古希のイベントで予見した未来
2025 FEB 10 7:07:55 am by 東 賢太郎

従妹の心のこもった手料理で先週に始まった古希のイベントは、土曜日に家族で祝ってくれた夕食会で盛大に終わりました。還暦の時はまだまだと思ってしなかったんですが今回は陣羽織に頭巾をかぶらされ、写真を見るとまるで水戸黄門。これが笑えるほどよく似合ってるんですね。涙もろくなっているらしくプレゼントをいっぱいいただいて困ってしまいました。
息子がひとりふえて5人、こうしてあらためて一同に会するとみな立派な大人です。米国でロケット工学を専攻した彼に「行けたら火星に行きたい?」と聞くとはいという返事。その心意気いいですね。片道4年もかかるの?僕は閉所だめなんで無理だなあ、「どこでもドア」があれば行きたいけど値段高いだろうなあ、きっと1000億円出す人いるだろうなあなんて話に。家内からは「私学に進んでたらどんな人生になってたかしらね」ときかれ、あまりにいい質問でちょっとむずかしい。とりあえず確実なのは「みなさんここに誰もいなかったね」(笑)でした。すべては家内と広島のユースホステルで出会ったことから始まった物語ですからね、浪人を決断したのは僕の意思ですが、その先に計画したってあり得ないようなことがおきて今があって、この今に僕は100%満足です。ということは「違う決断しなくて正解だった」、これが答えなんでしょうね。
前稿に書いたように、僕は絶望的な失敗に3度遭遇してます。せっかく入れてくれた私学に素直に進んでればそのひとつはなかったのですが、遭遇してしまったおかげで今日の物語があるのだからまさしく「塞翁が馬」であったのです。どんな大失敗でもそこから物語の輪が360度広がっていきます。そこに出た芽が大輪の花に育つことがあります。失敗を恐れる人生を送れば輪はできず、安心安全ではありましょうがチャンスの面積が狭い人生になります。米国や中国と比べますと日本にはせっかく優秀なのに後者である人が圧倒的に多いのが残念です。子供達には恐れることなく立ち向かって大輪の花を得てほしいし、もし誰かが壁にぶつかっても助け合っていって欲しいと思います。
僕個人のことを言えば、運のある人生でした。というか8割はそれだけのイメージで、実力に比べると明らかにもらい過ぎ。その差が運であって、だから運というのは信じるに足るものであって、しかも、信じると増えていくものだという驚くべき実感を味わった者です。おとぎ話に聞こえるでしょうがこれにはメカニズムがあって、増えるのは実は運でなく「余裕」なんです。余裕ある人は実力が同じでも余裕ない人に勝つ確率は必然的に高い、ここだけは統計を取ればファクトという裏付けがありましょう。だから高勝率を得てますます自分は運があると信じるようになり、「運も実力のうち」という諺ができるのです。余裕は脆弱なんです。当日に試合相手の顔を見てビビったり周囲の受験生が賢そうに見えたりすれば雲散霧消なんてことが自分でもありました。しかしおまじないに近い運やツキはそんなものに左右されません。だから信じやすい。大事なのは、それがホラであっても嘘であっても縁起かつぎでもぜんぜん構わないということ。とにかく心から自分を信じ切った者の方が強いです。
努力しなければもちろん負けます。すると運がないと思いこむ逆スパイラルに陥ります。だから自分が強運だという信念を裏切らないぐらいの結果は最低は出し続け、人為的であってもいいから信念を育てることです。いわば自分を騙す。これが大事です。僕は性格が楽天的だから騙しやすくて有利でした。アスリートは誰しもぎりぎりまで努力してますから、人事を尽くした後の「天命」の部分で「ゲン担ぎ」をよくするとききます。世界のホームラン王、王貞治さんもしていたそうですし受験生の合格祈願もそうですね。僕はある種の球は打たれないと自分を騙すことに成功してたので余裕があったんでしょう、10年ブランクがあって5試合投げたニューヨークの大会でMVPに選ばれました。だから本当です、信じる者は救われます。
ホラや噓や人為的でない部分。ここはガチンコの実力であって余裕はそれを何倍にも増幅する、いわばROEとPERの関係です。ROEの絶対値が大きいに越したことはありませんし、ないものを増幅しても意味ないですから地道に勉強し現場の多様な経験を積んで貪欲に「知見」を得ることですね。地道ほど大事なものはありません、なぜなら人がついてくるのはそうした地に足の着いた経験であって理論や学歴ではないからです。経営者は監督として能力ある人を使えばいいのですが、知見がない人に優れた人は集まらないのです。また、いざという時に嫌なこと、いわゆる「果断な決定」を迫られることもあります。この教科書はありません。胆力しかない。場数を踏むことですね。
そして最も大事なのが経営のかじ取りです。海図を引いて船を進める。これも教科書はなく、株のことは株式市場に聞くしかありません。いまわれわれのビジョンは好調で、ある銘柄に早めに大き目の投資をした決断が大正解で非常に楽しみなのですが、あらゆる業種、業態の経営と同じくこうすれば絶対という道があるわけではありません。そしてもう一つ指摘しなくてはならない経営の要諦があります。会社が利益を出すには世の中に需要があることが大前提です。それが本当にあるのか。そしてそれに応える方法が自分に本当にあるのか、常にそれを自問することですが、問題は需要や方法が時と共に変遷する点です。
例えばテレビ業界です。僕は見ないのでフジテレビばかりか全局なくなってまったく困りません。聞くところによるとそういう若者が増えてるそうです。彼らが「いらない」と判断するなら需要がなくなるのですから問答無用で消滅し、テレビはSNSとChatGPTとオンディマンド配信の受像機の呼称として残るでしょう。AGIは大半の役所の仕事と士業を低料金で代替し国家の歳出を大幅に逓減します。人の近距離移動と物流は完全に無人車とドローンになり長距離移動は無駄か贅沢の代名詞になります。国家財政は徐々にインフレ、金利のない暗号資産建てになり納税も可能となり、市中銀行の外国為替業務と決済・送金業務は不要になります。かようにして、いま職業、会社、業界と呼ばれるものは根底からガラポンになりますが核融合発電がエネルギーコストをほぼゼロにしますから人類活動全部がエネルギーを基軸とした違う形の均衡点に収束します。この地殻変動は先見性ある企業家にとって大チャンスであると同時に、受け身の経営者は倒産するか、需要を保持できずM&Aをするかされるか、または自ら全株式を売却して資産運用をして生き延びる判断を迫られるでしょう。
夕食会の写真集をもらい、
何十年かしてこれを見てこんなことあったねって日が来るよ。全員が思いっきり楽しい人生を歩んでください。
とメールしました。
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