蛙鳴蝉噪(ハリケーン)
2012 OCT 30 12:12:38 pm by mtsuzaka
” Sandy slams into US east coast”(フィナンシャルタイムス紙電子版)
10月29日、ハリケーン サンディの影響でニューヨーク証券取引所が終日閉鎖された。悪天候による閉鎖は1985年以来のことらしい。2日連続の閉鎖となると1888年のブリザードまでさかのぼる。このニュースを聞いた私は、2004年に上映された「The Day After Tomorrow」で東京にソフトボールみたいな雹がふった事を思いだし、今日にでも南半球に避難すべく預金通帳を見たが、とても逃げ切れるものではないと冷静に判断し、とりあえず静観することにした。
ハリケーンの名前は1978年までは女性の名前が付けられていた。当時、学者や研究者のガールフレンドや奥さんの名前をつけたらしい。1979年からは男女の名前が交互に使用されるようになった。男女同権運動の一環だ。なるほど、かんしゃくは男女問わず起こすからだろうと思いきや、2003年にはテキサス選出の女性下院議員のジャクソン・リーが、ハリケーンの名前は白人系に偏っていると指摘する。人種差別を解消する目的として、アフリカ系アメリカ人やその他の人種の名前も付けるべきだと求めた。
私など、自分の名前が付けられた台風が大災害を引き起こしたならば、あまり良い気分にはならない。だから、私は自分の名前が台風に使用されるのは嫌だ。「xxx地方に甚大な被害をもたらした台風、「賢太郎」(上海にいらっしゃる東さん、すみません)は、勢力を強めながら北東に進路を変え・・・・」なんて報道されると、いかにも自分がガメラにでもなった気がする。
台風も立派(?)な名前を持つ。気象庁によると2000年から,北西太平洋または南シナ海の領域で発生する台風には、*ESCAP/WMO台風委員会加盟国が提案した140個の名前を順番に使用している。今年9月末に日本に上陸した台風17号はマレーシア命名の「ジェラワット」、昨日ベトナムに上陸した台風23号はベトナム名「ソンティン」。次の名前はカンボジア名で花を意味する「ボーファ」になる予定だ。日本が提案した名前は星座名をベースにしている。「テンビン」、「ヤギ」、「ウサギ」、「カンムリ」、「カジキ」、「クジラ」、「コップ」、「コンパス」、「トカゲ」、「ワシ」など。
9時のニュースで「台風「ウサギ」はxxxxxに上陸。各地で強風によるけが人が相次ぎ・・・」と伝えられても、慣れないせいだろうが、やや緊張感にかけてしまう。もっとも、台風委員会加盟国でも提案された名称の使用頻度は低いようだが。
ECSCAP : ECONOMIC AND SOCIAL COMMISSION FOR ASIA AND THE PACIFIC
WMO : WORLD METEOROLOGICAL ORGANIZATION
蛙鳴蝉噪(雑感)
2012 OCT 26 14:14:55 pm by mtsuzaka
以前にも書いたが、日本の領土は世界68位と決して広くはない。しかし領海と排他的経済水域を加えると日本は世界第9位だ。排他的経済水域とは、いわば、経済的な権益は日本のものだが、通行したければ自由にどうぞというエリアだ。9月の中国のストライキの原因とされた尖閣諸島は日本の領土で、東シナ海の魚釣島を始めとする無人の小島群である。海洋白書の記述に従って書くと、「1895年の本邦領土編入以来、日本が実効的支配を行ってきたが、1969年に国連アジア極東委員会(ECAFE)が、東シナ海大陸棚に莫大な石油埋蔵量が期待されると報告した翌年、中国により領有が主張された。同諸島は台湾によっても領有が主張されている」らしい。私の理解も概ね同じだ。しかし、中国から見るとやや風景が異なるようだ。
先日、富山県のある会社にお邪魔したときに見せていただいた下の地図では、日本列島が日本海を内海として、韓国、北朝鮮、ロシアをブロックしている。ちなみに中国は日本海に港がない。その為、中国は北朝鮮から日本海に面した不凍港(冬でも海面が氷結しない港のことです)を、2005年から50年に亘り租借している(櫻井よし子氏「異形の大国中国」)らしい。
彼の国がどのような戦略かは分からない。だが、この地図を見るといかにも日本は中国にとって(地理的に)邪魔くさい。右上の線の間は台湾だ。尖閣諸島の魚釣島は、その台湾のわずかに左(東)だ。石垣島からもほぼ同距離にある。
