日本の選挙がここまで腐敗したかと絶句(改定版)
2024 JUL 5 9:09:41 am by 東 賢太郎
去年のプロ野球オールスターのファン投票は唖然とした。阪神タイガースの選手がセリーグの全ポジションで1位だったからだ。阪神は強かったしファンが熱狂したのはよくわかるが、それを見て僕は選挙の「組織票」というものを連想し、あほらしくなって試合を見る気が失せた。昔はセ・パ名選手のプライドをかけたガチンコ勝負が国民的人気で、最下位球団からでも実力者は選ばれた。実力にリスペクトなくブルドーザーでなぎ倒したかに見える去年の投票を見て、他球団のファンの野球少年たちはどう思っただろう。オールスターがエンタメの芸能野球に堕落するばかりか、プロ野球全体の未来まで心配になる。
同じようなことが政治で起きてないだろうかというのが本稿の趣旨だ。4月にあった衆院選挙の東京15区は自民党、小池都知事の趨勢を占う選挙として全国的に注目の的であり、目に余る選挙妨害が社会問題にもなり、江東区民も大いに熱くなっているものと思っていた。ところが、ふたをあけると投票率は15区の過去最低の4割である。GW前の補選だったにせよ、大山鳴動して鼠一匹だ。その結果、立憲・共産の組織票を獲得し、有権者のたった12%が名前を書いただけの酒井菜摘氏が当選した。1割ちょっとの得票で衆議院議員になれる国会って何なんだろう。民主主義ですで済んでしまっていいんだろうか。
その日に限らず、投票率はおおよそいつでもどこでも低い。地縁が希薄な東京は区議会だと候補者の顔も名前も知らない。選挙の時だけ駅に立ってる知らない人に握手してもらったぐらいで都民は投票しないし、投票に行こうという気にもならないだろうう(長らく僕もそうだった)。国会議員や都知事になれば顔、名前は知っている。しかし、どうせメディアが祭り上げた著名人が当選するんだろうとなってやっぱり投票所に行かない。オールスターは阪神ばっかりだろとなって、野球を観たいファンはあほらしくて試合を見なくなるのとよく似ているのである。
選挙においては「ファン」とはまじめに働き納税している有権者だ。この人たちがあほらしくて投票所に行かなくなる。パッとしない経歴の、愚鈍にしか見えない候補者のポスターが並んでいるからだ。今回の都知事選のポスター掲示板を見るに、これはもうパロディーの域に達している。「こんなのしかいないの?」というタイトルの笑劇だ。まともな有権者の意欲をそぐための、これは極めて有効な一撃である。貴重な週末になんでこんな奴らの名前を書きに行くんだろうとますます投票所に行かなくなるからだ。そこで投票率3~4割となり、組織票というブルドーザーで押し切って1割ちょっとをむしり取った自公が圧勝する。これぞ権力者の思うつぼなのだ。
この作戦で、利権団体、大企業、いろんな神様の組織票をもつ候補だらけにしてしまう。国民不参加の国会で権力を握る。これで無敵だ。ザルの政治資金規正法を自作して裏金・脱税やりたい放題。税金を原資とする政党交付金から領収書のいらない「政策活動費」を50億ももらって地元の地方議員を買収し放題。バレても「適法です」で無視。あげくの果てにその議員たちの都合で選ばれた総理大臣がせっせと国まで売り始めてしまった。これがいま起きている危機の内実だ。しかし、すべての元凶は、まともな有権者が投票にいかないことなのである。
そうやって選ばれた岸田総理がアメリカ民主党の傀儡であることは去年に何度も書いた。それがだんだんバレてきて、いまや国民の常識である(テレビ・新聞だけの人は知らないだろうが)。我々の税金をアメリカに勝手に10兆円も貢がれて喜ぶ国民などいない。読売の「次の総理にふさわしい人」で岸田氏は4%だ。酒井菜摘の12%当選などかわいいもん、支持率が四捨五入で0%の人が総理大臣をやってるという日本憲政史上まれに見る事態だ。背景の勢力は同じなのだから上川陽子に首をすげ替えたところで同じことがおき、何の意味もないだろう。
つまりこういうことだ。利権の組織票を集結して総理や知事にはそれなりにもっともらしく見える「表看板」を当選させ、国民の見える所に案山子のように立てておく。政治離れさせている国民はそのうち目が慣れ(残像現象)、「これが民主主義だ」とあきらめる。次回も投票所に行かなくなり、看板の裏で甘い汁を吸える。看板はどんな馬鹿でもウソつきでも、ポケモンでもつば九郎でも、選挙で人気があれば構わない。そこで、それに徹して「売り物は金と引き換えの操(みさお)だけ」という見栄えだけがこだわりの「看板用の政治家」が登場する。メディアはその広報担当であり、そいつをもてはやして祭り上げ、利権のお駄賃にありつくジョイント・ベンチャーができるのである。
