Sonar Members Club No.7

月別: 2013年7月

アベノミクスは成功するか?

2013 JUL 17 13:13:30 pm by 安岡 佳一

私の予想は、条件付で成功すると思います。 その条件とは上手くアメリカ経済の復活に乗れるかと言う条件です。 戦後の日本の奇跡的な経済の復活と80年代末までの成長の大元は、日本のインフラ投資からの経済効果と、アメリカ市場に対して強烈な輸出攻勢を掛けてドルを稼いだ事だと思います。その後、日本経済のバブル崩壊、アメリカ経済の停滞、輸出の主役が日本から中国や韓国に地位を奪われる事で日本経済は急減速してしまいました。しかしながら、漸く上記の様な低迷していた環境が丁度潮の流れが変わるように大きく変化しつつある様に思えます。

米国在住と言う現地の観点から、米国経済は大きな経済復活の予兆が感じ取られ、第二、第三の黄金期に入って行きそうな気がしてなりません。その上げ潮に日本が嘗ての様に如何に上手く乗れるかでアベノミクスの成否が掛かって来る様な気がします。

アメリカ経済大復活の要因:1.シェールオイル・シェールガスの経済的効果、2.製造業の米国内への回帰現象、3.新しい防衛戦略と経済効果、4.移民効果、5ドル高が挙げられると思います。

1.シェールオイル・シェールガスの経済的意義

皆さんご存知の様に、米国ではシェールオイル・ガスの開発は活発に行われています。お陰で、ここ数年で国内の原油生産量は日糧600万バーレルから800万バーレルに一気に増加し、国内消費分2000万バーレルの半分近くに迫ろうとしています。国内生産は、数年後には1000万バーレルを軽く超えるとも言われ、そうなるとサウジやロシアを抜いて世界最大の原油生産国になる可能性が高くなってきました。結果として、貿易収支、経常収支、国際収支が大幅に改善する事が予想されます。 規制されているシェールガスの輸出が本格化される2017年以降は、益々収支の改善になるものと思われます。 このエネルギー開発だけで、今後数年間で100万人の雇用が必要とされ、周辺産業等を考慮すると数百万の雇用創出になるとも言われています。又、より安全で効率良いエネルギー開発は、新テクノロジーの開発も誘発し、そこから新たな産業も生まれる可能性も出てきます。 シェールオイル・ガスの掘削方法は正しくその様な新テクノロジーの賜物です。

2.国内回帰現象

嘗ては多くの企業が安い労働力を求めて中国に進出しましたが、ここ2~3年に起きている事は、ダウケミカル、デュポン、外国の石油化学工業を始めエネルギーを大量に消費する大工場が何10年振りかに次々とアメリカ国内に新工場を立ち上げ始めています。これらの工場は通常数千人の雇用を必要とする事から、周辺企業や産業を含めますと経済の波及効果はかなり大きなものになりそうです。勿論、安いシェールガスを原材料として作る化成品等は国際的にも比較競争力が高まり、外国からの輸送もしなくてよく、世界最大の市場であるアメリカで生産する事のメリットを大きく受ける事になり、製造業が益々国内回帰の動きになる事が考えられます。

3.新しい防衛戦略と経済効果

アメリカの防衛費はイラク・アフガニスタンでの出兵もあり急増し、GDPの5%弱(約55兆円)まで達しましたが、今後は大きく削減されそうです。理由は、無人飛行機による代替、原油の中東依存が低くなる事等で中東派遣撤退、シーレーンの予算削減、強力な電磁波攻撃による原子爆弾依存の比率低下等々で、大きな構造改革を行おうとしています。因みに、中国は約10兆円強、日本は約5兆円弱が国防予算です。(予断ですが、米国の電磁波攻撃は本気を出せば、衛星や無人攻撃機から強力な電磁波を発し、狙った国の全ての電気系統を破壊する程の攻撃能力を持っているとされております。従って、これを使えばICBMを使う必要がありません) 防衛費の削減は国家財政の好転を齎す大きな要因になります。

4.移民効果

アメリカの人口は現在約3億2000万人弱ですが、毎年約300万人程人口が増加しています。 内訳は、出生ー死亡=200万人、移民100万人。 国務省の幹部によりますと、アメリカ政府は人口を4億人まで出来るだけ早く増加させ中国に対抗したい様です。従って、国益に適った移民を世界から選りすぐってドンドン引き入れるそうです。国益に適った人と言うのは、資本家、特殊技能保持者(スポーツ、芸能、科学者等)、そして最も求めている人は資本があり、頭があって、米国で事業を興し雇用を作れる人達です。この様な人は、通常なら数年待たなければならない永住権が即日発行されるそうです。 この様な国益に適った人達が、新しい企業、産業、サービスを提供するのです。 丁度、アベノミクスの3本目の矢である成長戦略をアメリカは移民からも取り込もうとしているのです。

