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お金は自分で働いてくれる

2019 DEC 30 22:22:18 pm by 東 賢太郎

去年が大凶だっただけに、今年は後半が順調だつたのはありがたい。といって、何をがんばったわけでもない。マージャンでいうならたまたま「流れが良かった」のである。学生時代にヘタのツッパリでよく負けたが、高い手狙いで流れに竿さしてもダメだと悟って会社では負けないことを狙うようにしたら無敵になった。同じ手でゴルフも強くなり、その教訓から仕事も若い頃のように無理矢理なことはしないと決めたのだ。

投資というのは「お金に働いてもらうこと」である。お金は働いて自分で増えてくれる。ところが日本には「不労所得は良くないもの」という江戸時代から連綿と続く農村共同体の倫理観が根強くあって、株式投資などいかがわしいと思っている人が大半だ。実は不労所得がいかんというココロは「働かないと飯が食えんぞ」という戒めであって、だから民謡「会津磐梯山」に小原荘助さんが「朝寝朝酒朝湯が大好きでそれで身上潰した」と登場する。僕もこの歌で親父に「勉強しないとそうなるよ」と諭されたものだ。

しかし、お金も働けるとなると話は違う。いや、自分も働きお金にも働いてもらうのは世界の常識なのだということを僕は証券会社に入ってお金もちのお客様たちから教わった。つまり、増えもしない銀行の預金や郵貯に置いてあるお金は朝寝朝酒朝湯にふけっているというわけである。いい若いもんが働いてないに等しいのであって、不労所得どころか不労無所得なのだ。農村で一番許さないことを農村共同体的精神風土の日本人が黙って見過ごしている矛盾を不思議に思われないだろうか?

矛盾を解く鍵は投資というものの本質に隠れている。投資は実物であれ証券であれリターンを求めるものだが、それはどこから来るのだろう。天から降ってくれば結構だがそんなことはない。食物でも資源でも地球上の富は限られているから、得る人がいれば得られない人が出てくる。従って、投資は本来的に不平等を生むのである。隣の国や村を掠奪できるなら、勝つ側だけに限っていえば、内部に不平等は生まれない。しかし掠奪が許されないという建前になった現代にあって、天からお金が降って来ないのであれば、70億の人間全員がある株を買って全員が幸せになることはあり得ない。この原理によって、全員が平等に幸せであるべき農村共同体の文化とは水と油なのだ。

この文化から生まれた日本人ならではの美徳や強みを僕は誇りに思うが、それは古来の日本人全員が共有したものではない。武力で掠奪できた戦国時代まではそれはなかった。幕藩体制で掠奪がなくなった江戸時代に260年かけて古酒のように醸成された価値観であり、明治維新から152年たつこれからの世に江戸時代のままの価値観で幸せな人生を送れると考えるかどうかは皆さん次第だ。それを問うのが教育だと思うが、文科省がそうすることはない。政治家は国民一人一人の幸福など考えない。国が安泰に治まればそれでいい。それが政治家ひとりひとりの身分の安泰になり、国民のマジョリティが丸く収まる。それに竿さして左遷されたい官僚はいないからだ。

そういう確固たる理由によって、文科省は学校に農村共同体文化を逆撫でするような教育は絶対にさせないだろう。つまり、不平等を生む投資などとんでもない、バクチである、みな平等に働き平等に楽しみ平等に死んでいく、それが日本人の幸せだと説き続けるだろう。それで江戸時代さながらの手法で村が治まり、村の代表である国会議員が失業せずに女王蜂状態で生き長らえ、票田を世襲した二世、三世議員も女王蜂で居続けて皇室並みにディファクトだという世の中が出来上がるのである。働き蜂を慰労して、君らは「上級働き蜂」だとプライドを持たせる場が叙勲から桜を見る会まで序列で周到に用意されている計略は見事だ。

お判りだろうか?下級働き蜂に本当のことを教えて賢くなってもらっては困るのだ。学校で共産主義国家だと習った中華人民共和国が、いまやトランプ大統領をビビらせる資本主義国家であったことが判明している。ではなぜ中国は共産主義国家を名乗ってきたのだろう?簡単だ。女王蜂が膨大な数の働き蜂を従えて巣を作るのに好都合な大義だからだ。韓国の反日にも同様の要素がある。それが政治家の身分安泰の保険になり、国民のマジョリティが丸く収まるからである。歴史に学べというが、日本国の農村共同体文化もそれと同じものではないかと疑ってみるべきであり、為政者側である学校が絶対に教えない真実で世界は動いていることを見抜かなくてはいけないということだ。

僕のビジネスが原理的に最大多数の最大幸福に繋がらないことは以上からご賢察いただけよう。「誰でも儲かる株式投資」なんて類いの本は100%ウソである。万人が儲かる株は絶対に存在しないし、仮にそれに近いアイデアがあったとしても、万人がそれに乗っかれば儲からなくなってしまう。だから、他人には教えないのである。それを本にしたり学校で教えるなどというのは、余程の酔狂か自己犠牲精神あふれる人しかできない。なぜなら、そのアイデアを得るには金銭的にも精神的にも多大なコストがかかるからだ。投資には最大公約数として一般化した基本知識がある。それを投資理論と呼び、ウォートンのようなファイナンス系のビジネススクールに行けば習うことができる。だから僕は学校で理路整然と投資理論を教えてあげることはできるが、それは何ら結果を保証するものではない。なぜなら理論化すれば誰でも再現でき、万人が乗っかれば儲からなくなってしまうからだ。むかし家庭教師や塾の教師のバイトをしたが、それは教える僕が100%解けるという前提があった。しかし投資となると自分だって必勝ではないことを意味している。

また、多勢に無勢の民主主義の国で、超マイノリティである僕が有権者の支持を得ることもないから政治を変える力もない。であれば僕は家族と会社を守るため自分の生計だけを考えればいいだろうという結論になるしかない。政治家でない皆さんもそうだ。それには、お金に働いて仕事してもらわない手はない。為政者が国民の安全と幸せを仮に願っているとしても、それは自分と一族郎党だけのためだ。年金も天から降ってくるのではない。お金に働かせて増えてもらわないといけないが、計算上、到底政府が約束した金額にはならない。年末にせちがらい話になるが、自分と一族郎党は自分で守るしかないのである。

 

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Categories:______株式道場, 若者に教えたいこと

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