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カテゴリー: ______国内経済

山水電気の破産という警鐘

2014 JUL 18 1:01:59 am by 東 賢太郎

山水電気が7月9日に東京地方裁判所により破産手続きを開始決定したというニュースには寂しさを感じます。サンスイ(SANSUI)のアンプというと高校生のころ僕のあこがれで、雑誌の広告を見ていつかはあれで聞いてみたいという存在だったからです。

オーディオというのは大きく分類すれば①信号を読み取る部分②伝送・制御する部分③増幅する部分④空気振動に換える部分とありますが、聴感への影響度でいうと④(いわゆるスピーカー)の選択が大事だという人が日本には多いように思います。同感ではありますが、読み取り(ピックアップ、プレーヤー)、伝送・制御(ケーブル、プリアンプ)、増幅(パワーアンプ)もそれぞれの在り方で影響するので、どれか一つが特に重要というわけではありません。

オーディオ装置を選んで自分なりのシステムを作るというのは、算数的にいうと①~④の4つの変数がある関数の最大値を求める問題です。ところが困ったことに各変数は独立ではなく、a,b,cまでは良くてもdを入れると関数値が大幅に下がるなどします。変数間の相関性は未知数だからとにかく4つのどれかを固定して順次試行するしか手はなく、まずどれを固定するかがその実験の要諦になります。例えばスピーカー重視派は④を固定してから①②③を試して相性を確かめていくわけです。

そこからは今度は「何を聞くか」によって①②③が変わってきて、ジャズ、ロック、クラシックetcでおのずと選択は変わるはずです。これがオーディオマニアの楽しみといわれ、もちろん正解はなく完全に趣味と主観の世界です。僕はトータルでたまたま気に入ればそれでよしというわけであんまり個々のパーツ入れ替えでぎりぎり「追い込む」ことに時間はかけたくありませんが、それでもドイツにいたころあれこれ「実験」はしてみて、それを趣味とされる方々のこだわりの気持ちは少しは理解できるようにはなりました。

そういう実験の失敗から学んだことなのですが、クラシックを想定した場合、昔のサンスイのような透明感のあるあまりスペック偏差のない優良アンプ固定でスタートするのがいいと思います。同じクラシックでもメインソースが歌か室内楽かオーケストラかで違ってきますが、室内楽中心に聞く人を除けば、アンプが大事と思います。いや、貧弱なアンプに何を組み合わせてもお話しにならないと言ってしまってよろしいのでそう結論します。これは西洋の石の家に長年住んで聴いているとわかります。逆に木造住宅の小さめの部屋ですと、それがスピーカーということになるのです。

サンスイのアンプは結局使うことがなかったですが、親父に買ってくれとせがむには高かったというのもありますが、当時の部屋が狭くて高級なセパレートシステムがいらなかったというのが正解だったでしょう。

いま聞いているシステムはスピーカーに先に惚れたというか、特定の色をつけないからむしろここ起点でいいというB&Wだったのでアンプ選択が後になりました。5,6回とっかえひっかえ自宅に運び込んでもらって試聴し、やっと行きついたのが米国ホヴランド社のストラトスでした。有名ではなかったですがウィーンフィルやコンセルトヘボウを僕のイメージ通りに鳴らしてくれる銘器であり、不合格にした方はどれも当時一世を風靡していた著名ブランド物ばかりでした。

ところが、このホヴランド社も数年前に倒産しているのです!

こういう目にあうとどうも世の中がわからなくなります。いいものを作っている、これは自信を持ってそういえるのですが、そういうメーカーである山水もホヴランドも時代についていけずに倒産。いったい何が起きてるのでしょう?

結局、需要が減ったということです。オンラインでヘッドホンで聞く。僕も時々使いますが、そこそこ音はいいと思います。日本の住宅事情の制約条件に合わせて低出力のアンプを鳴らすくらいならそっちのほうがコストはもちろんでも満足度だって上でしょう。デジタル時代のすう勢はソースの情報量を飛躍的に増大させ、直接PCで信号化して伝送・制御、増幅はミニマル化し、空気振動変換も最小限で関数値をそこそこ高くする方向に一気に進化しました。消費はいかなる場合でも、安くてかつ良いものの方に向かいます。オーディオにも「クラウド革命」が起きたわけです。

この流れに山水電気やホヴランドが追従する手がなかったということです。ついていかなければどんな名品を作ろうが老舗だろうが企業は簡単に倒産するということです。

そうしたら昨日、このニュースが入ってきました。

米電機大手ゼネラル・エレクトリック(GE)が創業事業である冷蔵庫や洗濯機などの家電事業を最大25億ドル(約2500億円)程度で売却することを検討していると報じた。発明王エジソンが研究した白熱電球に由来する照明部門も含まれるという(米、ブルームバーグ)。

創業事業を売ってしまうというのは大きな決断ですが、企業というのは生き残るためには何でもありです。しかし大事なことは、GEは事業を積極的に多角化してきたからこの手が残っていたということではないでしょうか。山水、ホヴランドはそれがなかったから本業と共に沈没するしかなかったのです。

