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広島カープを襲った6月の惨事

2019 OCT 1 22:22:22 pm by 東 賢太郎

今年のカープの敗因をあげれば、OPS両リーグ1位の丸が出て行って得点力が落ちたことが大きいと皆が指摘する。しかし、丸をとった巨人との対戦はその統計値がプラマイで2重に効いたにもかかわらず4つ勝ちこしているのだ。カープはまだ優勝チームよりは強かったのである。

ところが、それでも4位なのだ。何かがおかしくないだろうか?

それはつまり、巨人以外にたくさん負けたからだ。しかし、巨人を除くセリーグ4球団との対戦は3つ勝ちこしだ。そう、交流戦で7つ落として最下位だったツケが回ったのが原因なのだ。全6カード負けこした11位のヤクルトより下という絶不調だったのだから。

なぜか?

2019年の交流戦は6月4日~6月23日に行われた。ところが、それが始まって3日後に、こういう事件が起きていた。

広島のバティスタ選手はことし6月7日に広島市のマツダスタジアムで行われたソフトバンクとの交流戦のあとドーピング検査を受け、禁止薬物の1つ「クロミフェン」に陽性反応が出た

このことは6月時点では公表されておらず、「1軍選手登録を抹消いたします」と広島東洋カープが公式サイトに発表した8月17日まで世間は誰も知らないのである。

パリーグの恋人、広島カープ(6月20日)に僕はこう書いた。

4月は最下位独走、5月は20勝してセリーグ敵なし、そして6月はまたまた交流戦最下位を独走中である。不思議なように見えるが、実はそうではない。4月(.189)、5月(.406)、6月(.176)。これはバティスタ選手の月別の打率だ。要は、バティスタが3番で打つ➡カープは勝つ、打たない➡カープは負ける。それだけ。そして思い出していただきたい、バティスタが3番で打つ➡丸の穴が埋まる、であることを。

このブログは交流戦での信じ難いカープの失速に怒って書いたものだ。バティスタは5月に破竹の勢いで打ちまくったわけだが、5月25(東京ドーム)で巨人を木っ端みじんに潰した試合を目撃して書いたこの文章からその凄まじさを感じていただけると思う。

そして、なんといっても、原・巨人を粉砕したのは3番バティスタの2発であった。一発目、神宮とほぼ同じ場所、同じ弾道。二発目、これは全英オープンで見た全盛期のタイガーウッズのドライバーショットとしか形容のしようがない。ライナーで左翼天井近くのビールの広告看板を直撃。あれに当てた打者はいるが、打球は放物線だった。”ライナー” なんである。ああいうのを打たれるとピッチャーはどうなるんだろう。心配になる。アダメス、がんばれよ。

心配したアダメスは昨日クビが発表された。あのままバティスタが3番で1年間打ちまくったら、カープは楽勝で4連覇し緒方監督はやめる必要もなかったかなと思わないでもない。この試合の帰り道、連れにこう言ったのを覚えてる。「丸がいなくなってかえってよかった。バティスタが育ったからね」。

バティスタのドーピング検査クロというNPBの発表は8月だったが6月の交流戦中に選手の知るところとなり球団内では激震が走っていたと推察される。そこからのカープの投打にわたる信じられない失速ぶりは、6月23日のオリックス戦に憤慨して書いたこの文章でわかる。

本日の広島3-9オリックス。4月11日の再来であった。あの日は1イニング12失点。あれがあまりに凄すぎて目が慣れているが、今日の1イニング9失点だってすさまじい。オリックスはパリーグ最下位のチームだ。それに3連敗。逆に相手は初のカード3連勝、今年の日曜日の初勝利。しかも1イニング4三塁打のNPB記録まで樹立した。打たれた菊池投手を責めてはいけない。こんなに打たない打線の重圧の中で彼は貴重なリリーフをしてきている。すべては打線だ。「丸の穴」以外の何物でもない。これを狙ったジャイアンツ原監督の作戦勝ちである。地元のカープファンの皆さん、マツダで2度もこんな屈辱を味わわされて気の毒でならない。

この負けっぷりは尋常でない。昨日までぴんぴんしていたマッチョの若者が突然に病気でへろへろになってしまって救急車を呼ぼうかというぐらいの衝撃を僕は受けていた。しかし、僕らファンは真相を知らされていなかったのだ。ドーピングのドの字だって。「緒方、なにやってんだ」「はやく辞めろ」。かく言う僕も緒方采配に怒りをぶつけていたことを恥じ入るしかない。

本件はバティスタが善意、無知だったで済む問題ではない。フィールド・マネージャーである緒方の責任でもなく、管理責任者である球団のコンプライアンス上の過失であって普通の企業なら担当者は処分である。丸の流出に始まったシーズンをかような難事に全力で立ち向かった選手たちをたたえたいし、惨事の中、緒方監督は体を張って戦ったと思う。

緒方の「自分たちの野球」は戦力が充実していた3年間は横綱相撲を許容したが、2019年の戦力ではやむなくゲリラ戦が求められ、それをしないなら多少の運が必要だった。それは阪神に行ってしまい、遮二無二ゲリラを厭わず戦った矢野監督のうっちゃり勝ちとなった。6連勝の阪神は本当に強かったと思うし、勝負とはそういうものだ。

4位、1位、1位、1位、4位だった緒方監督の戦績は誇るべきものである。そして今年の疲労は尋常ではないだろう。ゆっくり休んで次に向けてチャージしたほうがいい。カープらしい野球の勝利で溜飲を下げてくれた3年間の苦労と努力に感謝し、心よりご苦労様と申し上げたい。

 

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