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広島カープ「つなぎの野球」では勝てない

2022 OCT 11 10:10:41 am by 東 賢太郎

佐々岡監督ご苦労さま。3連覇で疲弊した戦力を引き継ぎ、そこから鈴木誠也がいなくなったのによくやった。投手陣は先発はほぼ形ができたが、中継ぎが揃わなかったのは反省点だ。打撃や足技については不動のエースだった彼が指導できる領域ではなく、コーチの責任だ。

広島というチームは監督が代わってもコーチはそのままが多い。組閣でころころ大臣が替わる省庁みたいで、役人は不動。どうせ大臣はすぐいなくなると面従腹背になりやすいと推察する(同じ人間だ)。コーチの現役時代の成績を見ると、菊池や西川や小園みたいな選手に技術指導できるのかと思う。

今年はセイヤの穴埋めが最大の焦点だった。昨年ホームラン38本、OPS1.072の彼に代わる選手はいないから外人でという期待はファンの誰もが持っただろう。しかし球団は、代わりの4番候補に今期セリーグの助っ人39人中13番目に年俸の安いマクブルームしか取らなかった。

今年のセリーグ各球団の助っ人外人の顔ぶれと年俸をご覧いただこう。青字の選手が4番候補である。

 

読売ジャイアンツ(11億1900万)

ポランコ(2億5000万)、アンドリース(2億2600万)、デラロサ(1億8150万)、シューメーカー(1億5000万)、ビエイラ(1億4300万)、ウィーラー(1億1000万)、メルセデス(4950万)、クロール(3500万)、ウォーカー(3400万)

阪神タイガース(10億6410万)

ロハス・ジュニア(2億6000万)、アルカンタラ(2億1000万)、マルテ(1億9300万)、ガンケル(1億7000万)、ケラー(1億2430万)、ウィルカーソン(7280万)、ロドリゲス(3400万)

横浜DeNAベイスターズ(8億1000万)

ソト(2億7000万)、オースティン(2億)、エスコバー(1億6000万)、ロメロ(1億3000万)、クリスキー(8000万)、ガゼルマン(4000万)

ヤクルト・スワローズ(8億300万)

オスナ(1億5400万)、サンタナ(1億9000万)、マクガフ(1億2400万)、サイスニード(9500万)、コール(9000万)、スアレス(9000万)、キブレハン(6000万)

中日ドラゴンズ(6億5000万)

ビシエド(3億5000万)、R・マルティネス(2億円)、ロドリゲス(6000万)、A・マルティネス(3000万)、アルバレス(1000万)

広島カープ(3億2070万)

フランスア(8500万)、マクブルーム(7700万)、アンダーソン(7700万)、ターリー(7300万)、コルニエル(870万)

 

これを投資と考えて、リターンがどうだったのか見てみよう。

外人年俸総額(カッコ内)の順番はこうだ。

➀巨人➁阪神③DeNA④ヤクルト⑤中日⑥広島

そして公式戦の結果はこうなった。

➀ヤクルト➁DeNA③阪神④巨人⑤広島⑥中日

「10億円組」(巨人・阪神)と「8億円組」(DeNA・ヤクルト)は逆転したが、ヤクルトは村上、DeNAは牧というホームランがリーグ1位、4位の日本人が4番を張ったのが大きかった(外人はおまけになった)。

それに比べ、「その他組」(中日・広島)はお値段通りの5位6位だ。年俸1位が4番候補でないのは広島だけ、1億円以下なのも広島だけである。これでは佐々岡が気の毒というしかない。そのマクブルームは健闘はしたが、鈴木誠也の半分以下のホームラン17本では穴を埋めたとは到底言えない。

「つなぎの野球」というが、3割打者すらヒット3連打の確率は2.7%しかない(0.3×0.3×0.3)。年間600打数として、ほぼ読めるのは16点だ(単打3本では点が入らないこともある)。2割5分の打者3人なら1.56%で10点だ。

ホームラン16本なら同じ16点が確実だ。打った打者はNPBに21人いる。たった6人しかいない3割打者を3人集めるよりそっちを1人の方が簡単でコストもほぼ3分の1だ。

つまり「つなぎの野球」はリレー好きの日本人には耳あたりがよく、たしかに滅多打ちに見えて気分はいいが、「スロットで同じ絵柄が3つ並ぶ」ということであり、出そうでめったに出ない(だからパチンコ屋が儲かる)。

更に言うなら、リーグ史上ワースト2位の26盗塁(阪神・近本の30より少ない)で盗塁死が29もある。成功率47.3%は12球団ダントツ最下位だ。「つなぎ」で足は使わないなら連打狙いのスロットを回す作戦なのであり、確率は低い。

ところが、ホームランも盗塁もだめだったが、総得点はリーグ2位だ。だから免罪だという声もあるが、1イニング最多12得点の球団記録など、17点、15点(2度)取ったぼろ勝ち(どうでもいい点数)が乗っており、そうもいえない。

つまりホームランが出ないけどこっちの方がいいという理屈は立たず、4番がビシエド14本、マクブルーム17本の2チームが順当に最下位を争った。弱小球団経営者のポジショントークにすぎず、米国には「つなぎの野球」なる英語はない。

新井新監督には期待したいが、コーチ陣と4番は少々心配だ。

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