲み屋の話ではなく、社会人40年のうち数えたら17年も「シャチョー」とまじめに呼ばれているのは子供時分の自分から思えば驚愕の事実でしかない。ほんとうはクラス会で女子に「あずまくん」とまじめに呼ばれるほうがうれしい人間だが、周囲でそれを知っている人は誰もいない。ふりかえってみると僕は女の人のいうことはよくきくのだということがわかる。若い頃はそれを出すとみっともないと思っていたが、もうどうでもいいのでシャチョーをやってもらった方が気楽なくらいである。

という風に、「ふつうはこうですよね」とならないものがたくさんあって、あんまり書けないがその数からしてそもそもふつうでない。そうやって東京の子なのに昭和30年代に熱狂的カープファンになってしまう。だからふつうであることを要求されるシャインなどのっけから無理だったのであって、消去法の行く末にかろうじて残った職業がシャチョーだったと考えるのがいちばん説得力がある。留学生に選ばれたのも、英語ができたわけでもなんでもないのだから、クラシックが性根まで好きだというオーラが出ていて自然とそうなったと思う。

昨今、「副業解禁、主要企業5割」と話題でいよいよ銀行まで副業OKを言い出したが、そんなのは僕にとって何を今さらだ。シンセサイザーでチャイコフスキー悲愴、ドヴォルザーク8番、モーツァルト41番、ハイドン104番の全曲を演奏、録音したのはサラリーマンしながらであり、シャチョーしながらである。シンセがやりたいから稼業の仕事もついでにしていたようなものであり、しかもそこにゴルフというものが入ってきてそっちもシングルになるまで気持ちは本業になってしまった。ただし言い訳になるがそれで湧き出たエネルギーで一気に仕事も乗り切ったのであって、いまはそれが猫になっている。

「副業解禁」の本音は「当社にいても給料そんなに出ませんよ、他でお好きに稼いでね」だ。政府の「年金頼るな」発言とペアである。この問題に深く立ち入るのはやめておこう。なぜなら僕にはどうしようもない。「他で稼いでね」の部分で啓蒙ぐらいできると思って一時頑張ってブログを書いたことがあったが百万言を費やしてもそれで救われた人がいるとはまったく思えないと考えるに至った。日本人の投資の偏差値は30台であり、もう救いようがない。要するに、国であれ会社であれ皆さんの人生をお看取りまで面倒見てくれる他人など世の中にいるわけないという、もとから自明ではあった峻厳な事実と向き合うご時世になってきたのだ。

ひとことだけ書くなら、好きなことを大事にして、それを理解してくれる人を大事にすることだ。

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Categories:______世相に思う, 若者に教えたいこと

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