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ナパ・バレー ケンゾーエステート再訪問記

2013 JUL 15 8:08:35 am by 安岡 佳一

先週の金曜日に再度ケンゾーエステートを訪問してきました。 1ヶ月前の6月14日に行ったばかりでしたが、シアトルとSFに出張が入り、ケンゾーエステートの幹部の方に連絡を取ったところ会って頂けると言う事で再訪問の運びと成った次第です。 この幹部の方は、数年前まで私の上司だった方で、一度ゆっくりとケンゾーエステートのお話を聞きたいと思っておりました。 大変幸運に恵まれた今回の訪問だったと思います。
この幹部の方のお話を約2時間聞かせて頂きましたが、当ワイナリーのオーナーの並々ならぬコミットメント、非常に緻密に立てられた今後20年に及ぶ経営計画、そして当ワイナリーと生産するワインを世界最高のものにしたいと言うビジョンと言いますかロマンを熱く語って頂き、こちらも大変啓蒙されました。
ナパバレーにはロバートモンダヴィを始めとする所謂エスタブリッシュメントがいて、ナパを世界最高のワイナリーが集まる場所にしようと言う意気込みが大変強く、それを成しえる為の厳しい掟のようなものがあるそうです。 土地所有者と言えども乱開発は許されません。 あくまで自然の良さを凝縮したのがワインであり、人工的に作られるものを最小限にすると言う基本精神があるそうです。 又、訪問客が多くなり環境の変化をもたらすような事は避けたいと思っており、各ワイナリーでは、訪問者は予約者のみで人数制限をしており、訪問時間も最後の予約は3時まで等事細かに決めているそうです。
ナパの一般的なワイナリーの純資産は約2Milから$10Milらしいのですが、ケンゾーエステートは後発と言う事もありかなりの投資をしたようです、又、本格的にワインを生産し始めたのは未だ数年前であり、現在の期間収益は赤字ながら2~3年後には黒字転換する予定との事です。先程の掟にある様に、大量の資本を投入しての乱開発を規制しており、その掟の範囲内での開発と言う事になれば、経営が軌道に乗るには時間が掛かりそうです。
何でも現在使用している敷地はたったの3%だけで、それが20年後には7~8%にする計画だそうです。 それも、敷地内で葡萄を育てるのに一番適している場所を選び、選りすぐりの場所にのみ最適の葡萄の品種を栽培して最高のワイン用の葡萄を生産する計画だそうで、20年後には現在の8万本のワインの生産を約10倍近くにしたいと仰っていました。
当幹部の方曰く、オーナーは決して金持ちの道楽でこのワイナリーを経営しているのでは無く、先程の様々な縛りの中で、最高の物を生産しながら経営としても安定した黒字経営に持っていくべく毎日心血を注いでいる様です。 現在では、日々の葡萄の生育状況、ワインの販売からあらゆる経費に至るまで全てその日の内に計上し、明日、来週の経営を調整しているそうです。短期ではその様な緻密なコントロールをしつつも、1年先、5年先、10年先、20年先の目標と課題をハッキリと明示しており、その計画と現在の乖離に関しての分析等にも神経を尖らせているそうです。
当幹部は金融出身の方ですが、ケンゾーに来てここまで数字等に緻密に神経を注がなければならないとは夢にも思わなかったと言っていました。お陰で、ここで余生を送ってのんびり半引退生活などといった夢話はすっとび、金融の世界にいる時よりも毎日の緊張感は高いといみじくも仰っていたのが非常に印象的でした。
又、オーナーとワイン製造の責任者との価格設定のやり取りの中に、オーナーのビジネスマンとしてのセンスの良さを見出し、大変勉強になったとも言っていました。全くの異業種に参入し、多くの事は専門家に任せるのですが、いざ商売と言う事になると商人としてのセンスと知恵を出し問題解決に当てた様です。 例えば、当ワイナリーの一番安い銘柄はRindoで現地では$100で販売しています。 この価格に関して、製造責任者のハイジ・バレット氏は怒ったそうです。 「私はそんな安いワインを作っているのではない。 最低でも$300はするであろうワインを作っているのだ」と。 しかし、オーナーはそのワインの実力は完全に認めたものの、後発である事等でその値段では買わないポテンシャルの顧客が多い事を憂慮する。 この様なポテンシャルの顧客に先ずは味わって頂き、評価して頂く為には安いと言うお値打ち感を与える事が大事である。一定の支持層が出来て来た所で値を上げていく事を提案し、お互いに納得したと言う経緯があるそうです。従って、このRindo(紫鈴)は買いです。 因みにランクが上の紫、藍は共に$250のプライスが付いていました。 
何の世界もそうでしょうが、一流になると言う事はそれなりの努力が無ければ絶対になれないと言う当たり前の事が改めて教えられました。
この美しい葡萄畑と景観、自然の美しさに尊敬の念を抱きながらそこからの命の雫を頂くのがワインだそうですが、そこに至るには見えない所で相当な努力がなされていると言う事を知りながら味わうワインは又格別の味わいがする様に思えました。
以上

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