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新型コロナはエイリアンである

2020 MAR 16 18:18:15 pm by 東 賢太郎

個人的に「コロナ戒厳令」に突入したのは世間がまだユルユルだった1月末だ。僕がやられたら会社は終わるので仕方ない。電車は人が2メートル以内にいる時間は乗らず、人混みに近づかず、会社では1日3回の手洗いと消毒、リステリンのうがい、ハナノアの鼻孔洗浄をやっている。「正しく恐れましょう」はもっともらしいだけで意味のない標語。敵が正体不明なのに何が正しいか誰がわかろうか。未知のウィルスのアタックは宇宙人の侵略に等しいと思わなければいけない。特効薬、ワクチンができるまでは「わけのわからないものを体内に入れないこと」以外に手はない。

ウィルスは宿主の体内に侵入しDNAを複製して子孫を残す。脳はないのにあたかも意志があるかのようだ。宿主の免疫力に制圧されないようにイタチごっこで次々と計略を弄して悪さをする。では新型コロナウィルスの「計略」とは何か?1月末の武漢チャーター第1便帰国者から2人の不顕性感染者が出たことで、僕はこう推測した。

①潜伏期間を長めに設定しよう

②初期症状を軽めに設定しよう

③そうすれば元気な感染者があちこち行って子孫を長期間ばらまいてくれる

この計略はSARS、MARS、インフルエンザにはない。だからそれらが問題なく収まったからといって今回もそうだとはいえない。新型コロナの計略は、植物が蜜に寄ってきた蜂の体に花粉をつけ、遠くまで運ばせて子孫を広くばらまこうとするのとよく似ている。花を咲かせる植物はそれで数億年も繁栄しているのだから、この計略は蜂と人の違いこそあれ成功する可能性が高いと思うべきだ。現在の途中経過の感染率、死亡率の増減や多寡に一喜一憂するより、人類にとってかつてない特性を持つ厄介な存在だと最大限に被害を想定したほうが有益だろう。

ひとつの救いとしては、ウィルスは子孫を作る工場であり運び屋である宿主を殺してしまっては意味がないから、一定の拡散をもって共存をはかり毒性が落ちるという話がある。しかし、植物も大事な運び屋であるはずの蜂を捕まえて食べてしまおうというのが出てくるからあまり善意に期待するべきではないだろう。

以上がわかったとして、ウィルスは目に見えないから怖さの実感がわきにくいのではないか。僕は新型コロナをビジュアル化するならSF映画にあった地球外生命体「エイリアン」だろうと思っている。隊員の体に卵を産んで腹を食い破って出てきて、次々と人を襲って食い殺し、宇宙船のどこに隠れているかさっぱりわからず、知能が高くてどんな武器でも殺せないあの気味の悪い怪獣である。

となると、こういうことになる。エイリアンが地球に来てしまった。やっつけてくれるスーパーマンが現れるまで、食われる犠牲者(感染者、死者)は世界中に際限なく増える。検査して陽性とわかっても特効薬がないから犠牲が止まるわけではない。陽性⇒陰性⇒陽性の人も出たから水疱瘡ウィルスのように一生体内に棲みつくかもしれない。医師も学者も犠牲になってしまうかもしれず、つまり行きつくところまで行って人類滅亡も否定はできない。1年後に特効薬・ワクチンができたときには、ウィルスはDNAを変異させている可能性もあるからだ。

ひとつだけそれを止める方法は、世界人口のすべてが今から無期限で家に閉じこもることだ。そうすればエイリアンは外に出ないから今以上には広がらない。しかし経済は確実に崩壊して息の根が止まり、むしろこちらで死者が出る。だから外出自由と外出禁止のどこか中間に「妥協点」を見つけるのが唯一できる施策だ。まず政治判断でイベント、学校に自粛要請をして、さらに緊急事態宣言を可能にした安倍首相のそれはまったくもって正しい。決めるプロセスがどうの、効果が上がったの上がんないのと騒ぐ野党は本当に能がない。今はロジカルに正しいことをやるしかなく、やってみないと効果など誰もわからない。わからないから緊急事態なのであって、その法案可決に賛成しながらそういう質問で揚げ足をとるなら真正の馬鹿である。

僕が心配なのはもうひとつの病気だ。エイリアンがどこに隠れているかわからない不気味さに世界の人々が怖気づけばクラスターは自ずとできにくくなって「集団感染」は防げたとしても、今度は人間本来の喜びや活力が犠牲になって「集団鬱病」が蔓延する。外出しなければ気が萎えて諸欲が消えうせ、大きな消費もせず、サービスも求めず、食料、薬など巣ごもりの必需品以外は売れなくなる。減収になる企業は必然として固定費削減に走り、いずれ人件費に手をつけるので失業が増え、ますます消費が減って経済が停滞する。これが意味するのは、世界的なデフレ・スパイラルである。