ウォートン・スクールでは米国企業の栄枯盛衰の様々なケーススタディを学び、証券業という側面から多くの日本企業のそれも間近で見てきましたが、いま強く感じることはデジタル革命、ネット化がいよいよ本格的に進行した結果そのサイクルがここ数年で比較にならないほど短くなっていることです。携帯の覇者であったノキアがスマホの出現であっという間にモバイルとは無縁だったアップルにとって代わられたのがその例です。

この時代をチャンスと取るかピンチと取るかは業界によって様々でしょう。日本企業の典型的スタンスとして「様子見」があります。いきなり行動するとリスクがあるのでじっくり趨勢を見極めてからやる。しかしこういう時代は、何もしないで見ている方が知らず知らずにリスクを取っている可能性があります。それは趨勢が見えた時にはゲームオーバーというリスクです。

山水電気の社名は「山のごとき不動の理念と水の如き潜在の力」という創業理念から来ています。そして同社はその理念を寸分曲げることなく、不動の理念で優れた製品を生み出してきた立派な会社と思います。しかし、何かが足りなかったのです。

 

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株式道場ーGPIFの謎ー

2014 JUN 5 1:01:07 am by 東 賢太郎

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)なるものがある。HPによると「厚生労働大臣から寄託された積立金の管理及び運用を行うとともに、その収益を国庫に納付することにより、厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定に資することを目的」とする法人である。

この法人は、年金積立金の管理及び運用に関する具体的な方針を定めた「管理運用方針」を策定し、信託銀行と投資顧問会社へ運用委託を行う。実際の運用を行うものではなく、運用方針を決め、それを運用させてその監督をする。わかりやすくいえば、ゼネコンと工務店の関係だ。

いま株式市場ではGPIFが日本株の運用枠(資産構成比)を1-2%引き上げたのではないか、だから株は高いだろうという憶測で強気が勝っている(だから刹那的にダウが上がっている)。一昨日付の某証券会社レポートにはこうある。

仮に買い手がGPIFであると仮定した場合、3月末の日本株資産構成比は16%程度と推測されます。基本方針は12%±6%なのですが、報道によれば株式に積極的な新たな運用委員長を迎えた経緯もありアロケーションを昨年12月末の17%程度まで引き上げる決定をしたとしても不思議ではありません。17%として1%アップなので約1兆円の買い、上限の18%として約2兆円の買い余地が生まれたと推測されます。信託銀行経由の買いがすべてGPIFであると仮定すると、1~2兆円の買い余地のうち、先々週までで4700億円、おそらく昨日までで累計1兆円弱の買いになっていると予想されます。つまり、17%に向けた買いであるならばそろそろ目的を達成しているということになります。

こういうものを書く人を証券業界では「ストラテジスト」と呼ぶ。シロウト(個人投資家)向けではないからクロウト(機関投資家)しか読めない。B to Bのサービスなのだ。ちなみにこれは僕にメールで送られてくる。ではそれでクロウトが投資に成功するかというと、そういうことはない。むしろこういう情報を軽率に追いかけるとやられる(損する)ことの方が多い。僕は野村證券時代に金融経済研究所投資調査部長(ストラテジスト部隊の長)をやった。自分で書いたわけではなく20数名ほどいた「書くプロ」の監督だ。だから書く人にはうるさい。上記の筆者は(別な会社だが)なかなかバランスを感じていい。

このGPIFというのが日本株資産構成比を引き上げるのどうのといっているのが、いわゆる安倍内閣の株高政策、PKOなるものだと解釈されている。そうであるとすると、自民党が古典的に行ってきた財投という土建屋的バラまき行政、一部学者とか智者を装う評論家みたいな連中が「ケインジアン政策」という雅名でよぶこともあるが、それを株式市場でもやってしまおうという知性のかけらも感じない土俗的行為である。安倍さんは為替介入と区別がついていない気がするが、インサイダー取引という固有の問題をはらむ株式取引は危険と裏腹でもある。「日本株がこれからパフォーマンスが良さそうだから」と合理的に判断するならいいだろう。しかし厚労大臣が学者を連れてきてそれを言わせるという図式は理解ができない。

クニとセンセイはこの国では全能の神だ。センセイが決めれば国民など誰もわかりはしない、という和式の理屈だ。神のお告げなんだからGPIFは20%まで日本株を買っていい。あと4兆円だぞ!高値をどんどん買うぞ!だから株は高いぞ、みんな買わないと損するぞ!ということだ。夏にはまだ早いが、まあ、一種の祭りか盆踊り大会と思うしかない。後の祭りになった者がババをつかむだけだ。政治をまつりごととは実によく言ったものだ。政府は今年の第3四半期(7-9月)のGDPを見てさらなる10%への消費増税を決定することになっている。そこで株が下がって消費が減退し、国民に反対論が盛り上がっては困るのだ。そこで厚労省はせっせと財務省と自民党に恩を売るわけだ。

