Sonar Members Club No.15

月別: 2016年8月

ポンペイ通信 酒

2016 AUG 18 21:21:28 pm by トム 市原

  北ポナペには「国酒」があります。
 シャカオと言って胡椒科の根を石で叩き、ハイビスカスの木の皮で包み、その絞った物を飲みます。
 全ての公式行事には必ずこれが出ます。
  一種のアルカロイドを含み、ある程度飲むと軽い陶酔感があり、アルコールと同じように倦怠感が出てきます。
従ってポナペには飲酒運転の罰則がありません。
 新大統領のパーテイに呼ばれたときは新大統領本人はもちろん、護衛のポリスも飲み、パトカーが道路を左右にふらふら揺れながら送って行きました。
 あるアメリカ人が人身事故を起こして困り、村の酋長に相談すると、シャカオを持って被害者の所へ行き、双方で飲み交わしました。
加害者のアメリカ人が「誠に申し訳なかった、この償いをどのようにしたら良いでしょうか?」
被害者側の代表が「シャカオを飲み交わしたのでこれであなたとは身内になりましたので、この事はもう済みました」
 これは日本の「手打ち式」と同じ考え方ですね。
 以前は1$で飲み放題のシャカオバーが有って、へべれけになるまで飲んで這うように帰る輩が多かったのですが、今では1本5$の瓶売りを買って家で飲む人が多くなったようです。
岩波新書の「茶の歴史」を読むとポリネシアなどの東の方から伝わって来たようです。かの地ではカバー、ポナペでシャカオ、マリアナでチュバ、そして日本でチャもしくはシュ(酒)、いずれも言語学的にはCが入って神に捧げる飲み物として伝わって行ったようです。
 フイジーでは市場に粉末が大量に売られていました。そこでは必ず飲み終わった後には「カバー」と言ってポンと柏手を打ちます。ポナペでは必ず目をつぶって飲むのが本式です。
公式の場でこれを落とすと、さあ大変ポナペ中を探し回ってマジッシャンを探しだし祈ってもらわなければならないのです。
 マリアナででは シャカウの木が無いので穀物をかみ砕いて発酵させたものを飲みますが、今ではそれはありません。バヌアツでは今でも当たり前らしく、JAIKAのシニアボランテアはそれを飲み、後で作って居るところを見てゲーしたそうです。
 それも可愛い巫女さんならともかく、ひげもじゃのむくつけき男どもだったそうです。
 赤道直下の島々ではほとんどアルコールが禁止されていますがチュッバだけは許されています。
 これは椰子の花序に瓶を差し入れ一晩置くと1リットルほど溜まり、それを陽向へ出しておくとアルコールが発生します。
試飲しましたがおそらくアルコール分は1,2%しかないでしょうがそれでも普段強い酒を飲んでいないのでこれで充分酔うそうです。

日本でも巫女さんが噛み砕いて作ったそうですが、日本語の「唾」の語源はマリアナのチュバから伝わって来たそうです。

ポンペイ通信 潜水病

2016 AUG 11 10:10:45 am by トム 市原

これから夏に向かって水の事故が多くなります。
特にダイビングは一歩間違えると死に繋がります。
以下は朝日新聞より求められた文で明日12日の医療コラムに乗るそうです。

 ●50年前のダイビング経験
 ダイビング歴五十数年になります。私が20代の頃は、まだライセンス制度はなかったので、潜る時間や深さは、自己判断でした。
 知識もろくになく、「急に浮上するな、自分が吐いた泡を追い越さない速度でゆっくり」という程度の認識しかありませんでした。
 潜る深さを計るのも、簡単な水深計だけが頼りでした。
 ある日、伊豆半島で水深30メートルほど潜ると、写真撮影に夢中になってしまい、酸素ー空気が少なくなって、呼吸が苦しくなりました。
 急上昇してから、車で帰る途中、ひざがちくちくと痛み始めました。「これは窒素がたまったな」と思い、車のヒーターを全開にしてひざに当てていると、1時間くらいで治まりました。
 体脂肪の多い人は、脂肪に窒素がたまりやすく、浮上後に症状が現れやすいといいます。一般的には関節などの毛細血管にたまりやすいようなので、注意が必要です。
(ミクロネシア 男性 75歳)

