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反日という韓流ドラマ

2019 AUG 16 15:15:40 pm by 東 賢太郎

民主主義政治というものは限りなく興業と似ている。ウォートン・スクールでマーケティングの教科書にトマトケチャップの売り込みと大統領選の選挙参謀のケーススタディが同列に論じられていて驚いたが、いまとなると意味がよくわかる。それをご説明したい。大韓民国大統領主演による「反日時代劇」が、MBAの教材にふさわしいほどマーケティング理論に則り、真の国民の利益ではなく興業に資するものであるということをだ。その意味においてこの劇は効果的であり、韓国内での人気においては空前のエバーグリーンであり、16世紀の豊臣秀吉にまで遡る大河ドラマでもあり、悠久の歴史を背景とした大作としてグラミー賞を検討すべしとの声でもいずれ出てくるのだろうかと思わされてしまう。

「反日時代劇」には時代の空気を敏感に反映したモダンな演出も加えられるのが特徴で、朴槿恵氏は史上初の女性大統領という自身のアピールポイントを十全に活用し、従軍慰安婦像の外国での建立働きかけという刮目すべき新機軸を打ち出した。オリジナルの台本にない革新的なアイデアという意味で、僕は1976年にピエールー・ブーレーズとパトリス・シェローがバイロイト音楽祭で聴衆を驚かせた新演出を思い出す。シェローは「ラインの黄金」で古くさいワーグナーを一変させ、『発電所のダムをラインの乙女ならぬ売春婦が走り回る』という誰も予想だにせぬ舞台を設定して世界の度肝を抜いた。朴槿恵氏の場合は、それに加えてさらなるクレジットがある。そのアイデアが日本の大新聞社発案だったという点で、新時代の日韓の合作という色彩を帯びたことも特筆されるからだ。

この劇はかように時の政権による加筆、シナリオライティングが可能で、従って次の政権がそれをさらに加筆修正または全面撤回することも可能である。すなわち、マーケティング理論が国家間合意に優先するという韓国が誇るユニークなシステムに裏打ちされている。ただし青瓦台挙げての上演だけにコストが高くつくのは周知であり、結局それはチケット代として韓国国民が支払わされるのだが、日本人が忠臣蔵を根強く愛するのと同様、それでも韓国人は何度でも観て留飲を下げたいのである。しかし今回の上演だけは違ったものとしてとらえられている。反日物で右に出る者のない大物俳優である文在寅氏による新機軸上演コストが高すぎ、後から回ってくるチケット代の請求書を見るのがこわいという声も出だしているときく。

「反日時代劇」は韓国人や、これで鉦や太鼓を鳴らして食ってる日本の人にとっては大事だろうが、見飽きた日本国民は「また始まったか」の程度だ。ちなみに僕の仕事仲間はみな高学歴のインテリでグローバル派だが、驚くべきことに韓国に行ったことのある人は1~2割しかいない。つまり、のっけから関心がない。文在寅氏は先鋭な発言で彼らを怒らせるという形で関心を喚起はしたが、日本人は「人の噂も七十五日」ですぐ忘れる。現に8月15日の文大統領演説はもう巷の茶飲み話にもならなかった。しかし噂と怒りは異なる。氏がこれから対日融和姿勢に転換して見せれば元に戻るかといえば、YES & NOだ。韓国への関心は七十五日で消えて元に戻る。一方、天皇陛下まで愚弄された日本国民の怒りは解けず、もう二度と元に戻ることはない。したがって、文氏の採れる選択肢はひとつしか残っていないのである。それは、このまま徹底して反日抗戦の姿勢を貫いて日本人を愚弄し、李明博氏が竹島の岩場に登ったような大向こうを唸らせる「三人連獅子」クラスの大パフォーマンスで歌舞くなどしてダメを押して、最低限、韓国国内の興業としては成功させることだ。もとよりそれが目的なのだから軸がぶれてはいけないし、日本国民は隣人として暖かい目でそれを見守るだろう。

ひとつ気になることは、米国の視点だ。GSOMIA(軍事情報包括保護協定)までディールのネタ扱いする姿勢を文在寅氏が見せると「おまえ、連獅子やってる場合じゃねえだろ」と米国に殴られる可能性があろう。在日米軍駐留費を5倍にしろとボルトンが日本政府に言ったというウソの報道が前述の大新聞に出たが、それは在韓米軍の話、つまり言われたのは韓国政府だけであって、カネのない青瓦台はひっくり返り、ホワイト国どころの騒ぎではなかったのが真実のようだ。日本もだよとその衝撃をウソで緩和させてあげようという記事が日本で平然と出る(同紙はこっそり修正した)。親韓の日本語記事は日本人が書いたように装っており、その辺の日本人大学生などよりよほど難しい言葉を勉強していて感心はするが、ちゃんとした日本語を書くのは難しいのだ。すぐわかる。