この「どんどん日本株の高値を買ってダウを押し上げる」→「みんな買うだろう」→「ダウが上がるだろう」は明確に間違いである。為替レートというものは確たる理論的論拠がない。金利差だ資金移動額だと小理屈はあるが、そのどれもが明確に1ドル80円か100円かを説明するわけではない。だから「政府資金が介入」という事実が理屈に勝ってしまう。だから市場参加者は皆ビビる。つまり、そういう厳然たる裏事情があるからこそ、為替レートはある程度は操作可能なのである。ドル・人民元のペグのようなことはそうやって可能になるのだ。しかし株はちがう。どこの誰が一気に大口でたくさん買ったからといって、理屈の方が最後は勝つ。ある程度の理屈で説明づけされる水準から居所を変えて株価がそこに居座ってしまうということはまずないのである。

だから株の世界で威嚇、警鐘、誘導のつもりで「これから買うぞ」と手の内をさらすのは麻雀でテンパりましたと宣言するぐらいバカである。世界中の投資家が先に買っておいて上がったら売り浴びせられ、ごっつぁんでしたとなるのが落ちだ。いや、それでもいいんだ、どんどん買って儲けて下さい、ババは僕がつかんで損しますから。それで9月まで株高がもてば消費税OKなんです、それでいいんですよ、ということか?そうとしか聞こえない。「僕が損しますから」って、僕って誰かって?皆さんである。皆さんの将来の年金給付金になるはずのお金がそれに使われるのである

前回のくり返しになるが、こういうとんでもない人たちにお金をあずけてまともに年金が払われると思う方がおかしい。本来は年金など不要で個人が老後資金を自分で蓄えるのが本筋だ。ただ、個人で小口で運用するよりも国がまとめて規模の利益を得てやったほうが成績がいいだろうという理屈で年金が始まった。ところがわが国ではその「規模」は株価対策に使われる。それなら「自分年金」を作った方がいいと考える人はこれから圧倒的に増えるだろうし、僕はそういう人たちを助けたい。もっと低コストでわかりやすくて、しかも老後に安心できる投資の仕組みを作りたい。

しかし僕のいうのは杞憂かもしれない。そうやってどんどん株を買い上げていくと、あら不思議、そのお金は年利4.2%という超高利回りで100年間も増えるらしいのである。我が国の経済学会にはケインズ先生も驚く物凄い経済理論があるのだ。そのうちSTAP友の会の会長さんとGPIFの学者センセイとどっちが先にノーベル賞を取るか、ロンドンのブックメーカーがオッズを出すのではないかと推察する。優れた人間洞察力から独自の「株式美人投票理論」をあみだしたケインズは株がうまく、母校キングズ・カレッジの基金3万ポンドを運用して38万ポンドに増やした。ただし、残念ながら買い上げではなく、大恐慌で下がった中小型の割安株に集中投資するバリュー株戦略で成功したのである。

 

 

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株式道場―百年安心年金の怪ー

2014 JUN 3 23:23:43 pm by 東 賢太郎

僕は年金会計の専門家ではないので、年金の所得代替率が2009年時点で50.1%しかなかったことの是非を検証することはできません。それはその数値が今後の我が国の実質経済成長率、労働分配率、出生率など種々の前提条件をどう仮定するかに依存するからです。

現状でわかっているデータは年金給付総額49.8兆円であり、年金保険料が30.2兆円、国からの財政支出が12.9兆円です。ということは、足りない 6.7兆円は積立金が取り崩されているということです。消費増税分の3%でもそれに足りません。それを補うには①さらなる増税②保険料徴収期間の延長③給付開始年齢の引き上げ、以外に策があるとは思えません。

ところが④があるようなのです。それは年金の運用利回りを100年間にわたって4.2%にすることです。政府はそう言っています。

一応30年金融証券の世界で飯を食ってきた人間として書きます。どうせつくならもう少しマシな嘘をつきなさいよということです。

皆さま、銀行預金や国債は絶対に安全と思っておられますか?政府が経済成長率や日経ダウや年金運用利回りを押し上げたり鶴の一声で決めたりできると思っておられるでしょうか?自由主義経済でそんなことは100%あり得ません

断言します。国債利回り(「リスクフリーレート」と呼びます)が10年で0.6%しかない国の通貨(「円」ですね)で、それを3.6%も上回る運用利回りを1世紀も継続できる人が現れたら、ジョージ・ソロスはおろか、ノーベル経済学賞学者はおろか、人類史に永遠に刻まれる奇跡をおこした全能の神として世界中に巨大神殿が建造されるでしょう。ブッダもキリストもアラーもその前にひれ伏すしかありません。それを正気で言う人の正気を心配しますし、我々金融業界はバカであると愚弄しているのではないかと憤りすら感じるのです。

円ベースでリスクフリーレートを3%上回る利回りを3年続けただけで「運用のプロ」として生きていけます。5年なら「運用をお願いしたい」というお金が黙って数百億円集まります。10年続けられたらイチロー並みの天才として世界プロフェッショナル運用業界の殿堂入りは確実です(そんな人はまだいません)。それを100年???笑うしかありません。

