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若者のための政治講座(カレーの術)

2021 MAY 14 1:01:54 am by 東 賢太郎

僕が学生のころ、論述式の試験問題にお手上げだった学生が苦しまぎれに「美味しいカレーの作り方」を書いたら単位が貰えたというまことしやかな話があった。「その問題はさておき、美味しいカレーの作り方を書きます」という書き出しでレシピが書かれていて、教授はその解答者に「可」を付けたという。

世の中には懐の深い教授もいるかもしれないと思わせる話だ。零点よりましというねばり腰はビジネスには向いていると思うが。

「その問題はさておき、美味しいカレーの作り方を書きます」

は実社会でも使われている。ポイントは「その問題はさておき」は言わないことだ。むしろ、いかにもその問題について答えているような顔をしつつ、関係ないことを堂々と言う。これを「カレーの術」という。

利点は2つある。

①目くらまし

相撲の技なら猫だましだ。野球だと超スローボールだ。フランスのド・ゴール大統領が「お前は国をまとめる力がない!」と議会でつるし上げられ、「諸君はフランスにはチーズが何種類あるかご存知か?246種類だ。どうしてそんな国がひとつにまとまるんだ?」とかまし、きりぬけた。

②レッドへリング(燻製ニシン)

臭いニシンで猟犬を迷わせることから出た呼称。ミステリで読者の注意を真犯人に向けさせないためあえて別の人物を怪しげに仕立て上げ、いかにも筆者が重要な手がかりと考えているかのように書いて注目させる(実はどうでもいいことだ)。W・アイリッシュの作品に最後の最後までサスペンス溢れるストーリーが展開して実に手に汗握るが、真犯人がわかるとそれは実は膨大な長文の「ニシン」だった、ぜんぜんどうでもよかった、ああ騙されたというのがある。

以下に実例を示す。

その1

〈問い〉

緊急事態宣言の期間を11日までの2週間余りとした当初の判断は妥当だったか?

〈答え〉

(その問題はさておき、美味しいカレーの作り方を書きます)

「人流の減少という所期の目的は達成できた、そう考えておるところです」

 

その2

〈問い〉

夏に感染が悪化していても五輪は開催するつもりなのか?

〈答え〉

(その問題はさておき、美味しいカレーの作り方を書きます)

「安心安全な大会が開けるように進めてまいります」

 

その3

〈問い〉

多くの人が納得し喜んでくれる状況になることが望ましいので説明を。

〈答え〉

(その問題はさておき、美味しいカレーの作り方を書きます)

「借金でなかったものを返さなかったと末代まで言われては困ります・・・うちは名誉ある家なんで・・悪いのは相手ですし隠し取り録音だってあります・・・(28枚)・・・以上がご説明すべき唯一の問題です」

 

まあ、こんなもんに騙されるほど国民は馬鹿ではない。そういう声が拡散されるネット社会の怖さすら気がついていない。カレーの術はド・ゴールやアイリッシュのような大物がやればサマになるが小物がやれば馬鹿がバレるだけだ。

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Categories:政治に思うこと, 若者に教えたいこと

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