Sonar Members Club No.9

月別: 2013年2月

蛙鳴蝉噪(今年こそ)

2013 FEB 28 13:13:09 pm by mtsuzaka

久しぶりに懐かしい映画を観た。天才コルネット奏者のノンフィックションといえば、タイトルが思い浮かぶ方もいるはずだ。順風満帆だった人生から、娘の病気を支えるため、音楽から離れて造船所で働く。周囲の勧めもあり、再起しようとするが、なかなかうまくいかない。そんな時、昔の友達が応援に駆けつけ見事に再起を果たしハッピーエンドとなる。

私はハッピーエンドの映画が好きだ。性格が単純なせいもあり、スカッとしたほうがいい。ホームズもアイアンマンもインディージョーンズも好きだ。ヒーローが「ご印籠」を出す前には、必ず苦難の時期がある。雌伏の期間が長ければ、落ち込んだ谷が深ければ、ハッピーエンディングの効果も相対的に高まる。呉に敗れた越王だって国を再興するまで熊の肝を20年も嘗めた。

日本の経済も雌伏すること20年。最も暗いといわれる夜明け前には、つらい困難に直面した。待ちに待った再起の時期だ。アベノミクスもレッド・ニコルズ同様、友人の支えがあった。日本が実施する金融緩和政策に理解を示す発言がいくつか報道された。尤も現実の世界の友人は利害関係があるからだ。日本がこのまま体力を失って経済二流国になると、ご近所さんへの牽制が効かなくなる。「父親」の権威を失いつつあるアメリカは、景気も回復してきており、株価も史上最高値までもうすぐだ。おまけに、赤字の最大原因であったエネルギーも自分の国でまかなうことができる。しかし、小姑が多く、以前のように軍備を拡張したり、東奔西走するわけにもいくまい。だから日本に対しては、「金融緩和の結果としての」円安ドル高は容認するだろうし、それなりに軍備(防衛力)の強化もしてもらいたいはずだ。ロシアは資金不足の折、シベリア開発のスポンサー探しに苦慮している。欧州も金融安定化のための債券を日本に買ってもらうにこしたことはない。

麻生財務相は、「おれたちはまだ何もしていない。ちょっとアゴでするだけで株価は2割強上がり、為替もスルスルと円安になった」(2月14日 朝日新聞デジタル版)。株価は戻ったとはいえ、最高値から3分の1以下だ。日経平均は1989年12月末に38,957円99銭の高値をつけて以来下がりっぱなしだ。ドルは対円で140円だった。この頃のニューヨークダウは2732ドルだ。20年で5倍になった。

「ドルやユーロを下げても、俺たちは文句を言わなかった。(円相場が)10円か15円戻したら(欧米が)文句を言うのは筋としておかしい」(産経ニュース1月28日)服装のセンスはいざ知らず、このご意見に私は賛成だ。

今年は、将来「みんな、末永く楽しく暮らしました・・」とハッピーエンディングを伝えることが出来るかどうかの正念場を迎える年になりそうだ。

蛙鳴蝉噪(地図)

2013 FEB 8 16:16:07 pm by mtsuzaka

学生が青山の大学の開門を待っていた。まともに大学に通わなかった私にとって驚嘆すべき光景だが、学部生ではなかった。受験生だ。寒い中、参考書を見ながら待っていた。私も人並みに受験勉強をしたはずだが、ほとんど覚えていない。新聞に掲載されたセンター試験の問題も眺めた。世界史の問題も英語のクロスワードパズルも一緒だ。正確には覚えていない。自分が住まない国の何百年も前の王の名前まで覚えなきゃいけない受験生も大変だ。イギリスに住んでいるほとんどの日本人は、ヘンリー八世の全員の妃の名前を知らなくとも、全く不便を感じなかっただろう。だからアフリカの古代文明を知らなくとも、私の残りの人生で不便を感じることはないはずだ。

もちろん、知識に無駄なものがあるはずもない。イギリスに住むなら少しはイギリスの歴史を知っておきたい。フィッシュ&チップスを食べるときは、たっぷりビネガーをかける事を覚えておく事だって必要だ。英語だって、算数だって必要だ。覚えておけば良かったと後悔する知識も人それぞれあるだろう。 私の場合は、地理だ。国の名前を聞いて場所が思い浮かばなければ、ソロモン諸島の地震で起こる津波を警戒したり、北京のスモッグに注意なんかできやしない。若い時の仕事の影響も大きい。港の場所や地域、港間の距離感を必要とされた。紛争やハリケーンなどにも影響されたからだ。

アフリカの内陸国などほとんど知らなかった。                          東京の真東を、ロサンゼルスと言ってかなり恥をかいた。                    セネガル(西アフリカ)とブラジルの距離が「すごく」近いことを知らなかった。                    だから、「地球オンチ」と言われた。ホッピーを飲みながら、大型外航船の一等航海士(当時)の先輩が「いろは」から、教えてくれた(現在は島原湾の船舶水先人のはず)。