頭脳明晰な官僚がそれを知らないはずはありませんから、④は実はなくて③しかないのが真実だということを賢明な皆さまは覚悟されるべきなのです。だから「自分年金」を作って老後の安定を図るしかありません。何でもかんでも国におまかせできるという幻想は、政治家の票集めと官僚の仕事作りのためでしかないという大人の認識をお持ちになることです。

自分年金とは何か?老後の安心資金を「どう儲けるか」ではなく「どう確保するか」「どう守るか」ということがその意味です。僕はそういう立場でプロとアマのお客様両方から料金をいただいてアドヴァイスをすることを本業としています。SMCでは設立趣旨から株式市場全体のお話しだけにとどめ、個別銘柄の推奨のようなことは差し控えますが、申し上げたいことは非常に明確ですからぜひ文脈からそれを読み取っていただき自分年金作りのご判断のお役にたてていただければ幸いです。

 

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「信用資本主義」を宣言する!

2014 MAY 6 0:00:30 am by 東 賢太郎

今日、プラネットダイナソーなる恐竜の番組を見ていて思いました。恐竜がなぜ滅んだか?です。

大きいことがいいことだ、ではない。これは生物進化の常識です。捕食者として大きく強く進化するより環境適応した方が生きのびる確率は高い。だから哺乳類が強くなった。これは知っていました。しかし番組によると恐竜は、恐竜という種の中でちゃんとそれをやっています。歯の形を変えたり、肉食を草食に変えたり、小型種になって木に登ったり空を飛んだり。ちゃんと適応種が出ています。それなのに絶滅したわけです。

ということは、生物進化の常識があてはまらない事件がおこってそうなったのではないか?それは一応科学的に証明されたと言われていて、メキシコのユカタン半島に巨大な隕石が落ち、気候が急変したことがその「事件」となっています。それを見た者はないわけだから証拠を得て証明しなくてはなりません。犯罪捜査に似ていますね。殺人事件現場をしらみつぶしに調べて、煙草の吸殻や髪の毛から犯人を指摘するシャーロック・ホームズみたいな努力が必要です。

あいつがくさいぞ、あいつが犯人にちがいないという予見で捜査しておいて、理屈に合わない証拠が出てくるとストーリーに合うように加工ねつ造してしまうというのは、犯罪捜査においてはそれも犯罪、科学調査においては科学者資格はく奪に値する神の冒涜行為と僕は思います。ホームズのような推理小説の世界においては、証拠がそこまで科学的意味で自明に犯人を指し示すのは「オランダ靴の謎」など少数しかありません。だから犯人の自白や自殺で帳尻を合わせるなどがっかりのケースが多いのですが、事実を証明する現場が小説より奇ではいけませんね。

恐竜を殺した犯人は自白はしてくれません。だから証拠が自明に、ロジックの完璧さをもって語らないといけません。隕石説はそうでないとエセ科学にも聞こえてしまう。いろいろ調べていたら松井 孝典博士のサイトにあたりました。これを見て下さい。

http://youtu.be/8N17Rms7pZk

http://youtu.be/ZpcUsI-6IgI

http://youtu.be/wsYqNWUAKVw

「6550年前に直径10-20kmの隕石が秒速20-30kmでユカタン半島に衝突して瞬時に直径100km、深さ30kmのクレーターを作り、高さ300mの津波がおこり硫黄酸化物が作る雲が太陽光を遮った」という隕石という犯人と犯行方法が指摘されていますね。地球生成時にあったイリジウムという重い元素はあるメカニズムによって全部地殻に沈んでいるのにこの6550万年前の地層にだけ見つかる、その総量から隕石の大きさが逆算できて衝突インパクトが計算できるなど、犯人指摘のプロセスはエラリー・クイーンのミステリーなみにわくわくします。

ところでいま、世界経済は物質的経済成長の持続が期待できなくなる時代、何度も書きますが「200年続いた産業革命期の終焉」にさしかかっています。氷河期が襲って成長という地球上の食物が少なくなるようなものです。その環境変化の大きさは恐竜を絶滅させた気候変化に匹敵します。だから大きい動物が生態系の頂点にある時代は終わります。大型草食獣の代表だった中国がだんだん食えなくなって肉食化し、肉食獣の王者だった米国はだんだん衰弱しています。そして両国ともいずれ大きさという壁に当たります。恐竜の後に恐竜はもう出なかったのです。小型獣ながら適応力抜群である日本は、6550万年前の哺乳類の位置にいます。地球を制覇したのは、小さかった我々哺乳類だったのです。

その日本。東北大震災では若者たちが避難警報を無視して命がけで流されたお年寄りを救う画像が流れました。それを見た韓国では信じられないという書き込みがあふれました。韓国船の船長をあげつらう気も擁護する気もありません。むしろああいう若者がそこかしこにいる日本のほうが世界では希少なのです。落した大金が手つかずで戻ってくる世界唯一の国です。あるおばあちゃんが日立の株を買ってくれたことがあります。「来年はあんまり業績は良くないですよ」と申し上げると、「いいえ、下がってもいいんですよ。孫が日立にはいったもんですからね。」 胸にじーんときました。こういう投資家がいることを経済学の教科書は想定していません。