台湾の右(西側)にいくと南シナ海。最近の中国は、ここでもやんちゃしているらしい。1974年には南ベトナムからパラセル諸島を支配したし95年にはフィリピンからミスチーフ礁を占拠するなど、南シナ海に着々と進出している。南シナ海は、マラッカ海峡にいたる重要なシーレーンだ。従来、フィリピン、マレーシア、ベトナムなどが微妙なバランスを保ってきていたが、中国が進出することによってバランスが崩れてきているらしい。日本海側は北朝鮮やロシア、韓国と対峙している。工作員が上陸しているかもしれないと警鐘をならす漁業関係者の方もいるらしい。この辺は第九管区、尖閣諸島は第11管区海上保安庁の管轄。特例公債法案が成立しなければ11月末前後には財源が枯渇する見込みらしい。国家公務員、とりわけ例外扱いされてきた自衛隊や海上保安庁の方々の給与の支払いが遅れるようなことにはならないでもらいたい。
蛙鳴蝉噪(食事編)
2012 OCT 22 17:17:44 pm by mtsuzaka
横浜でオクトーバーフェストが開催されていた。ミュンヘンで開催される横浜版だ。横浜は、いつもの「行儀良い」日本人ばかりだが、ミュンヘンでのオクトーバーフェストは「良いドイツ人」ばかりになる。「日本とドイツは同じ敗戦国だから仲間だ」(東賢太郎氏の「フランクフルト空港の謎」を参考」)などと体の大きなオヤジに肩を組まれて押さえつけられてしまう。日本でいう「無礼講タイム」だ。そんなことある訳ない。彼らを見て自身の戒めにしようと思ったが、日本酒が二合を超えると戒めを自ら解いてしまうのも、私の長所だ(と自分では思っている)。酔っ払いはどこの国でも同じだ。
オクトーバーフェストの前、9月~10月では、フェダーヴァイサーと呼ばれるドイツワインヌーボー(日本酒の濁り酒のようなもの)が販売される。このフェダーワイン、醗酵途中なので瓶の栓を閉めていない。1ダースほど買い求めて車のトランクに入れると、えらいことになる。キリスト教精神旺盛なドイツ人年配者の目には、私のような単身赴任の日本人は家族と休日を過ごすことができない気の毒な人間と映る。土曜日の夜(といってもまだ明るい)、庭から声がかかり、食事をしに来いと呼ばれる。「行儀の良い」私は、フェダーヴァイサーを4~5本抱えて伺う。食事は非常に簡単だ。パンとスープとマッシュポテト、奥様のご機嫌が良いときは、茹でソーセージ位はでてきた。食事の時間は、夕方6時頃から10時位までかかる。しかし物を食べる行為そのものは30分程度だ。後は、ひたすら話す。そもそも、ドイツ人は料理が嫌いだ。パンとポテトとソーセージとザワークラウト(ミュンヘン地方のは、しゃきしゃきしていて美味しいのだが)があれば十分だ。その証拠に貸し家(家具付きは一般的ではないものの)にはキッチンにシンクが付いていない。自分で持ち歩くのだそうだ。家具付きでもシンクなどは小ぶりなものが多い。日本人に家を貸すと、夕食の支度でキッチンが汚れるのを嫌がる人がいるとも聞いた。余談になるが、奥様にはごみの捨て方までご教示いただいた。日曜日の朝、私がごみを捨てた40秒後に、彼女は私の家のドアをノックしていた。得体の知れない東洋人である私をしっかりと監視していたのだ。
2年後、愛着がわいたフランクフルトからロンドンに移った。ロンドンでは賞味期限切れの日本食材がふんだんに手に入った。背の小さな大人もたくさんいてフランクフルトよりも、快適に過ごすことが出来た。あるとき、会社の上司がきた。イギリス料理を食べたいというので、スコットランド出身の取引先とシティーで一番古いパブ”Ye Olde Cheshire Cheese”でランチを取った。お勧めのホームメード スペシャルを注文。クリーム(小麦粉?)シチュー具無しに、煮込んだキドニーが入っていた。お連れした方は、長旅の疲れで食欲がなく口をつけなかった。マドンナ御用達(と噂)のThe Ivyなるレストランのジェリード イールも大変な味だった。同じイール料理でも、デンマークなど北欧ではぶつ切りにしたうなぎをフライパンで焼いて、アクアビットでいただいたことがある。こちらは、骨は多かったものの上の2つの料理よりは私にとって口にし易かった。くだんの上司は長旅疲れが取れず食欲はなかったようだが、スコットランド人の早口英語で空腹が満たされたのだろう。私はといえば、どぶろくの焼酎割りを一気のみした(ことはないが)ような気分だった。
