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DeNAの下剋上優勝に見るリーダーの大切さ

2024 NOV 4 22:22:56 pm by 東 賢太郎

今年のNPBは3位球団の下剋上優勝で終わった。2010年のロッテに続く史上2度目の快挙である。大相撲なら平幕優勝だろうか。

DeNAはペナントレースで広島カープに対して11勝14敗であり、8月まで首位だったカープファンとしてはそう苦になる相手ではなかった。ところが9月最初のカードである横浜スタジアムで森下、アドゥア、床田が計15失点し、東、ジャクソン、ケイのトリオに押さえ込まれて3連敗した。ここから何かが狂い始める。次の中日戦も2つ落として迎えた巨人戦、あの信じられぬ最終回9失点という勝利の方程式瓦解へと至ったのである。あの3連敗がなければカープは悪くても3位には残ったろうと思うし、DeNAはCSにも出場できなかったことになる。

このトリオが日本シリーズでも活躍し、ペイペイドームでの3連戦を3連勝で乗りきる立役者になった。今永、バウアー、エスコバーがぬけた穴埋めがジャクソン、ケイだったわけだが、ジャクソンはパイレーツからの移籍で、全球団に当てそこそこの成績だがエース級の存在感はなく、メッツからのケイは主に巨人に当てて1勝5敗だった投手だ。DeNAは正捕手で3割近く打っていた山本祐大もケガで欠き、強打のソフトバンクに立ち向かえるバッテリーとは思わなかった。

第1戦は有原の落ちる球に凡打の山、投げては先発ジャクソンが敬遠の挙句に投手有原にタイムリーを浴びてしまう。しかし4回で9三振を奪う球威は次回を予見させるものはあった。第2戦は先発大貫が早々に5失点。初戦は無安打だった山川が初回に2ランの4打数3安打と爆発して完敗。この時点で我が家ではすでに「電車道」(なすすべなく押し出される)が予想であり、世間も多分そんなものだったろう。ここでソフトバンクのコーチの「東より宮城の方が断然いい」発言がネット記事にのり、桑原が「悔しくないのか!」と選手ミーティングで檄を飛ばしていた。

桑原は31才、キャプテンの牧は26才だ。年上だろうが何だろうが口だけの野郎になんか誰もついていかない。有言実行。桑原は第3戦で初回いきなり2ベースを放ち、5回に勝ち越しのホームランを打った。第4戦でオースティン、宮崎も打ち第5戦で牧も打った。DeNAは打力のチームだが本来の姿に戻った。守りではナメられた東が10安打されながら気迫のストレートで内角を突いて1点に封じた。第2戦でのってしまった山川を封じることに全力を挙げたのが捕手戸柱で、第3戦から1本もヒットを打たせずSB打線のつながりを切ったのは見事というしかない。打力は12球団トップレベルなのだから投手力が加われば強いのはカープ3連戦が証明している。潜在力が開花してなかったジャクソン、ケイに火をつけたのは桑原、戸柱であろう。できれば戸柱にもMVPをあげたかった。

さらに筒香だ。第6戦は2度目の有原だった。初回にオースティンが併殺で嫌な終わり方をした2回、初戦でことごとく凡打だった落ちる球をホームランにして自信をくじいたのは大きい。先発大貫は前回の借りを返し、速球派でないのに全力のストレートで山川、栗原、周東から三振を奪っていた。細かいことだが、ショートの森はいい選手なんだが守備が下手だねえと見ていた。それが第6戦では自信に満ちており有原から2ベースを放ち、四球と思った低めのくそボールをストライクコールされながら次の高めに釣られず押し出しをもぎとった。22才が数日の試合で成長してる。いいリーダーがいると若手も伸びるのである。

ペナントレースで42も勝ち越したチームが僅差で3位に滑り込んだチームに負けてしまう是非の議論はあるが、ソフトバンクのパリーグ優勝の栄誉が損なわれるわけではないのは劇的な負けを喫したヤンキースと同じだ。日米ともに、野球は9回2死まで何が起こるかわからないという言葉を象徴するようなポストシーズンだった。ああいよいよ野球が終わってしまった。

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