韓国人や米国人が驚くような日本文化。それは風呂敷に象徴されるように江戸時代までもっと適応力がありました。ところが薩長の明治政府が天皇の権威を支配して富国強兵という大目標をたて、それにむけて突っ走ることで環境適応力を自らどんどん失いました。風呂敷文化がカバン文化になってしまったのです。敵の戦力の値踏みすらできなくなったその挙句が第2次大戦敗戦です。そして敗戦国の屈辱のなか、廃仏毀釈どころか自虐にすら走るという信じ難い国ができあがりました。こういう国も、世界史の教科書にはのっていません。

国家の仕事、国家しかやりえないことは外交と防衛です。これを安倍政権が懸命にするのは本来の仕事として当然のことでしょう。それ以外の仕事を国は減らして地方政府に任せればいい。財政収支を自活させるには江戸時代まであった「藩札」を復活させればいいのです。ギリシャが財政破たんしたのは、国力が落ちれば為替レートがちゃんと下がって観光客が増え、税収を増やしてくれるドラクマという自国通貨を放棄してユーロに参加するという安易な道を選んだからです。日本の県も円という統一通貨で財政を行うから同じことになっているという見方をしてみたらどうでしょう。

国民の側も、なんでもかんでも国にやってもらおうというのはまちがい。地方は地方でやり方次第でいくらでも国際化の道は開けます。日本ほど観光、歴史、温泉、グルメなど外人が興味を持つ資源を地方がどこでも潤沢に持っている国はそうはありません。東京にそれを宣伝してもらうのでなく、東京よりもグローバルな方法を自分であみだせばいい。僕はいくらでもそういうプランを描けます。というのは、第3の矢の経済成長は本来国家にはできないことなのです。たとえば少子化担当大臣というのがいます。この人はいったい何をするんでしょう?お見合いや合コンや強精ドリンクの手配でもするんだろうか。問題意識を持っているのはいいことだが、そんなことを国が目標に掲げて成果が出ると本気で思っているんでしょうか。

大なり小なり、第3の矢はこれと同じく滑稽のにおいがするのです。それは若者の結婚や子づくりと同じことで、企業がビジネスとして自分でその気にならないのならいくら日銀が金利を下げても誰も借りないのと一緒です。役所が机の上で考えたビジネスプランに命の次に大事なお金を出資しようなどという企業家はあまりいないでしょう。一番効果があるのは、法人税率を下げ、政府が民間に道を開いて規制緩和をすることなのです。そうして企業が収益を自力であげる機会を増やし、そこで働く夫婦がもうひとり子供がいてもいいと思うようにしてあげれば一石二鳥なのです。それが政府にとっても良い結果になる。なぜなら、日本が持ち前の環境適応力を最大に発揮し、新しい世界環境で生き残る道が開けることにもなるからです。

そこで企業が採る道として僕は「信用資本主義」ということばを提唱します。これが東北大震災という試練をのりこえ、人の「絆」というものの大切さを世界の誰よりも知った日本の財産です。犠牲になられた多くの尊い命のまえで、それを国のため、次の世代のために大事に生かしていくことを誓うことこそ我々のすべきことです。「信用」とは人と人が信頼でつながることで、もっと良いものを生み出す力を何よりも秘めています。信用ができないから契約するのです。契約したから義務としてするのではなく、信用され、信用したから真心をもってする。絆とは心と心のつながりです。だから契約より強いのです。これは古来日本人の持つ社会観、道徳観であり、これを自然にできるのは世界で日本人だけです。オンリーワンの国が負けるはずがありません。信用を根っこにして積み上げていく資本主義を僕は自分のビジネスとして、言うだけではなく有言実行したいと思います。

 

頑張らない人が報われる社会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オバマ外交に思う

2014 MAY 1 20:20:47 pm by 東 賢太郎

このたび拝命することになった顧問職と同時に新会社の経営にも関わらせていただくことになりました。ブログは週末の書き貯めを順次上梓してきましたが、この1~2週間はそのことで多忙で種切れになりました。

いま注視しているのはオバマのアジア歴訪で見えたアメリカのスタンスです。ニュース等からの感触ですが、彼もバイデンも尖閣など眼中にはなく靖国へ行ってTPPで言うことを聴かない安倍内閣も見切っていて次は石破ぐらいに考えているのでは。11月の中間選挙でヒラリー相手に苦戦は確実ですが、中東和平交渉期限切れ、ウクライナで対プーチン弱腰など外交下手を批判されても軍にばらまく金はないでしょう。中国と裏で握って米国債を買わせる(売らせない)というドル防衛がプライオリティーと見ました。

FRBイエレンは明確にテーパリングですから日銀が野放図に金融緩和継続をするとは思えません。黒田総裁の発表は消費増税の重しがあるためで、7-9月のGDPでさらに10%への増税が決まりますからそれまでに経済が減速していることを示唆する統計が出たり株価が下げることはまずいわけです。10年国債利回りが0.615%(本日)なのにメガのプライム貸出金利は0.5%以下です。一般企業の方が日本国よりも安い金利でお金が借りられるという信じがたい事態になっています。

