「Go To トラブル」キャンペーンは乗らない
2020 JUL 12 0:00:38 am by 東 賢太郎
プロ野球に観客が戻った。少し不安に思ったのは、席はまばらに売ったのだろうが、場所によって三密になっているように見えたことだ。インタビューを受けたファンがこう言っていた。「やっとここまできました、嬉しいですね」。気持ちはよくわかる。しかし、政府が手綱をユルくしたから「もう大丈夫」なんてことはまるでない。人間はしばらく我慢してやった気になっているが、それはウィルスには関係ないことだ。
本稿を読まれると、僕は経済再生政策よりも感染抑止政策に寄っていると思われるかもしれない。その2つは車の両輪でどっちが大事というものではない。僕の仕事は株式市場が好調な方が有難いのは火を見るより明らかだ。したがって強力な経済再生政策が望ましい。ところが、それを不用意にやると市中感染者が増えてコロナにかかるリスクが増える。僕が倒れると会社はお終いだ。株の不調でそれはない。だからまずしっかりした感染抑止政策を望むのである。
東京の「1日200人台」は検査数が増えたからで、同じ検査をしていれば4月の数字はもっと多かったはずだから大したことないと堂々と言われている。これはおかしい。あの頃は「37.5度の熱がある人」だけ検査した。今はその縛りはやめて夜の街クラスターつぶしだ。つまり、サンプル(検査ターゲット)に別々の偏りがあるから数字を比べる意味などどこにもない。ワイドショーの茶飲み話に右往左往するのは見苦しい。
アメリカではアンソニー・ファウチ所長が6月30日、人々の行動が変わらなければ、米国内の新型コロナの新規感染者数は1日当たり10万人に増加する可能性があると上院の委員会で証言した。案の定、7月10日に6万3900人と過去最高の新規感染者が出た。数字を独占していたニューヨークはやや落ち着いたが、フロリダ、テキサス、ジョージア、カリフォルニア等が数字を激増させている。トランプが科学完全無視の俺様経済政策に舵を切り、ニューヨーク現象だったのが中西部に飛び火を始めた。
トランプは責任逃れで「ファウチは間違った」「99%の人にウィルスは悪さをしない」と驚くべき発言をくり返し、大統領選の主戦場となるサンベルト地帯で自ら首を絞めている。彼のコロナ政策を支持する国民は33%しかいない。この数字は「太陽が地球を回っている」と発言しても支持してくれる岩盤層の比率と合致する。それでもトランプ陣営が勝てるとふんでいるのは有権者の40%がバイデンは認知症かもしれないと疑っているからだ。80近い爺さんの一騎打ちだ。これがアメリカとは信じ難い。
日本も似た者同士だろう。新規感染者が増えてくると「専門家会議が間違った」と廃止する。「ウィルスはそんなに悪さをしない」とばかりに「Go To Travel キャンペーン」だ。「数字が増えたのは東京問題だ」と官房長官が逃げ、兵庫県知事も「東京が諸悪の根源」とまで言ってくれる。ほっともっとフィールド神戸で巨人が主催したヤクルト戦、東京のファンが数千人も応援に行ってるがTVを見るとけっこうスタンドは「密」だった。感染者が出たら今度は悪の枢軸に格上げしてくれるんだろうか。
コロナの空気感染をめぐっては、世界各国の研究者239人が連名で新型コロナウイルスが空気感染するとの書簡を専門誌上に発表し、あれほどパンデミックを認めるのが後手後手だったWHOがついにこう認めた。
「主に屋内で、混雑し換気が不十分な場所で新型コロナウイルスが空気感染することは無視できない」(WHOガイドライン、7月9日)
僕も冒頭に書いた野球ファンと同じでそろそろ箱根の温泉でも行ってみようかなと甘く考えていたことを白状しなくてはならない。もちろんやめる。空気感染というのは、咳、くしゃみでうつる飛沫感染と違う。近くにいる陽性者が息をするだけで感染する。いただけで、しばらくは空気中にウィルスが浮遊する。マスクは飛沫はブロックしてもウィルスは入りも出もダダ洩れだ。
ということは、「三密」をますます厳守ということだ。それしか身の安全を守る方法はない。200人出たら緊急事態宣言になるのかどうか?ついに第2波がやってきたのかどうか?そういうことを井戸端会議で論じるのは一興だろうし、それを仕事にされている方もおられるだろうが、「梅雨入り宣言」「桜の開花宣言」と同じほど僕にとってはまったくどうでもいい事である。やるべきことは変わらないからだ。
ちなみに、誤解してる人が多いが、三密とは密閉、密集、密接の3つだが、「全部同時にやると危険(=3アウトチェンジ)」ではなくて、「どれか1つでも危険(=ワンアウトチェンジ)」だ。それを徹底して避けて、うがい、手洗い、鼻洗浄を励行すれば大丈夫と思っていたが、空気感染という話が出てくるとソーシャル・ディスタンスは2mでは済まないのだろう。
小池都知事が不要不急の他県への移動を自粛するよう都民に呼びかけた。都民だから言うことをきこう。旅行に出ても東京人は諸悪の根源だから迷惑だし、冷たい目で見られてるんだろうなんて気にしながら温泉入ってもくつろげないし、東京問題などといってる政府のキャンペーンなんか乗っかったら「Go To トラブル」になるだけだ。
ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。
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東 賢太郎
7/16/2020 | 10:52 PM Permalink
本稿を書いた5日前、菅官房長官は「やめる予定は全くない」と言っていたGo Toが突然「東京ぬき」になった。旅行業協会会長の総裁選への影響力にソンタクしたプロジェクトだろうから「お肉券」「お魚券」の同類だ。もともと国民など視野にない。東京ぬきなのに都民の税金も使われるのは不快である。
政府は東京も入れて予定通りやればいいじゃないか。行く方も受け入れる方も魚心に水心なんだから自己責任で。このキャンペーンは政府が代わりに「客引きしてあげます」ということ。受け入れる県には「感染が出たら県の責任で処理します」(当然のリスク・リターン)、行った客には「もし感染したら強制隔離に応じます」と署名させて補助すればいい。政府が「うまくいったら俺がえらい、ヘタこいたらお前が悪い」の作戦が、やる前からヘタこきそうなので訳のわからん修正いれて、ますます訳がわからなくなった。誰が決めてるのかも不明であり、そこが最も気にくわない。税金を使った責任者名はここで明らかにすべきである。
東 賢太郎
7/17/2020 | 9:03 AM Permalink
きのうの広島・巨人戦。マツダスタジアムの客の座らせ方が大いに疑問である。なぜか内野席の一角に集団で座らせ、後ろの方はガラ空きの「市松模様」状態だった。集団のところは「三密」が発生しているように見える。あの球場は「三密=感染リスク」の意味がわかってるんだろうか?いくら入場者数を5千人に制限しても、これじゃコロナ対策になってない。
Go Toのホテル、旅館は大丈夫としても、野球場のような公共施設がTVで全国放映されているのにあれでは・・・。地方はまだ感染者が少ないからだろう、東京人の眼には危険に見える。行政は地元を守るために「三密忌避」を徹底したほうがいい。それが社会の「安心」をつくり、自然にお客さんを増やし、経済活性化になる。ウソの「安全です」がバレて破綻したら信用されなくなり、経済も破綻する。