デフレは資本主義経済を殺す毒キノコである。食べてしまうと身体機能が麻痺する疫病にかかる。かつて人類が戦ってきたおなじみの疫病であるインフレは発熱(金利を上げる)で重篤化を抑えられるが、デフレでそれをすると体の方が死んでしまうから低体温症(マイナス金利)という未曾有の症状になる。医師である中央銀行が出せる薬がなくなる点で新型コロナと同様の事態である。経済活動が死ねば税収が途絶えて政権も倒れる。いや税収の心配をする前に大量失業で国民が飢え、暴動、革命で一部の政権は倒されるだろう。朝鮮半島は危機的だが中国も可能性があり、中東、南米、アフリカは危険であり、選挙という文明の形をとるがアメリカも日本も例外でない。

株価というものは細部だけ見れば持っていた人がパニックで売って下がっているように見えるが、マクロ的に(鳥観図的に)見れば経済の健康状態の忠実なバロメータである。投機家の売った買ったで上げ下げしているのではない。デフレで上がることはなく、従ってこの下げは金融危機であったリーマンショックとは構造的にまったくちがう。下がるところまで下がれば自律反発という安易なものではない。比喩で書くなら、エイリアンと毒キノコが同時に地球上に蔓延しつつあり、政治家も学者も医者も五里霧中という中世以後の人類が経験のない危機が襲っていることの、最もリアルタイムに数値化された、かなり信頼に足る現象であるからだ。

その究極のリスクがうっすらと(まだうっすらだが)見えてきたいま、感染が収まれば元に戻るさという楽観論は確実に消えていくだろう。政府の施策は医療崩壊を回避するために感染のピークの山を低くする方に、つまり時間を稼ぐ方に向かう。どんなに早くても1年後というスーパーマンの登場(即ち、特効薬、ワクチンの開発)までに人類はエイリアンに食われ続けるが、食われ方はゆっくりになるように仕向けようということだ(これは残念ながら正しい施策だ)。ということは、すぐにでも敵を撃退しないとやりようのないオリンピック開催はそもそも無理であり(だいぶ前の稿にそう書いた)、G7緊急テレビ会議での「エイリアンは来年までいますがオリ・パラは完全な形で実施します」という安倍首相の論理矛盾を説明する答えは延期しかない。

このままだと世界中の集団鬱病の慢性化がデフレ・スパイラルに至ることが次の恐るべき難題になることは不可避である。1年も食われ続けてエイリアンに怯えていれば、毒キノコは間違いなく地表を覆うだろうという危機なのである。その病に金融政策はビタミン剤にはなっても特効薬にはならないのは赤子でもわかる自明のことだ。GDPの6割を占める国内消費が突発的かつ持続的に減るということは、日本の人口が突然半分になってしまったような緊急事態なのである。資金需要はないだろう。そこに元から低い金利をさらに(といっても、ちょっとだけ)下げて何が起きよう?そこで日銀がETFを買えば株は上がるだろうなどという稚拙な考えは市場を愚弄しているとしか言いようもない。悪いがそういうことについて投資家は政治家や役人より賢いし、この期に及んで「リーマンショック級ではない」と発言できる日銀総裁が危機管理に何の役にも立たないことを国民はよく覚えておくべきだろう。

やるべきことは前回書いた。はっきり言って処方箋はそれしかないが、それが必要十分条件であるかどうかはやってみないとわからない。米国が崩れだしマグニチュードの問題が出るなら消費税は0%、国債を含む財政出動は総額30兆円は打ち出さなければ効果はないだろう。

我々民間人である一般市民はどうしたらいいのだろうか?収入はほぼ全員が減ることは必至だろう。減らないのは政治家と役人だけだ。皆保険の日本国に生まれたことを感謝はするが、ともあれ自分や家族や会社のためにまず身(健康)を守るしかない。人ごみに近づかず、無用なものは手を触れず、1日3回の手洗いと消毒、うがい、鼻孔洗浄をし、ストレスを溜めずによく食べ、よく眠るしかない。これを励行するしかない。それでもエイリアンに食われる可能性はあるが、その場合は運が悪かったと観念して家で寝るしかない。

デフレは毒キノコをはやす

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Categories:健康, 政治に思うこと, 新型コロナ・ウィルス, 映画

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