メガはおそらく日銀から0.1%ぐらいで引いてますから国債を買えば0.5%で運用できてしまう。しかしそれではマネタリーベースが増えませんから金融緩和の効果はでず、バカヤローということになっている。確定的に(かなりの高確率でという意味ですが)円で1%以上で回せる運用商品はあまりありませんが、もしあるならばこの黒田政策があるうちに企業は円キャリーをやるべきです。千載一遇の好機と思います。

米中が通貨ペグ合意をした可能性は高いのですが、相当景気減速感のある中国の人民元が大きく上がる要因は考えられないので大きくドル高(円安)に振れる感じもありません。むしろ90円台半ばに戻るかもしれません。そうなると株価にはマイナスであり黒田政策は継続です。以前に指摘しましたが2%インフレターゲットを設定しておいて安倍さんのご機嫌を取り、円安と株高で2%達成となって日銀は大嫌いな緩和策から逃げるというシナリオは少々無理が出ているかもしれません。バランスシートの劣化による国債価値の毀損に神経をとがらせる日銀として米中ペグは鬼門になるかもしれません。

とりあえずの走り書きでした。

アベノミクスは成功するか

2013 JUL 10 17:17:54 pm by 東 賢太郎

いよいよ参院選です。アベノミクスが大きな争点ですね。SMCは政治プロパンガンダ禁止ですのでそれをわきまえつつ私見を述べさせていただきます。

アベノミクスの真価は第3の矢にかかっていると言われています。第2までは概ね成功(それでも第1段階ではありますが・・・)というのが世論と考えてよろしいかと思います。この辺の事情は経済の鏡である株式市場に反映されています(僕の5月17日付ブログこれから日本株はどうなるか?をご参照ください)。そこに書きましたが、金融現象としての株高と実際の経済成長に根ざした株高は別物です。デフレ解消は手段であり、やがて経済成長に結びつくのでなければ意味のないインフレをもたらすのみという野党の主張は正しいといえます。

ただ忘れてはいけないのはデフレ経済で政府が何をやっても経済は成長しないことです。他人の資本を借りた「梃(てこ)の原理」で成長する企業というものがなくして資本主義は成り立ちませんし、それをミクロ現象としてトータルにいわばマクロ的に見たものが経済成長と世の中が言っているもののほぼ実体です。もちろん企業が絶対に必要というわけではないですが、それを否定して国家計画経済だけで生き残った国家が世界に幾つあるかご覧になれば、結果論的にではありますが、企業がレバレッジをかけて成長することが国家経済を繁栄させる近道だという間接的な証明はされていると考えていいのではないでしょうか。実質金利が高くて企業がお金を調達しない、借金をした者が苦労するという世の中では資本主義はワークしないのです。

ですからデフレ根絶という大目標を掲げたアベノミクスは合理的理由があります。参議院の存在意義や国家体制や憲法改正の是非を論じる以前に、まずデフレはいけないのです。その手段として金融緩和という策が日銀から提唱されました。これが貨幣の増量を暗示して円安、株高を誘発したのですが、これが政策目標ではないのですから「庶民は恩恵がない」と政策批判する根拠がありません。企業の労働分配率問題にすり替える根拠もありません。デフレ経済では貯蓄こそ王道です。企業はセオリー通り内部留保しているだけであり、分配させるにはデフレを退治するしかないからです。

第3の矢は難しいですね。規制緩和は効くでしょうがTPP、原発再稼働の舵取りをしながらですし。日本国は成長原資(非効率)をたくさん持っている国です。医療、教育、農業など。規制緩和はそれを活かす唯一の道ですがそれをするには既得権益集団との対立が不可避です。官僚はその代表ですが議員定数問題を見るまでもなく政治家も集団の一部です。だから彼らに本格的な規制緩和は期待できないでしょう。現在の規制環境の下で成長することはもちろん可能ですが、それを推進する主体である企業セクターにおいても社内既得権益闘争があり、株主利益など一顧だにせぬ社長解任劇が演じられたりしています。株主総会でなら健全なのですが。

今回の選挙はそういう考慮とは関係なく、大方の予想通りの結果になるのではないでしょうか。ねじれ国会がそんなにいけないなら憲法改正と一緒に参議院は潰した方がいいのですが、そういう本質的な議論は一切なく。アベノミクスの最大の価値はデフレ対策である以上、少なくともそれだけは完遂してもらいたい。そこから先は企業経営者に頑張っていただきたい。今申し上げられるのはそこまでです。

なぜ日本の電機メーカーは凋落したのか?