米国にとって日米韓軍事協定(日米+米韓だが)は対中国防波堤という戦略的意味を持っている。それがソ連であれ中国であれ、ユーラシア大陸の敵を見張る橋頭保として、良くも悪くも朝鮮半島と日本列島は地政学的重要性のある場所に位置してしまっている。だから北朝鮮がどっちにつくのかこそが米国の関心事であり、できる限り中・ロと分断したい。韓国が北と融和を図るとどうなるか。北とともに朝鮮半島ごと中国に取り込まれ、橋頭保は日本だけでいいという戦略を米国は容認しないだろう。とすると、北と米国が融和しない限り韓国は両国に踏み絵を迫られ、どっちについても危険という責め苦がやってくることになる。それを日本国が隣人として救済すべく立ち回る可能性は、安倍政権である限りもうあり得ないが、それをやってあげそうな後継首相候補に日本国民が投票して次期政権への信任を与えようということも非常に可能性は低いだろう。

北との融和、終戦協定と簡単に言うがドイツのようにはいかない。東ドイツは食料とバナナと高級車こそなかったが共産国優等生で工業、商業、教育、人材、文化はあったのであり、政治家にも民主化する素養は一応はあり、オリンピックは強くて国民は元気だったのは記憶に新しい。それでも僕が住んだ1992年の統一ドイツは経済が一気に疲弊し、旧東独国民を失業させないため、企業をつぶさないための無理やりの逆平等政策を強行し、あんな怠け者の無能な奴らにという怨嗟の声が旧西独側に渦巻いた。パブリックに言えずストレスも蓄積し、それはそれは激烈なものであった。30年たった今でもドイツ国民は収入から東独復興税を徴収されている。韓国民は50年、へたすると100年も就業の悪平等に悩みつつ膨大な「民族統合の喜び税」を搾取されるという踏んだり蹴ったりになるはずであり、日本には二度と負けないなどと息巻いている場合ではなくなるだろう。

それは分かっているのに、韓国大統領になるためお決まりの反日劇を演じ、新演出の度が過ぎてついに韓流ドラマ好きだった日本人まで怒らせてしまう。渡韓経験がある国民でも日常生活において韓国は芸能、焼き肉、エステぐらいしか関係なく、しかも半導体など知らない。韓国政府が「規制三品目は自国生産できる」と息巻いたことで韓国ファンの日本国民はそれを額面通りに受け取ってしまい、さもなくばひょっとして出たかもしれない同情心や退路を作ってあげようという声も出てこない。ということはつまり、もう日本からの救援はなく、日本のことは一切あきらめて自ら遠ざかり、残る唯一の光明である北とくっつくしかない。ところが、そうなると今度は、難敵は米軍駐留費5倍を迫る米国トランプ政権となるのである。米国と切れれば国防を握られて北の言うなり政権になるが、韓国の多くの国民はそれは望まないだろう。米国との軍事同盟を継続すればトランプに米軍経費として現状の5倍の5千億円をふんだくられる。今の財政状態ですらそれをあがなうには増税が必要であり、へたすると朴槿恵末期なみの暴動が起きるだろう。

韓国のGDPの4割は輸出でその半分は半導体だ。その半導体を射抜かれたのは致命傷だ。GDPはほぼ確実に下がるからウォンも下がり購買力は減る。やがてほぼ確実にくるその状況下において、半導体ビジネスを国家規模で牽引するサムスンが身銭を切って韓国にとどまる合理的理由が世界の株主に対してあるだろうか。今や期待のエースで4番であるサムスンだが、そんな国の宝の李在鎔COOを崔順実ゲート事件で1年も牢屋に入れたのは、財閥叩きで支持率アップを狙った文在寅政権であるというのが定説だ(三権分立とはいえ)。その挙句に国に協力しろというのも恐るべしだ。新機軸の不条理劇だねと日本の財界では語り草になっている。仮にサムスンや他の財閥が韓国に残ったとしても政権による国民(特に支持層である低所得労働者層)への最低賃金公約はとうてい達成できないことは政府が自分で公表している。無理にやれば今度は中小企業経営者が騒いで低所得労働者層は真っ先にクビになって失業する。要は、あらゆる角度から、子供でも分かる王手+飛車、角、金取りの絶体絶命なのである。この韓流ドラマは多くの日本人のお茶の間を楽しませてはいるが、友人がいるので「悲劇」にだけは終わらないことを祈る。

 

 

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Categories:政治に思うこと

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