ドイツやイギリスに住む友人達の食事は、概して(日本と比べると)質素だ。レストランでのディナーも特別なケースを除くと簡単な食事しかしない。 しかし、話しをする時間は格段に長い。シティーのパブやフランスのカフェでは、ビール、ワイン一杯で長時間話す。ディナーではデザートから後が長い。彼らにとっての食事の時間は会話の時間なのだ。以前飛行機で隣に乗り合わせたフランス系の美人が、食事の時間だけ私に話しかけた理由がようやく分かった気がする。
蛙鳴蝉噪(海運編)
2012 OCT 5 12:12:39 pm by mtsuzaka
ローラーコースターが苦手な私は、飛行機に乗りシートベルトを締めると憂鬱になる。しかし、ゲートを離れ、見送ってくれる整備士の方々を見るとほんの少し憂鬱な気持ちが和らぐ。飛行機のタクシングがたおやかに出帆する船を見送る気持ちと重なるからだ。
航空機の交通ルールは、古くからあった海上交通を基にしている。船舶は、通常左舷で接岸する。航空機のゲートも通常は左舷。整備士の方々に手を振って応えたければ、進行方向に向かって左の窓側に席をとれば良い。左舷をPort side と言う。右舷はStar-boardだ。”Star-boad”は、星が見える舷側の意味ではない。舵を意味するsteerがなまっただけだ。船の真ん中にはマストがあるから、どちらかにずれなければ前がみえない。ジャック・スパロー船長のブラック・パール号も右側に操舵輪が付いている。Port-sideも昔からの呼称ではない。荷積みの舷側を意味する”lar-board”の発音が”star-board”と紛らわしいので、port-sideに変更されたのだ。右舷が赤ランプ、左舷に緑ランプをともすのも共通だ。日本船主協会のホームページに詳しい。
日本は海に囲まれた島国だ。日本列島には、海岸線の長さが100m以上の島が6、852ある。人が住んでいる島は400程度。日本は多くの島と陸地面積の10倍の水域で成り立っている。しかし、最近オセロの四隅とも言える島が、他国色にひっくり返されそうだ。色が変わると水域を失う。オセロ盤右隅の沖の鳥島も危うい。自然消滅の危険もさることながら、「島」ではないと主張する国もある。島でなければ、排他的経済水域を失う。たかがキングサイズのベッド一台分の広さにすぎない島の色が裏返るだけで、我が国の水域面積の約9%を失う。水域を失うと魚だけでなく、海底の蟹や、地中に眠るエネルギー資源も失う。日本の、エネルギーの自給率は1%にもみたない。多くの食物も自給率が低い。日本の輸出入の99%以上が海上輸送だ。海上輸送がストップすると日本はエネルギーのみならず、冷奴も食べられなくなるかも知れない。豆腐用大豆は75%を輸入に頼っているからだ。
海運は、「島国日本」の安全保障の重要な担い手なのだ。東日本大震災時の話を持ち出すまでもない。友人によると、放射能が漏洩したとき、被害を恐れた外国船は、京浜港に寄り付かなかった。国交省の報告では、震災から6月26日までの間に京浜寄港を取り止めた外国船は44隻。京浜で揚げる予定のコンテナは他港で揚げられ、内航船で京浜に輸送された。1000万人以上が暮らす地域への放射能被害妄想でこの状態だ。万が一周辺他国と日本が有事の際、どこの国の船が、エネルギーや食料を日本に届けるのだ。
国は、「日本船舶及び船員の確保に関する基本方針について」で、必要な外航日本船舶を450隻、外航日本人船員は5500人とした。災害や有事の際に、国内輸送を確保するために必要であれば、国は、日本の主権が及ぶ日本船に対して海上運送法上の航海命令や、国民保護法に基づく従事命令などを出すことが出来る。日本国籍の外航船舶は1980年には1176隻、日本人船員は3万8千人だった。しかし、2010年には船舶は123隻、船員は2256人まで減少した。国はこの事態を重く受けとめ、9月衆議院本会議にて日本籍船や船員を確保するための制度を拡充し、関連法案などを成立させた。
残念だが、船舶による輸送は航空貨物でも陸上輸送でも代替できない。
1982年のフォークランド紛争時、クィーンエリザベスII号はイギリス海軍に徴用され、人員、物資を輸送したのだ。
【船の絵は商船三井(株)のHP「暮らしを支えるいろいろな船」からお借りしました】