2013 JAN 6 0:00:57 am by 東 賢太郎

TVで慶応の夏野剛先生が面白い話をしていました。彼は学者というよりNTTドコモでi-モードを開発した実業界の人です。彼によると日本のシャープ、パナソニック、ソニーといった電機メーカー凋落の最大の原因は「この10年の経営者の読み違い」にあるそうです。モノ作り重視の同質的な文化で育った人が内部昇格して経営者になるのが日本企業です。彼らはITを軽視しており、ITにつながらないと物が売れない時代の流れに完全に乗り遅れてしまった。それが読み違いだというのです。

 

日本の経営者の年齢は60±5歳で、共通の話題は健康とゴルフ。パソコンを使える人はほとんどいないというのが現状だそうです。使ったことがないから利点がわからない。長いデフレのトンネルにいるうちにすっかり守りの姿勢が染みついたため、役員に推薦するのは「自分の地位を脅かさない人」「空気を読める人」ばかりで「異質な人ことを言う人」「とんがった人」は排除されます。先生ご自身、最年少執行役になられたにもかかわらずその壁に当たったそうです。だから「ITの利点がわからない人」ばかりの役員会になり、会社ごと道を外れてしまったというのです。

 

特に面白いのは、これまで経営者は部下から上がる「二次情報」で経営判断していたのが孫さんみたいに自分でツイートして「一次情報」を取れるようになったためトップの影響力が増しているという分析です。トップが即断し、異質な人を入れた取締役会がウォッチするという「新自由主義じゃない新しい経営体制」がITの力でできるかもしれない。そうすれば日本企業は生き返るということです。しかし東証1部の大企業が自律的にそれをやるとは期待できない。IMF下で実質国家破綻した時に韓国政府がやったような強権を伴った政府主導の再編が必要だというご意見でした。

 

従業員と会社の関係も変わります。今まで、良質の情報は大企業に入らないとアクセスできませんでした。しかし今はネットで誰でも簡単にできてしまうし、新しい分野の知識だって何カ月かネットで検索しまくっていれば誰でも「専門家はだし」になれてしまう。だからこれからは従業員、特に若者は「好きな道」を徹底的に深く掘り下げるべきで、それができる人が出世もするし独立もできるとのご意見でした。

 

ITが会社ばかりか個人も社会も変えるとも。司会の田原総一郎氏のツイートはフォロワーが40万人いるので「雑誌より読者が多い」そうです。メディアより個人が影響力を持てる時代になっているのですね。「アラブの春」と呼ばれるチュニジア、エジプト、リビア、イエメンの長期独裁政権崩壊を引きおこしたのもネットの力でした。ネットは検索して情報を得るという使い方と、その逆に情報を発信して何かをアピールするという使い方がありますが、その後者の方が大きなパワーを持ち出しているのだそうです。

まったく同感です。

IT音痴だった僕ですが、SMCというバーチャル空間に3か月住んでみたことでITの威力はささやかながら体感できてきました。先生の言われることは恐らく電機メーカーや若者だけの話ではありません。そもそもITリテラシーの極度に低かったシニア世代にこそ、もっともっと劇的な「生活空間の変化」をもたらす気がしている今日この頃です。

 

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脳内アルゴリズムを盗め

「ネット人格」性悪説は必ず増える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ自民党が勝つと円安、株高なの?(reprise)

2012 DEC 20 23:23:49 pm by 東 賢太郎

表題のブログ、たくさんの方が読んでいただいているようなのでレプリースを。

この問いに正しい解答をするには、

①勝った自民党が何をすると言っているか                          ②その政策のどれがマネー(お金)を動かしているか

を検証しなくてはいけない。株価や為替レートは国が決めているわけではない。だから政権が替わったり安倍さんが何か言うことによって株価や為替レートが変動するわけではない。決めているのはマネーであり、マネーが動くから変わるのである。つまり、

自民党勝利→マネーが動く→株価、為替が変動

というロジックを知り、表題に含まれていない「マネーが動く」という部分を分析しないと正確には答えられないのである。

では、

マネーはどうして動くのか? いや、そもそもマネーとは何か?

アメリカの学校はこれを教えるが日本の学校は教えない。マネーとは本来は消費(交換)、貯蓄の道具であるお金、貨幣というものを、決済、投資という動的な目的を持った行為に特定してその総量を計るための概念である、といっておおよそ正しいだろう。

ではなぜ日本人がマネーについて教わらないかというと、「投資」を教わらないからだ。ことこの側面に関して、日本の教育は共産国と何も変わらない。驚くべきことにいまだに日本では投資と投機(バクチ)はほぼ同義である。学校がバクチを教えるはずがないから皆さんは教わらない。だからアメリカの証券会社は財務長官を出すが、日本の財務大臣はNHKのレポーターがやることはあってもバクチ打ちと思われている証券会社出身者がやることはない。

したがって、

なぜ自民党が勝つと円安、株高なの?

という問いに満点答案の書ける日本人は大学の先生を含めて、おそらく10%もいないのではないかと憂慮する。自民党に投票した人も大半が驚いているのではないか。

なぜ安倍総裁がまっさきに今日、日銀の白川総裁を呼びつけたか?

