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決勝に戦力を一点集中した台湾あっぱれ!

2024 NOV 25 21:21:13 pm by 東 賢太郎

野球の試合はずいぶんやったが、大事なゲーム以外の勝った負けたはあんまり覚えてない。覚えてるのはやったぜ!とかありゃ~!という場面場面のほうで、楽勝で忘れちまうよりホームランやサヨナラヒットを打たれて負けた試合の方が、いまになってみるとあって良かったなあという気がしたりする。見物も同じだ。プレミア12の決勝、日本・台湾戦、悔しさはあるがこれもそのうち忘れる。大会28連勝の相手だの敵地で不利だの、しのほの言うなら負ける理由はいくらもあるが、ぜんぶ吹っ飛ばして圧勝した必殺スナイパーの台湾が強かった。こういう男たちが大好きだ、心から讃えたい。

前の試合、勝つには勝ったが9回に右翼席の奥の奥にぶち込まれたホームラン、あれは衝撃だった。東京ドームであそこまで伸びていった強烈な打球は松井を思い出した。恐るべしのリン・アンクア選手は代打出場だったが決勝では4番DHにすわり、またまた右翼ポールのはるか上を通過するあわや3ラン(判定でファール)の度肝を抜く大飛球を放った。あれが入っていたら7-0の大敗で、グラウンドにいる人間はこいつやばいなと本能的な恐怖を懐いたろう。相手にそういうのがひとりでもいるとチームごとの威圧感になる。前の試合で休ませた二人、1発目ホームランのリン・ジャーチェン(捕手)、致命的3ランのチェン・ジェシェン(センター)はその空気の中で思いっきり振ってきた。

もう一人、いやな空気を作ったのが決勝先発投手のリン・ユーミンだ。彼を使ったのは韓国戦だけだ(2点取られてるが)。負けてもいい前の試合、決勝進出が決まりそうになって台湾が急に予告先発を変更してもめた。ということは温存したリンが押しも押されぬエースだということで、そういう先入観で打席にたつ日本の打者は気持ちで押される。兵は詭道なり。相手にはそのぐらいの計算もあったのではないか。

前の試合、日本も小園、坂倉を休ませ、急場の先発投手から村林が先頭打者ホームランを叩き込んでお返しはしているしベンチも選手もすることはしたのだが、初見で打ちにくそうなフォームの左腕リン・ユーミンで5回ぐらいまで押さえこんでいるうちに戸郷をパワーで粉砕して優位に立とうという台湾の作戦が見事に当たってしまったというのが感想だ。

相手はきのうのリン・アンクアの一発を見ている。初回、初球から全員がマン振りし、ホームラン狙いで出鼻から圧を思いっきりかけて押し倒しに来た。振るといってもマン振りはそうそうできるものではない。台湾選手が鍛え上げられていたということで、あれだけ振られるとピッチャーは怖い。戸郷も気力負けせずに自慢のストレートで押すが、完璧に押し込んだというより急場をフォークでかわしてゼロに押さえていたのであり、力対力を続けてるとどこかで出合い頭の一発を食らいかねないなという感じはあった。

先発変更で虚を突かれた日本は嫌なムードを払拭すべく先取点をとりたい空気だったと思われる。ところが、初回、絶好調の2番小園が外角に1メートルも外れるくそボールのスライダーを完全に崩された空振り三振。主軸打者があれだと後続もびびる。いや~な予感がした。案の定、球が上下に暴れると思うと左打者のインコースがビシっと決まるつかみどころのないリン・ユーミンに翻弄され凡打の山。4回を終わって内野安打1本に封じこまれ空気が悪い。守りの方が台湾打線の圧で決壊する予兆はあった。

それがおきたのが5回表だ。先頭打者はリン・ジャーチェン。8番打者にまさかの右中間ホームラン。9番は三振したが、次の1番からは打順3巡目にはいる場面だ。一般に、5回前後にくる3巡目は相手の目が慣れてきている。それを抑えられればこっちの球威が優位ということで、7回前後からの4巡目もけっこうなんとかなって完投できる。しかし戸郷の完投など元から考えてないラストゲームなのだから3巡目の1番(左打者)からタイプの違う左の隅田に代えてよかった。少なくとも、その1番にヒットを打たれ2番に四球を出したところでどう考えても交代だった。何をこだわったんだろう?まあ井端は野手だし吉見コーチが言うべきだったと思う。

そこで食らった3番チェン・ジェシェンの3ランホームラン。作戦が面白いように決まった台湾はあれで勝ったと思っただろう、重盗、ホームスチールまで仕掛けて攻めまくる。その勢いのまま西武、ロッテを退団した2投手に2安打に抑えこまれ、バットをへし折られ、6回からはわずか1安打で抵抗の兆しなしの完敗である。あんなに打ちまくってきた打線が何でこうなっちゃうんだろうと思うが、そこが野球の面白いところだ。

負けはしたが侍Jは見事な野球で勝ち抜いてきた。岡本、村上らの不参加で長打力が不足する打線を、勝負強い小園、森下、牧、佐野を2,4,6,8番に置いて見事につなげ、素晴らしい得点力を発揮したのは井端監督の人選、配置の冴えだ。もっと強いチームにしてくれる期待しかない。WBCが楽しみだ。

 

 

 

Categories:野球

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