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蛙鳴蝉噪(食事編)

2012 OCT 22 17:17:44 pm by mtsuzaka

横浜でオクトーバーフェストが開催されていた。ミュンヘンで開催される横浜版だ。横浜は、いつもの「行儀良い」日本人ばかりだが、ミュンヘンでのオクトーバーフェストは「良いドイツ人」ばかりになる。「日本とドイツは同じ敗戦国だから仲間だ」(東賢太郎氏の「フランクフルト空港の謎」を参考」)などと体の大きなオヤジに肩を組まれて押さえつけられてしまう。日本でいう「無礼講タイム」だ。そんなことある訳ない。彼らを見て自身の戒めにしようと思ったが、日本酒が二合を超えると戒めを自ら解いてしまうのも、私の長所だ(と自分では思っている)。酔っ払いはどこの国でも同じだ。

オクトーバーフェストの前、9月~10月では、フェダーヴァイサーと呼ばれるドイツワインヌーボー(日本酒の濁り酒のようなもの)が販売される。このフェダーワイン、醗酵途中なので瓶の栓を閉めていない。1ダースほど買い求めて車のトランクに入れると、えらいことになる。キリスト教精神旺盛なドイツ人年配者の目には、私のような単身赴任の日本人は家族と休日を過ごすことができない気の毒な人間と映る。土曜日の夜(といってもまだ明るい)、庭から声がかかり、食事をしに来いと呼ばれる。「行儀の良い」私は、フェダーヴァイサーを4~5本抱えて伺う。食事は非常に簡単だ。パンとスープとマッシュポテト、奥様のご機嫌が良いときは、茹でソーセージ位はでてきた。食事の時間は、夕方6時頃から10時位までかかる。しかし物を食べる行為そのものは30分程度だ。後は、ひたすら話す。そもそも、ドイツ人は料理が嫌いだ。パンとポテトとソーセージとザワークラウト(ミュンヘン地方のは、しゃきしゃきしていて美味しいのだが)があれば十分だ。その証拠に貸し家(家具付きは一般的ではないものの)にはキッチンにシンクが付いていない。自分で持ち歩くのだそうだ。家具付きでもシンクなどは小ぶりなものが多い。日本人に家を貸すと、夕食の支度でキッチンが汚れるのを嫌がる人がいるとも聞いた。余談になるが、奥様にはごみの捨て方までご教示いただいた。日曜日の朝、私がごみを捨てた40秒後に、彼女は私の家のドアをノックしていた。得体の知れない東洋人である私をしっかりと監視していたのだ。

2年後、愛着がわいたフランクフルトからロンドンに移った。ロンドンでは賞味期限切れの日本食材がふんだんに手に入った。背の小さな大人もたくさんいてフランクフルトよりも、快適に過ごすことが出来た。あるとき、会社の上司がきた。イギリス料理を食べたいというので、スコットランド出身の取引先とシティーで一番古いパブ”Ye Olde Cheshire Cheese”でランチを取った。お勧めのホームメード スペシャルを注文。クリーム(小麦粉?)シチュー具無しに、煮込んだキドニーが入っていた。お連れした方は、長旅の疲れで食欲がなく口をつけなかった。マドンナ御用達(と噂)のThe Ivyなるレストランのジェリード イールも大変な味だった。同じイール料理でも、デンマークなど北欧ではぶつ切りにしたうなぎをフライパンで焼いて、アクアビットでいただいたことがある。こちらは、骨は多かったものの上の2つの料理よりは私にとって口にし易かった。くだんの上司は長旅疲れが取れず食欲はなかったようだが、スコットランド人の早口英語で空腹が満たされたのだろう。私はといえば、どぶろくの焼酎割りを一気のみした(ことはないが)ような気分だった。

ドイツやイギリスに住む友人達の食事は、概して(日本と比べると)質素だ。レストランでのディナーも特別なケースを除くと簡単な食事しかしない。 しかし、話しをする時間は格段に長い。シティーのパブやフランスのカフェでは、ビール、ワイン一杯で長時間話す。ディナーではデザートから後が長い。彼らにとっての食事の時間は会話の時間なのだ。以前飛行機で隣に乗り合わせたフランス系の美人が、食事の時間だけ私に話しかけた理由がようやく分かった気がする。

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