僕の経済ブログをじっくり読んできている方は、このことだったのかと完璧に意味が分かるだろう。それがわかれば円安、株高の理由が補正予算と公共投資だけでないことも容易にわかるだろう。若い方、大学生の皆さん、習ってないのですからわからなくて当然なのです。何も心配することはありません。マネーについて自分でじっくり学べばいいのです。

マネーを学ぶということは、老後を年金に依存できない可能性のある世代の方にとって必須です。FXや株のデイトレーダーになることを薦めているのでは全くありません。マネーというものの原理や動態をじっくり分析できる眼を養って、「中長期的に賢い投資家になること」。これしかありません。

なぜ自民党が勝つと円安、株高なの?

2012 DEC 18 16:16:21 pm by 東 賢太郎

昨日のこと、「なぜ自民党が勝つと円安、株高なの?」と娘が質問してきた。いい質問だが答えは教えない。僕もそうやってよく親父に聞いたが、答えはなく、

「自分で考えろ。お前の頭は何のためについてるんだ。」

が決まり文句だった。だから聞く前に自分で考える癖がついた。自分で結論を出して、こうこうでしょ?と聞くと、そうだ、ちがう、などと詳しく教えてくれた。

疑問に思わない: 論外                                      疑問に思うが考えない: 大多数                                  疑問に思って考えたがわからない: いい線だ                         疑問を自分で解く: 大学生になった甲斐はある

大学4年である娘は「いい線」ぐらいのところだ。このレベルに大学生である必要はない。小学生だっていくらもいる(だからこども電話相談室という番組がある)。大学生なら考えないとね。でも表題に正確に答えるのは結構むずかしい。学校の先生で答えられる人は何%いるだろうか。

自民党が勝つ前から、野党の党首なのにあることを言ったら株が1000円も上がった。これがヒントだ。

日本の財政事情と若者の未来について

2012 DEC 4 16:16:03 pm by 東 賢太郎

日本の財政事情は、政府債務残高/名目GDPが205.7%となり、1944年の太平洋戦争後の204.0%を越えた。

震撼すべき事実である。日本に再び「高度成長期」がやってくるのを望むのは、太平洋戦争で神風が吹くと信じたのに等しい。

日本人の総所得はバブル期にピークを打ち、人口がドラスティックに減らない限り一人当たりの数値がピークを更新することはもうないだろうと僕は、残念ながら、確信する。日本人はほぼ全員が今よりも貧乏になっていくだろう。悲観する必要はまったくない。それでも全員が一等国の国民として誇りを持ち、楽しく豊かな人生を送ることができるよう国の設計図を変えていく必要があるだけだ。

民間はこれを体感しているが、全く分かっていないのが政府、公共セクターである。バブル期に日本は世界の一等国だった。そのことは、それが「バブル一等国」かもしれないという脆弱な印象だったことも含めて、その時期に海外でビジネスの最前線にいた僕らが一番よく知っている。一等国になれたのは政治家や役人が優秀だったからでもなんでもない。民間が優秀だったのである。

「バブル一等国」の予算を勘違いして組み続け、ふと足元を見たら歳入不足でしたというのは田んぼに豪華なオペラハウスを建てればメットが来てくれるだろうという地公体の能天気な政治と何ら変わらない。なぜ一度だけメットが来てくれたのか、つまり民間がどうやってグローバルに事業を成功させ、あんなに税金をたくさん払ってくれたのかという根本原理がわかっていない政府の「経済政策」とはいったい何なんだろうか。

原発反対はいいが原発ゼロになれば確実に電気代は上がる。いくら上がるのか示しもせずにこれが踏絵ですという党が忽然と現れる。10年後をメドにと言うが半年後に忽然と消えているかもしれない党に誰がそんなことを託すのだろう。言い出しっぺの自分が事業仕分けされた党は2番狙いが似合っている。立ち上がらずに立ち消えた党。ぜんぶぜーんぶ反対、それで雇用は守りますという精神状態を疑うしかない党。

歳入が減れば公共事業費だけでなく、こんな低レベルの国会議員や公務員の数も給与も減って当たり前である。公共セクターだけが日銀の庇護のもとでデフレの恩恵を享受し、ぬくぬくと生きのびていけるほど世界は牧歌的に出来てはいない。今、この政府、公共セクターというものにメスを入れ、根底から考え方を改変しないと、将来の日本人はますます貧乏になり、国際社会での発言力などほぼゼロになる。その悲哀は僕らの世代ではなく、現在30才代未満の世代にふりかかることを、その世代の方は肝に銘じておいたほうがいい。それを変えるのは投票という行動か、皆さんが起業家か政治家になるしかないということも。

今の日本には、お年寄りでも病気でもないのに他人の努力に胡坐をかいて「タダ飯」を食う連中が多すぎる。僕はそれなりに多い税金を払っている分だけ声高に言う。そんな者を養う余力も国力もない。高度成長期というのはタナボタでやって来たのではない。民間はもちろんのこと、政府、公共セクターも一つになって、よい国、よい生活を夢見て国民全員が汗を流して働いた結果だ。僕の世代はこの良き時代の生き証人であり、次の世代に歴史として伝える重大な使命があると思う。

 

米国放浪記あとがき-若者に贈る僕の三原則-

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