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男にとって権力は蜜の味

2019 AUG 19 0:00:06 am by 東 賢太郎

5か国で企業のマネジメントをした人は知る限りいない。いないのだからわかってもらえることもなく、実は一番面白い体験が多いこの話題で飲んで盛りあがれないのは寂しいものだ。試みたことはあるがほぼポカンとされるだけで、時に空気を読める人からお義理の「あるある」が返ってくるが、それって旅行者の話だよねって100%勘違いのリターンだ。でも、それだってうれしい。日本は今に至るまで鎖国中なんだから仕方ない。

ということは、僕のキャリアは評価できる人もいないから買ってもらえないし、日本企業の現地の管理はローカル化というのが昨今の流れだからもはや用なしであろう。昭和どころか戦時中の軍隊の話に聞こえるかもしれない。でもいいのだ。個人的には日本男児として気持ちの良い仕事をさせてもらったからだ。日の出の勢いだった当時の野村の海外拠点長はその国に赴任するとマッカーサー元帥みたいに迎えられた。ドイツは内部昇格だったのでそれはなかったが、トップとして着任したスイス、香港はそんな感じだった。

男にとって権力は蜜の味といわれる。比較的そういう人間ではなかったが、経験すれば何人(なんぴと)も否定できないだろう。後にさっぱり権力がなくなってから読んだ本、たとえば劉邦、曹操、始皇帝、則天武后(女だが)、アウグストゥス、アレキサンダー大王、スレイマン1世、ヒトラー、スターリン、チャーチル、羽柴秀吉、伊藤博文などの伝記は、英雄譚ではなく蜜に群がった蜂たちの悲劇である。そんな人たちと比べるのもなんだが、自分のしてきた行状は卑下でもなんでもなく凡人の喜劇であったように見える。

権力は人を吸い寄せる。本当だ。ずいぶん盛大に寄ってきたが、なくなると見事にパタッと来なくなる。ネコはエサをくれる人になつき、鳴き声まで高い。人もおんなじなのだ。何年か前から多少業績がいいと、また寄ってくる。金は権力の化体であることを知るが、そういう事なら僕が受ける必要もない。受けたいのは権力にも金にも健全なアンビションがある人、すなわち育ててみたい若者だ。野村やみずほを辞めてIFA(インディペンデント・フィナンシャルアドバイザー)として独立してる後輩たちが来てくれる。ビジネスを通じていろいろを経験させ、老体に代わって権力も持ってもらいたい。

権力があるとは、企業目的にかなってさえいれば自分のやりたいことを妨げるものは何もないという状況のことだ。本当はそうでもないが、そう思っていいという心理にある自由が与えられる状況となら言って間違いはない。その自由は信じられないほど心地よかった。そこでこうしようああしようと考える。自由とは自己責任と裏腹だから必死に悩む。それがどれだけ優れた思考訓練になったか。マッカーサーが日本で悩んだかどうかは知らないが、たぶんそうだろう、そういう空想ならできる。彼も大変だったが僕もそれなりに大変で、悩んだ割にはあまりうまくもいかなかった。しかしそれでも余りある、今ではもう信じられないマグニチュードの経験と記憶をたくさんもらった。

時々夢に見る。なぜか再び野村で働いていて、海外の拠点長として赴任するのだ。オフィスに入って行く。デスクがあって部屋があって秘書がいて、窓の外の景色も見覚えがあって、それがどこなのかどうしても思い浮かばないが、どこか知った所のような気もする。小さい店だ。いまさらこんな所かと訝しく思うと、なんだこれは夢かと思う自分が出てくる。するとそれを制止するように、いや、この店は経験したじゃないか、覚えてるぞ、ヨーロッパだ、そうかもう一度やるんだ、これは現実だよ、という喜びが湧いてくる。たいがいそこで目がさめる。

これが蜜の味の幻影だ。トップのデスクに座って何が特にいいということもない。仕事づくめの日々は若いころと変わらなかったのに、しかし、無意識の中で甘美な思い出に変質しているのに我ながら驚く。蓋し人生はそういうものをなるべくたくさん得ようと追い求める地味な作業工程のようなものであり、頑張ってもほとんどがうまくいかないがいったときの喜びは格別なのだ。求めるのが権力である必要は毛頭ないが、それはアンビションある者にとって頂点でありアイコンである。それを目標にするなら政治をやればいいし、ビジネスでもCEOとして持つことが可能である。

僕はソナーの商品を権力も金もある人に役立てることだけをしてきた。それはビジネスだから仕方ないが、強者が強いだけでは世は回らないと常に考えていた。内閣総理大臣の登録を受けたIFA(金融商品仲介業者)が法的整備を伴って出現したことは望ましい潮流だ。ひとつの金融機関に所属すると商品選択の自由度が限定される。だから独立・中立的な立場から顧客の立場で資産運用のアドバイスをしようと就職した証券会社や銀行を去る判断をした人たちであり、独立する自信があるぐらいだから非常に優秀だ。彼らと一緒にもう少しマクロレベルで思考してみたいと考えるようになった。我こそはと思うIFAの方は大歓迎するので連絡してご参集いただきたい。

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Categories:______体験録, 若者に教えたいこと

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