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国会議員さん、お仕事なんなの?

2020 MAR 5 23:23:49 pm by 東 賢太郎

海外と話すといままでは横浜のクルーズ船だけがやたらに有名であった。ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、上海、香港、ソウルの旧友や投資家で、何百億円も動かしているそれなりの人たちだから日本の立場を悟ってくれて、やんわりと「災難だね」という感じだったが、最近は公表される患者数の少なさがにわかに話題になってきた。「日本の医療は素晴らしい」という称賛ではない、「そんなはずはないだろう」「何か隠してる」と疑念を懐く風にである。なにせこっちは日本の株式への投資をすすめているわけで、半端でないお金を運用する人たちはシビアに内情を調査しているが、疫病検査システムまでは知らない。国によって濃淡はあるから一概には言えないが、総じて「日本の医療はトップクラスなのに検査していない」が各国で急速に有名になっていると思われる。やっとPCR検査が保険適用になって窓口が広がったようには見えるが、日本政府の伝統的お家芸である「小出し連発」「後手後手対応」の見本としか思われてないし、ここまで事態が至ったことへの疑念が消えることはない。

「なぜだ?」ときかれても、「実は日本人も誰も知らない」と答えるしかない。それが真実の、お客様に最も誠実な回答だからだ。そしてだいたいこういう風に説明させられる羽目になる。日本はユニークな仕組みがある。「ホケンジョ」なるものが全国に500近くあり国の管轄下にある。ここでいう国とは「コーローショー」といい、英訳は Ministry of Health, Labour and Welfareである。医師は患者に接して臨床的な検査(clinical test)をして新型コロナ(COVID-19という)が疑われると判断したならば、PCR検査をすべしと「ホケンジョ」に伝えるわけだ。判断はそこがする。

こういうと、たいがい「医師のダブルチェックか?」とくる。「いや、対応するのが医師とは限らないしホケンジョがするのはチェックじゃない、検体を採取して検査機関に送るかどうかの approval (承認)だ、法律は読んでないけど authorization (認可)かな、とにかく、法的に権限のある公的機関だからここでNoとなると国民に検査を受ける手だてはない。明確な判断基準は明かにされずに『検査、致しません』のケースが多いときく。キャパは一日3800件分はあるという医療関係者もいるんだが」「医師でない人が判断?じゃあ臨床医は何のためにいるんだ」「あまりにいい質問で答えられない。認可すると患者が殺到して医療崩壊(medical collapse)になるという声もある」「でも、しないとmedical disaster(医療災害)になるよ(笑)」

これは昨日の英国人との会話だ。医師の診断を役所が覆して人命が失われるかもしれない国は世界で日本しかないと言われた。訴訟続出になりかねない、なんでそんなリスクを取るのかと。そうなんだろうが、こっちもそうなんだというしかない。こうなると売り言葉に買い言葉で、影響力ある人だからいろいろ弁解は試みたが、あんまり納得はされなかったろう。保険適用の問題が解決して保健所以外の入り口は用意されたが、専門外来なるものが本当に間口を広げてくれるのかはまだわからない。「それなら船(ダイヤモンド・プリンセス)の乗客、乗員の検査もそうだったのか」(彼はそう言わなかったが)と憶測が飛んでしまっても止めようがない。国民に知らしめてないツケはこうして塵も積もって大きくなる。株式を取引するビジネスでは追認的な役所の公式発表なんか誰もあてにしていない、情報はビジネスの是非を判断するなまなましいインテリジェンスの一部として現場レベルで伝播していくことを外務省はわからない(認めたくない)だろうし、そこからレクチャーを受けている政治家はもっとわかってないだろう。

検査データはGISAIDという世界的なインフルエンザウイルスのデータ共有プラットフォームに公開されることを知ったのはこの東洋経済の記事だ。

中国・新型コロナ「遺伝子情報」封じ込めの衝撃https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200305-00334358-toyo-bus_all

ということは遺伝子情報の登録・改変履歴をブロック・チェーンのように知ることができるので、事故った電車を人ごと埋めてしまう国が、困ると失地回復の秘技としてくりだす「なかったことに」の術は通用しないはずだ。別に内容には驚かないし、本件がもし中国の生物兵器開発での何らかの人災であったとしてもテロとまでは思わないが、習近平政権はウィルスの正体は確実につかんでいるのだから国家渾身の対応ぶりは当然であったことがわかる。発祥の理由はともあれウィルスとの「戦争」であることに彼我の差はない。わが国も戦争だから国民も耐え難きを耐えてがんばっているのであり、挙国一致という言葉はミスリーディングではあるが、首相か官邸か自民党かはともかく国の決めたことはウィルスをやっつけるためのはずだから、君が代を歌おうが歌うまいがここで一致しないという人はないと思料する。