私の地理のセンスが極端に乏しかった理由は、勉強不足と好奇心不足が主因であることは間違いないが、もうひとつの理由は地図だ。中学校、高校で使用する世界地図は大体がメルカトル図法だ。日本で使われるから「世界の中心」は日本だ。その為地図の両端にある大西洋が「切れて」しまう。大西洋の狭さや、アフリカ大陸と南アメリカが近いなど分からない。地図では、東京の真東は(大体)ロサンゼルスだ。「札幌ーミュンヘンーミルウォーキー」(同緯度だ)といったビールのCMもあったから、疑いもしなかった。でも、違う。

アフリカ内陸部の地名など読めなかった。アフリカだけじゃない、欧州や中南米も読めない地名が多かった。今ならGoogleで地名を入れると地図や詳しい説明が出てくる。 ナスカの地上絵の航空写真だって見ることができる。当時は引き出しから、地図を引っ張り出して、「xx頁のN5」 とかの升目の中の名前を探しだした。大分詳しくなった。 そのせいか、今では、地図を見ることが好きだ。変なやつと思われなければ、趣味は「地図を見ること」と答えても良い。地図を見ると思い出すこともあれば、想像できることもある。

アメリカの副大統領候補だった女性のように、アフリカを国と言うのは、ご愛嬌ではすまない。だから、小学校に入った息子へのプレゼントは、地球儀だった。彼らが地球儀をくるくる回す遊び道具にしたことは創造力のなせる業だ。しかし、それ以上に発展しなかったのは、私から遺伝した知的好奇心の欠如のせいなのだ。

蛙鳴蝉噪(バレンタインデー)

2013 FEB 5 17:17:12 pm by mtsuzaka

                「土用の丑の日の鰻」か「バレンタインデーのチョコレート」か。200年以上も前の鰻に関するキャッチコピーは、現代では既に常識。旬かどうかに関わらず、いまや、鰻の蒲焼は夏の食べ物。世帯支出金額(年間)の大体4割が土用の丑の日期間に集中する(2003年総務省統計トピックス)。その土用の丑の日と多くの国で標準のバレンタインデーを一緒にするのは失礼だが、特定の期間中に特定の商品が集中的に売れると言う点では共通だ。                                              日本チョコレートココア協会の統計によると、バレンタインデー期間のチョコレートの売上高は、年間売上高の約10%~15%程度と推定されている。 10年前の統計だが、最近でもさほど変わらないだろう。期間中の売上げ金額は500~600億円だ。だが、日本人の一人当たりチョコレート菓子の消費量はさほど多くない。2011年のチョコレート菓子消費国ベスト3は、1位がドイツ、2位がスイス、3位がイギリスだ。確かにドイツやスイスのケーキはチョコレートが分厚くコーティングされているものが多い。フランスは、掲載22カ国中、8位。日本は、20位。ドイツの5分の1の消費量だ。一番少ない国は意外にもオーストリアだ(ザッハホテルで食したザッハトルテは甘すぎて食べられなかったが)。

バレンタインデー・チョコレートの広告を見て、25年前、フィナンシャルタイムス紙に日本のバレンタインデーが紹介されていたことを思い出した。当時の上司は、私達の貧弱な英語力を鍛えるため、英文和訳の「業務」を課していた。その中の記事のひとつに、たまたま日本のバレンタインデー特集があった。 内容はほとんど覚えていない。ただ、日本では、バレンタインデーに女性が男性に愛を告白してチョコレートを贈るという珍しい風習があること、ブームの起源はメリーチョコレートが百貨店(伊勢丹)でハート型のチョコレートを売り出したことと、紹介していた(たしか)。

 

 『1958年(昭和33年)1月、パリに住む知人から受け取った一通の絵葉書にヒントはありました。「ヨーロッパではバレンタインデーといって、男女が花やカードやチョコレートを贈りあう習慣がある。」  これをきっかけに、メリーチョコレートはその年、東京の百貨店で初めてのバレンタインセールを行います。しかし、当時はバレンタインを知る人もなく、3日間で50円の板チョコレートが3枚と20円のメッセージカードが1枚、たった170円の売上。それにもめげず、翌年もチョコレートを販売することにしました。
「ヨーロッパのように、愛の日バレンタインデーにチョコレートをお買い求め頂くにはどうしたら良いのだろう。」                                        悩んだ結果、まず、チョコレートをハート型にして、その上に贈る人と相手の名前を入れられるサービスを実施、さらに 『年に一度、女性から男性へ愛の告白を!』 というキャッチコピーを付けました。
  “自ら告白をする”ということが一般的ではなかった当時、このコピーはとてもセンセーショナルなものでした。しかし、女性の社会進出が進みはじめ発言力が高まった時代と相まって、やがて週刊誌なども特集を組み、「女性が愛を告白してよい日」としてバレンタインデーは日本に浸透していきます。恋心を後押しした日本のバレンタインデーは、女性に支持されその後定着し、現在日本でみられるような“女性から男性にチョコレートを贈る”スタイルになりました。(メリーチョコレートHP http://www.mary.co.jp/ より抜粋)』

 強烈に記憶に残っていたのが、「3日間のセール期間中170円の売上げ」だった。まさに、千里の道も一歩からだが、「(女性)自らが告白をすることが一般的ではなかった当時」に新しい市場を創ったことは、「土用の丑の日の鰻」に匹敵しよう。ただし、その「常識」を享受するには、魅力以外にも年齢制限があるようだが・・・。

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