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この不可思議な総選挙はなんだったのか

2024 OCT 30 0:00:27 am by 東 賢太郎

ひょっとして石丸人気でひらめいたのか、支持率ゼロへのまい進をものともせず張り切るキッシー氏を見限ったのは大使閣下お気に入りの”ボク”に首をすげ替える意図だったと思われる。ボクをstrong manに仕立てるには「新鮮なイケメンによる刷新感」を売りに、ボロが出る前に「即刻の解散総選挙」 で速射砲のごとくたたみかける猫だまし作戦が必須だ。それで大勝させて11月に帰国し、アチラから操るのが閣下のシナリオだった。日本側の視点からすればボクをそそのかして踊らせ、「裏strong man」として影響力を行使しようという長老の策略でもあったわけだが、ボクの口から発せられる構文が軒並みSNSのお笑いネタになる事態は見ぬいてなかった。まずい。閣下の不興を買うイッチー女史の登板を避ける手駒は党内野党のゲル氏しかない。その結果があの驚天動地の国会議員投票だった。まるでバイデン・ジャンプじゃないか・・そうして愛国保守がお通夜のごとく沈黙する一夜がやってきたのである。

ゲル氏の登板が国民的な待望でなかったことは、支持率が早々に28%と末期のキッシー政権と10%しか違わぬ所に落ちたことでわかる。そこでゲル氏は裏金議員の非公認など前言撤回をくり返して批判されたが、緊急登板でもあり理解できぬことはない。自民党総裁選中に訴えていた「衆院解散前の衆参予算委員会開催」は、ボクよりは弁の立つ彼としてはまともな手であった。ところが彼はそれをも撤回し「即刻の解散総選挙」に切り替えた。これは驚いた。ボクの擁立が大前提であった「猫だまし作戦」への回帰であるからだ。

猫はそう簡単には騙されない。氏はイケメンでもなければ新鮮なイメージもなく、刷新感どころかキッシー路線の継承まで言っちまってる。こりゃめちゃくちゃだ。現場は対処の間もない。敵方はここぞとばかり裏金ミサイルの集中砲火を浴びせかける。歴史的大敗を喫するだろうという結末は素人にも予見可能であった。ふたをあければ何らの抵抗もなくあっさりとそうなり、野党が不信任決議案を出して自民内の敵方がそれに賛成するか棄権をすれば退陣か解散の二択しかない事態となった。解散は民意に反するだろうから退陣に追い込まれる。つまり将棋なら詰んでいる。ふつう、選挙のプロがそんな馬鹿なはずはなかろう。

僕は犯人が凶器にマンドリンを使うという不可解な殺人現場を残したエラリー・クイーンの名作「Yの悲劇」を想起し、もしかしてそういう驚愕の裏事情があったのか、はたまたゲル氏とモーリー氏が党内の敵方を一掃する自爆作戦を演じたところ、想定外の爆裂に自分が大出血して死にかかったのだろうかと考えた。理由はともあれ聡明なアチラさんの目からすれば非常におバカであり、政治は結果責任がすべてである。こんな輩がstrongに見えることは完璧に、ない。したがって、この選挙は「忠実なstrong manポスト争い」に野党党首も手を挙げられることを示した革新的なものとなったのである。

つまり、前稿で述べたとおり、自民党なるもの、即ち80年の長きにわたって同党が維持してきたマッカーサーのマンデート独占に裏付けられた甘い汁を吸う特権は溶解し、消滅の一途にあることが確認された。我が国がサンフランシスコ講和条約のくびきを解いて真に自立した国家になる第一歩になるのが我々の子孫にとって望ましいが、それができる政治家が何人いるだろうというミクロの議論に落としこまれていくだろう。裏金議員のみならず世襲のお気楽なファミリービジネス議員も一掃し、「世襲はできるが親の地盤の引継ぎは禁じる」という英国型の選挙システムにまで浄化する契機となるのではないか。

「忠実なstrong man」の日本語訳は「ポチ」であり、wikipediaに載せるなら代表的人物の写真はキッシー総理である。彼はそうなるために邪魔な派閥を破壊し、フラットな総裁独裁体制を築いた。ゲル氏がそれを引き継ぐには、どんなに変節といわれようがキッシーイズムを継ぐしかガバナンス保持の方法がない。さもなくば45日で首になった英国のトラス女史の二の舞だからなりふり構わずそうするだろう。イッチー女史は愛国保守の女神とは思うが国際政治はそう甘くない。腹をくくれるかどうかだ。本当かどうか、アチラから聞いた通りを書くが、トランプはキッシーを完璧に馬鹿にしてるそうだ。するとそれを継承する以外に道のないゲル総理の命運も見える。トランプは愛国保守である。来週はいよいよアチラの選挙だ。

 

 

 

Categories:政治に思うこと, 若者に教えたいこと

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