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カーペンターズ 「We’ve Only Just Begun」

2020 APR 27 18:18:26 pm by 東 賢太郎

以前にも書いた気がしますが、コロナ禍などで殺伐とした気分になると歌が聞きたくなります。それも女性のですね。正直のところワーグナーやR・シュトラウスのドラマティコという、オーケストラを尻に敷いてしまう堂々たるソプラノはこういう時はだめですね。重すぎて負けてしまう。結局、ネットで探していてやっぱりこれだと思ったのがカレン・カーペンターだったのです。

彼女が拒食症で亡くなってしまった1983年2月4日に、僕はアメリカにおりました。全米が悲しみに沈みました。学生時代からLPを擦り切れるほど聴いてましたからね、ショックでした、なんでそんなので死んじゃうんだってね。カーペンターズのオリジナル曲は音楽として非常に完成度が高く僕はクラシックと思ってるし、リチャードの作曲、編曲の才能によるところ大と思いますがやはりここまでブレークしたのは彼女の歌ありきだったんですね、ドキュメンタリー番組での友人の証言によると兄貴も嫉妬してたそうです。

”We’ve Only Just Begun” は「愛のプレリュード」なんて邦題でした。「私たち、たったいま始まったばかり」ですね、ほんとは。なんせ女性がドラム叩いてリリックに歌うなんてね、バンドっていうとリンゴ・スター、メル・テイラーみたいなバリバリ叩く能天気あんちゃんのイメージだったから新鮮でした。このビデオはエド・サリバン・ショーあたりでしょうか、彼女のドラムスはよく聞くといい味だしてる。うまいです。センスいいです。バックコーラスもですね、We’ve only begun~とピアノ、ドラムスといっしょにかぶさってくる、begunのコード(Am9!)がア~と来るところですね、いやこれは凄い、何度聴いても快感。これぞカーペンターズの看板の響きになりましたね。

しかし何といっても、カレンの歌なんです。なんて心に寄り添ってくるんだろう。これは悩殺なんて安っぽいのとちょっと違う、セクシーではあるが孤独で超然としたところもあってひとかどの尊厳まで帯びていて、それでいて究極の癒しもいただけているという、なんだか説明の出来ない優しさがあるのです。

僕は彼女を古今東西の最高の女性歌手と思ってます。マリア・カラスもルチア・ポップも入れてですよ。ジャンルなんか関係ないわけですね女性の歌っていうのは僕にとって一種の聖域なんで。まず驚くべきは純正調の神のように完璧で美しいピッチです。和声へのフィット感など真に驚異的であります。クラシックの一流とされる人でもほとんど気にくわないのです僕は。彼女はジュリアードやカーティスでトレーニングしたのではないけど、こういう人に教育は不要ですね。声質も音色も歌い回しも、ちょっとかすれ気味に陰るところも美しい発音、活舌も、そうしたものの天衣無縫の使い分けも音楽的に完璧である、凄い、ああ凄いと感嘆、嘆息しながら聴いてるわけですが、終わってみるとそんな些末なことは言うだけ唇寒しになってしまう。こういうことは他の人ではありません。

こっちはやや後年でしょうか、少々太目でとても明るく元気そうだ。こっちの歌唱も黙らせます。明るさをいただけます。このまま行ってくれてればおばあちゃんになってもいい味出したろうなあ・・・

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Categories:______アメリカ音楽

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