5.ドル高

以上の、事柄を鑑みますとドル高シナリオになります。少なくとも海外から買う原油が少なくなり、貿易収支等は改善、製造業等の国内回帰から来る貿易収支も改善、国内の雇用が増加し所得が増加し、消費が促進され国家財政が改善、防衛費削減からも財政改善、移民が増加しドル需要増加、上記の様にマクロ的にアメリカ経済は双子の赤字が急速に改善し、国家財政は黒字転換も可能。ドル高は、輸入インフレ抑制、国内金利上昇抑制効果があります。従ってドルに対する信任が確固たるものになる事が考えられます。 これらの状況を見て、海外の富裕層、能力のある人、自国で喘いでいる人達が今一度「機会の国、アメリカ」を目指す状況になるのではないかと思われます。

この様な、アメリカの状況を鑑みて日本はどの分野でどの様に上手く乗るかによって日本の経済、アベノミクスは成功するか決まると思う次第です。

以上

 

ナパ・バレー ケンゾーエステート再訪問記

2013 JUL 15 8:08:35 am by 安岡 佳一

先週の金曜日に再度ケンゾーエステートを訪問してきました。 1ヶ月前の6月14日に行ったばかりでしたが、シアトルとSFに出張が入り、ケンゾーエステートの幹部の方に連絡を取ったところ会って頂けると言う事で再訪問の運びと成った次第です。 この幹部の方は、数年前まで私の上司だった方で、一度ゆっくりとケンゾーエステートのお話を聞きたいと思っておりました。 大変幸運に恵まれた今回の訪問だったと思います。
この幹部の方のお話を約2時間聞かせて頂きましたが、当ワイナリーのオーナーの並々ならぬコミットメント、非常に緻密に立てられた今後20年に及ぶ経営計画、そして当ワイナリーと生産するワインを世界最高のものにしたいと言うビジョンと言いますかロマンを熱く語って頂き、こちらも大変啓蒙されました。
ナパバレーにはロバートモンダヴィを始めとする所謂エスタブリッシュメントがいて、ナパを世界最高のワイナリーが集まる場所にしようと言う意気込みが大変強く、それを成しえる為の厳しい掟のようなものがあるそうです。 土地所有者と言えども乱開発は許されません。 あくまで自然の良さを凝縮したのがワインであり、人工的に作られるものを最小限にすると言う基本精神があるそうです。 又、訪問客が多くなり環境の変化をもたらすような事は避けたいと思っており、各ワイナリーでは、訪問者は予約者のみで人数制限をしており、訪問時間も最後の予約は3時まで等事細かに決めているそうです。
ナパの一般的なワイナリーの純資産は約2Milから$10Milらしいのですが、ケンゾーエステートは後発と言う事もありかなりの投資をしたようです、又、本格的にワインを生産し始めたのは未だ数年前であり、現在の期間収益は赤字ながら2~3年後には黒字転換する予定との事です。先程の掟にある様に、大量の資本を投入しての乱開発を規制しており、その掟の範囲内での開発と言う事になれば、経営が軌道に乗るには時間が掛かりそうです。
何でも現在使用している敷地はたったの3%だけで、それが20年後には7~8%にする計画だそうです。 それも、敷地内で葡萄を育てるのに一番適している場所を選び、選りすぐりの場所にのみ最適の葡萄の品種を栽培して最高のワイン用の葡萄を生産する計画だそうで、20年後には現在の8万本のワインの生産を約10倍近くにしたいと仰っていました。
当幹部の方曰く、オーナーは決して金持ちの道楽でこのワイナリーを経営しているのでは無く、先程の様々な縛りの中で、最高の物を生産しながら経営としても安定した黒字経営に持っていくべく毎日心血を注いでいる様です。 現在では、日々の葡萄の生育状況、ワインの販売からあらゆる経費に至るまで全てその日の内に計上し、明日、来週の経営を調整しているそうです。短期ではその様な緻密なコントロールをしつつも、1年先、5年先、10年先、20年先の目標と課題をハッキリと明示しており、その計画と現在の乖離に関しての分析等にも神経を尖らせているそうです。
当幹部は金融出身の方ですが、ケンゾーに来てここまで数字等に緻密に神経を注がなければならないとは夢にも思わなかったと言っていました。お陰で、ここで余生を送ってのんびり半引退生活などといった夢話はすっとび、金融の世界にいる時よりも毎日の緊張感は高いといみじくも仰っていたのが非常に印象的でした。
又、オーナーとワイン製造の責任者との価格設定のやり取りの中に、オーナーのビジネスマンとしてのセンスの良さを見出し、大変勉強になったとも言っていました。全くの異業種に参入し、多くの事は専門家に任せるのですが、いざ商売と言う事になると商人としてのセンスと知恵を出し問題解決に当てた様です。 例えば、当ワイナリーの一番安い銘柄はRindoで現地では$100で販売しています。 この価格に関して、製造責任者のハイジ・バレット氏は怒ったそうです。 「私はそんな安いワインを作っているのではない。 最低でも$300はするであろうワインを作っているのだ」と。 しかし、オーナーはそのワインの実力は完全に認めたものの、後発である事等でその値段では買わないポテンシャルの顧客が多い事を憂慮する。 この様なポテンシャルの顧客に先ずは味わって頂き、評価して頂く為には安いと言うお値打ち感を与える事が大事である。一定の支持層が出来て来た所で値を上げていく事を提案し、お互いに納得したと言う経緯があるそうです。従って、このRindo(紫鈴)は買いです。 因みにランクが上の紫、藍は共に$250のプライスが付いていました。 
何の世界もそうでしょうが、一流になると言う事はそれなりの努力が無ければ絶対になれないと言う当たり前の事が改めて教えられました。
この美しい葡萄畑と景観、自然の美しさに尊敬の念を抱きながらそこからの命の雫を頂くのがワインだそうですが、そこに至るには見えない所で相当な努力がなされていると言う事を知りながら味わうワインは又格別の味わいがする様に思えました。
以上