その角度から見るに気になるのは、医師である医療ガバナンス研究所の上昌広理事長の「検査は医師から民間に委託すればいい、民間はその能力がある。それをさせないのは厚労省で何かさせたくない理由があるんでしょう」というTVでの発言だ。単なる役所の縄張り意識なのか、何か政治や利権が絡むのだろうか?思いおこせば、2014年だったか、そうであった例のSTAP細胞事件も本丸はうやむやのまま、小保方さんへのバッシングというまるっきり事の本質でない所で幕引きになってしまった。ウィルスは兵器でもあり国防上の理由があるという正鵠を得た前提を取っているのか、集積した検査データは経済的価値もあろうから独占したいだけなのか、研究者と臨床医の関係が微妙なのか、その辺は素人には見えない。しかし、海外のプレスや大衆は都合よく解釈はしてくれない。「人命より重いものが日本にはある」と見える姿を世界に晒してしまっているという近代国家にあるまじき事実だけが世界にばらまかれているのであり、インテリジェンス(諜報戦略)が存在しないどころか誠に見苦しいほど下手くそである。

国民にも海外にも意図不明だからあらぬ憶測を呼ぶのは制止できない。トランスペアレンシー(透明性)が組織の踏み絵になるこの時代に、形だけであれ最も気をつけるべき点を堂々と踏み外してしまっているのだから実は北朝鮮なみの中世的思考が残る国家と思われて何ら言い訳できない。韓国が防護服を着てドライブスルーのルートまで動員して徹底的に検査したのとあまりに対照的だ。習の走狗であること世界の常識であるWHOのテドロスなどを信じるだけでも信じ難いが、他国の患者数が増えるにつけ「患者数を押さえる偽装工作だ」と疑われだし、ついには「習近平訪日へのソンタクだ」が定説になるのを成すすべなく放置してしまった。それだけでも大罪だが、その習本人に「日本は危なそうなのでやめときます」という我が国には限りなくみっともないアピアランスを作られてしまった。何なんだこれは?すると国際世論は「これはIOCにオリンピック開催は大丈夫と見てもらう工作だったんだ」となっていくだろう。これでIOCにまでダメ出しされたらもう救いようない馬鹿丸出しだ。

ついでながらオリンピックはカネだ。命を扱うWHOでさえそうなのだ、遊興であるスポーツなど全部ポストはカネで買われてるのは自明未満である。オモテガネの方は「ごめんなさい、がんばったけどみなさん病気は怖いよね」でシラを切って終わり。IOCは日本のメンツや機会損失なんか完璧にどうでもいい。想定もなかった米国の放映権料消失が気絶するほど痛い。延期はない。利にさといバッハはやるぞの姿勢を見せているが日本のお・も・て・な・しの精神を買ってくれてるわけでも私はマスクなんかしませんという森さんの武勇あふれるリーダーシップに共感しているわけでも何でもない、IOCとJOCは見事にたまたま相互に何の関係もない利害が一致してるだけだ。ウラのほうは不気味でアンワインド(巻き戻し)はこわい。ここは我々の想像を絶するものがあろうから週刊誌の出番だ。その世界、もらったもんは返さないし裁判なんかジョークなのである。誰が泣く?言うまでもない。そもそもそんなに望んだもんだったっけ?という揺り戻しが利権のある政治家にはまずい。

上氏の発言があった「報道1930」で自民党の新型コロナウイルス関連肺炎対策本部本部長・田村憲久議員が「必要なら自民党に言って下さい」と言ったが、誰が見たって必要なんだからあんたが早く言えよ、それが仕事なんだろ?とここまでくると滑稽でしかない。まさかそんなことはあるまいが、ガバナンスを握ってる自民党が、科学などわけがわからぬ文科系の浅知恵のポジショントークで神輿に乗ってるだけで専門家集団の厚労省を動かせないのか、中国に検査データを渡したくないなどの国家戦略的な深い理由があるのか。ここは野党が徹底的にやらないと、国会は開けると1日1億円も税金を費消するのであって、いったいキミたちの仕事は田舎のプロレス以外になんなの?ということにもなる。

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Categories:健康, 政治に思うこと, 新型コロナ・ウィルス

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