本稿の読者である多くの賢明な有権者はすでに目覚めているだろう。しかし、欧米に12年住んだ僕の眼には、日本人は政策への理解と関心があまりに希薄だ。英国はグローバリストのポチになり下がった保守党政権にたったいま国民が怒りの鉄槌を下し、政権交代が起きる。ポチが支配する日本でそれが起きて何ら不思議でない。しかし日本は「七つのゼロ」を公約し、結果としてゼロだったのはその達成率だけだったというとんでもない都知事が三選になるかもしれない。選挙は人気投票ではない。この人は自分に都合の悪いことは「なかったことに」で渡世をしのいできた。公約の無視など朝の化粧を夜おとすぐらい朝飯前だろう。政策は約束ではなくイベント屋が用意した票集めの化粧品。審判されるべきはこれなのだ。
おまけに彼女がいくら頑張ってもなかったことにできない難物が出現してしまった。学歴詐称疑惑だ。これまた国民の常識となっているわけだが、事実であれば公職選挙法違反で有罪があり得る。しかし、重要なのはそこではない。「カイロ大首席卒業はウソだよね?」と巷の家庭や職場や居酒屋で公然とウワサされるが火元の「女帝 小池百合子」の著者を名誉棄損で訴えてもしない。やっぱり本当なんだと火種は100年でもくすぶり続け、やがて歴史に残り、「ねえパパ、ウソつきは泥棒の始まりでしょ?どうしてそんな人が都知事やってたの?」と娘にきかれた100年後のお父さんは答えに窮する。公人としては、法律違反以前に完璧に失格なのだ。
日本はメード・イン・ジャパンに値打ちがつくほど偽物がない国である。ニセ証明書を平気で発行、黙認するような三流国ではない。だから「妙な卒業証書を提出してきたな」と人事部が不審に思うような人物が日本を代表する一流企業に採用されることは絶対にない。まして社長などなるはずがない。ところが、驚くべきことに、都知事にはなれるのである。皆さん、これ、異常なことだと思いませんか?「虚偽事項公表罪」があるのは、国を動かす公職に就く者は民間人よりも素性、能力を「経歴」によって厳しく審査されなくてはいけないからだ。不審なことが堂々とおこなわれ、国民が放置しているということは、日本はその程度のことは気にしない三流の国と同じですよと世界に発信しているようなものだ。これを放置すれば、100年後の日本はそういう国になっている危険すらある。
経歴はその人の人物証明の一部にすぎないが、社会生活は知らぬ者同士のやりとりの場であり、信用証明がそれを円滑にする。受け取った一万円札が本物かどうかいちいち鑑定していては社会は成り立たないように、人においてもパスポートのような人物証明は社会生活を円滑にする。このことは経歴の内容(良しあし)の話ではぜんぜんなく「社会の信用基盤」というインフラの話である。学歴詐称がまかり通れば学校の信用はなくなり、卒業生の信用もなくなって社会の信用基盤が棄損する。その甚大さは「お札」の偽造に法律がどれほどの罰を用意したかを見ればわかる。ニセ札は通貨の信用を棄損して「社会の信用基盤」を棄損する。その罪は刑法第148条によって「無期又は三年以上懲役」だ。殺人罪ですら、死刑でなくとも「無期又は五年以上の懲役」(刑法第199条)である。公人は国民に信用される者でなくてはならず、選挙で開示される情報は社会の信用基盤である。だから詐称の罪は重いのだ。「政治に学歴は無用だ」という主張を否定はしないが、だからといって詐称が許される理屈にはならない。
選挙で人気のあるだけの「表看板」を組織票で当選させ、それを国民の見える所に案山子のように立てておいて裏で好き放題やる。ウソつきと利権屋のジョイントベンチャーであるこの自公政治が裏金・脱税事件でバレた。それとタッグでイベント屋、不動産屋とよろしくやってる小池都知事が三日後の選挙で審判を受ける。僕は「左巻き」でもなく、都政に望むのは安全と不介入ぐらいだ。だから個人的にはどうでもいいのだが、日本人としてはそうはいかない。ニューヨークで5年仕事をした石丸信二候補が「海外にいた人は全員が愛国者になる」と言うが、まさにその通り。僕は保守でも右寄りでもなく「愛国者」である。日本人はまじめで正直で道徳心があって、そう教育されてきたし、そういう人を大切にしてきた。だから何より、まず、僕はウソで世渡りするような手合いは蛇蝎のごとく嫌いである。日本人はそう教育されてきたから落とした財布が返ってくるし、裏切り者が出て異国に征服などされなかったし、結果として経済は世界の一流国になれたのである。
その時代に世界で戦った者のプライドとして、井の中の蛙がくだらない化かしあい騙しあいをやってる今の政治風景はふざけるなという怒りしかない。ウソつきは私人なら付きあわなければ済むが、政治家はそうはいかない。本件、松本清張の「砂の器」が思い浮かぶ。私人なら殺人を犯さなければよいが、公人となれば何もなくとも引きずりおろすのが社会正義である。当選してしまっても、それで終わりではない。
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東 賢太郎
7/8/2024 | 10:18 AM Permalink
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