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ブラームス交響曲第2番の聴き比べ(11)

2021 AUG 17 14:14:32 pm by 東 賢太郎

ヘルベルト・フォン・カラヤン / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1959)

このライブ演奏はカラヤン51才のものだ。3年前(1956年)にフルトヴェングラーの後を襲ってベルリン・フィルの終身首席指揮者兼芸術総監督に就任し、この前年にディオールのトップ・モデルだった3人目の妻エリエッテと結婚している。同年にウィーン・フィルと来日公演を行い、フィルハーモニア管と2番をEMIに録音、数年後にDGにBPOとの最初のブラームス交響曲集を録音する。人生の絶頂時であったことは想像に難くなく、オーケストラが新しいシェフに全幅の信頼で渾身の妙技を見せている。しかも素晴らしいことにフルトヴェングラー時代のBPOの音がする。Mov1は大きなうねりを作るが大仰な作為はまったくなく、なにより歌に満ちているのが最高だ。コーダの弦の高揚は誠に魅力的。Mov2でも弦の表情が濃く音楽は深く呼吸しテンポも呼応する。ポルタメントもかかるが自然で有機的。木管はfl、obの歌が印象的で超一流のオケの音を出している。この楽章は非常に秀逸。Mov3でも木管が活き、ブラームスの語法を骨の髄まで知り尽くした音楽家たちの合奏の喜びが伝わってくる。Mov4はこれでなくてはという素晴らしいテンポで始まる。再現部の第2主題の減速は命懸けで、その弦のコクの濃さはどうだ。コーダはギアチェンジの所でいっときの溜めを作り、熱を加えながら一気に走り抜ける。この解釈は生涯変わることなく、カラヤンという指揮者の音楽性の証明。これを会場で聴いたならその感動は、僕が94年にベルリンで聴いたカルロス・クライバーの4番に匹敵しただろうと想像する(総合点:5)。

 

リヴィウ国立フィルハーモニック交響楽団

ウクライナの西部の都市リヴィヴの国際指揮者ワークショップ。リヴィヴはポーランドの国境に近くロシアより西欧文化圏の一部だ。8人の指揮者(学生かプロの卵か?)がブラームスの交響曲4つを楽章を割り振って指揮。このビデオは2,4番である。ウクライナ最古のオケはプロフェッショナルに振った通り弾いている感じであり、なかでは4番のMov1チェン氏、Mov4レディンガー氏は中々であった。耳の肥えた本稿の読者の皆様には一興と思う。終わって見れば何やら尋常でないものが聳え立っていたという感興が残る。ブラームスは神だ。

 

アンドレス・オロスコ=エストラーダ / フランクフルト放送交響楽団

音楽の抑揚が曲想、分節ごとに変転し、第1楽章は歌わせようとすればするほど違和感がある。展開部のテンポのギアチェンジもなくもがなで音楽の本筋に入りこめない。木管も野放図に歌って管弦の音色の統一感に指揮者はまったく意を用いていない。第2楽章の弦のぶつぶつ切れるフレージングは興ざめで、トロンボーンの伴奏が漫然と鳴っていてうるさい。第3楽章は速めのテンポは結構だが主旋律も伴奏もぶつぶつ切れるフレージングなのはいったい何なのか、不可思議というしかなくこれほどレガートを感じない演奏も珍しい。終楽章のテンポは良い。リズムのエッジを効かせて進むのも悪くないが、ティンパニが無意味な爆音を轟かせてみたり、音色のコクがないために p の部分で音楽にすきま風が吹いており、弦の合奏は粗くどう見ても入念の練習を積んだと思えない。棒がドイツ的感性でないためオケが遊離しているのを何とか指揮技術でまとめましたという感じで、音楽が内側からこんこんと湧き出るエネルギーで燃えることがなく、コーダはオケのほうが馬なりにアッチェレランドして安物の空疎な盛り上げで終わる。こういうのを抑えるのが指揮者の仕事なのであって、上掲のカラヤンと比べるだけで失礼だが、雲泥の差である。プロっぽい外形を意味のない個性でアピールしようという指揮者に放送局のオケがそれなりにお仕事でつき合いましたという演奏で、上掲のワークショップのほうがよほど面白い。この指揮者がブラームスを振る意味がどこにあるのかさっぱり理解できないし、こんなものを愛でているドイツの聴衆も放送局も大丈夫だろうかと心配になる(総合点:0.5)。

 

ブラームス交響曲第2番の聴き比べ(12)

 

 

 

 

 

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