ナパ・バレー ケンゾー・エステート訪問

2013 JUL 7 5:05:06 am by 安岡 佳一

今月のお題目とは全く関係の無い話題で申し訳ありません。

久しぶりにナパで素晴らしい体験をしてきました。

過去に何回か日本からのお客様をお連れしてナパに行った事がありますが、今回は自分の仕事半分、楽しみ半分です。NYの何人かの友達からケンゾーエステートのワインは一級品だとの話を聞いておりましたが、実物のワインをNYのレストランで見る事はあまりなく、幻のワインとも言われており、一度は現地へ行ってみたいと思っておりました。ワイン通の何人かのコメントでは、あのオーパスワンを超えるとまで言われており、あまりワインを飲まない私でさえも一度賞味してみたいと言う欲望に掻き立てられます。

SFに住んでいる友人が何回かケンゾーエステートに行った事があるとの事で、案内をお願いし向かう事にしました。SFから北に走る事約1時間、段々ブドウ畑が見えてくると胸が高鳴ってきます。谷から山沿いを駆け上がって行った所に、ケンゾーエステートの門があり閉まっていました。 友人が「今日は開いてないのかも知れない」と言いながら門前に車を置いてゲートに近づくと、ゲートが突然静かに開き始めました。どこからかカメラで見られてる!! 多分、典型的な日本人の格好の私をカメラで見て安心して開けてくださったのでしょう。 ゲートを抜けて走る事数分、ゲストハウスらしき瀟洒な建物が見えてきました。

ゲストハウスの入り口には、「紫 藍」と記された書画が飾られており、中はシンプルながら非常に上品にデザインされたワインバーがあります。少し中に入り左手を見るとテラスがありそこからは見渡す限りのブドウ畑が広がっている光景は、まるで一枚の絵画の様であり思わず「ワー」と言って息をのみます。

コンショルジェの方から歓迎のお言葉を頂き、ケンゾーエステートについてご説明をして頂きました。当地は、日本の某企業オーナーが20数年前に会社の保養所として購入した事、しかし、ナパでの土地利用には様々な規制があり保養地としてのアイデアは断念し、真剣にワイン作りに挑み現在に至っているとの事です。因みに、当ワイナリーの敷地面積はナパでも最大手らしく、4000エーカー程あり丁度中野区と同じぐらいの広さだと言う事と、未だ利用している土地は数%のみでマダマダこれから発展して行くと仰っていました。又、ナパの雄であるオーパスワンとモンダミのワイナリーは当地の近くだそうです。

説明の後、ブドウ畑とワインの醸造所、そして樽を寝かせているケイブ(洞窟)の方に案内して頂きました。現在は、年間8万本製造されており固定客が多い事から一般のレストランに出回る本数が少ないのではないかと仰っていました。NYでもケンゾーエステートのワインを出しているところは少なく、数える程しか無い為、幻のワインと言われる由縁の様です。

ツアーの後は、先程のバーでティスティングを楽しみました。 紫鈴(りんどう)、紫(むらさき)、藍(あい)の3銘柄を頂きました。何れも非常に円やかでフルーティーなワインでした。この時ばかりは、是非ワイン通の方に表現して頂きたいと思いましたね。紫は暫くブリージングしておくとほのかなチョコレートの様な香りがしてきたのが不思議に思えました。

コンシェルジェの方から、「ボトルショック」と言う映画をご覧になった事がありますかと聞かれました。1976年にナパのワインが初めてフランスのワインにブラインドテストで勝った実話を基にした映画です。その主人公であるジム・バレット氏は、現在ケンゾーエステートでワイン製造責任者されているハイジ・バレット女史のお父様だそうです。成る程、血筋か。

2時間ぐらいの訪問でしたが、非常に内容の濃い、印象深い訪問でした。あのワインの美味しさと当地の美しさを友人に伝えたいと思った次第です。

当地の山を下りて来て、麓の町のイタリアンレストランに立ち寄りましたが、何と美味しかった事か。豊かな気持ちと、美味しい空気と水、イタリアンフードにワインがあれば極楽です。

以上ですが、現地へ行ったのが2週間前、又、今週の週末に掛けて訪問する事になりました。又、NYの友人何人かと世界に所在する友人何人かが是非訪問してみたいととの事で、今年は少なくとも何回か行く事になりそうです。何でもベストシーズンは収穫期の9月頃だそうです。

 

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