 3年前にはこんな事がありました。実名をいれます。
 東京海洋大学の佐藤教授(60歳くらい)がポナペに珊瑚の生息調査に来て、ミクロネシア大学からサポートを頼まれ一緒にもぐりました。
 水深15mで、ふと後ろを振り返ると教授がパニック状態で暴れ、レギュレーター(呼吸器)を外しています。
すぐさま捕まえ、羽交い締めにしてレギュレーターを口に押し込み、パージボタンを押して強制的に空気を送り込みました。そしてゆっくりと上昇し、ボートに引き上げました。
 落ち着いてから様子を聞くと、糖尿でめまいを起こしたそうです。
 小生は思いきり怒り、今後は絶対に潜らない事、そうしないと貴君は良いかも知れないが、周囲に多大な迷惑を掛けるからと、強く言いました。
 その後はポナペに来ても小生に声を掛けてきません。

 長いダイビング歴の内、身近な人が水中で亡くなり、同行した人たちの気の毒さは目も当てられません。
 フイジーでは別グループで潜っていたアメリカ人が食べたものを水中でもどし、誤嚥により亡くなりました。
 日本と違って誓約書を書いているのでツアー会社の責任はそれほど追求されなかったようです。
 日本では同行した人が亡くなりました。日頃、アスレチック、ヨガなど体を鍛えていましたが、自分の体力を過信していたようです。友人としてご家族に申し上げる言葉もありません。
 保険も6m以上の深さでは対象にならなかったようです。

 日本人に欠けているのはやはり「安全意識の欠如」では無いでしょうか。
 道路のセンターライン、ガードレール、それに沢山の法規が有り、それから踏み外すとペナルテイがあり、それでも事故がありますね。
 ここポナペでは全てが自己責任で、ボートで沖へ出ても万が一の事があっても、誰も助けてはくれません。
 この20年で2人の日本人が横波を食らって事故を起こし、亡くなっています。

ポンペイ通信 パンの実

2016 AUG 4 20:20:01 pm by トム 市原

昔「戦艦バウンテイン号の反乱」という映画が有ったのを知っている方も居ると思うけど、これにパンの実が登場する。
英国支配のインドの農場の奴隷に食わせるため、戦艦を使ってタヒチ島から「パンの実の苗」を大量に運んだ。
戦艦のブライ艦長はその使命を達成するため、過酷な規律を敷き乗組員をしごいた。
あまりの厳しさに反乱が起き、ブライ艦長と士官達はわずかな食物と共に本船を追放された。
19人の乗組員たちは1日スプーン1杯の水とマッチ箱程度の食物で過ごし、盗み水をした者は容赦なく銃殺された。
41日間の漕艇の後、東チモール(オランダ領)へたどり着いた。その時のドクターの記録に寄れば収容されたときの排便がうさぎの糞程度だったそうだ。
人間の食べて居る食物の内、必要な栄養素を除けば排泄にはいくらも無かったのが実証されたそうだ。
さて、本船を乗っ取った反乱軍は東へ行き、ピトケアン島ヘ原住民と共にハーレムを築いた。
やがてイギリス政府が海軍を派遣して島を襲い、全員を処刑した。
 今もその子孫が生きて居て、観光客に語り継いで居る。

 本題のパンの実は直径20~30cm、果物で有りながら熱処理して食べる。調理法は石焼きが一番うまい、日本の石焼き芋に似ている。
 煮るのはココナッツミルクと一緒にボイルする。
 その他、未熟な実を摺り下ろしバナナの葉に包み地面に埋める、やがて発酵してどろどろになる。ポリネシアでは「ポイ」と言う、なれないと臭くて酸っぱくて食べにくい。
 更に日にちを置くと玄米パンそっくりになる、これは我々にも食える。
 更に1年以上置くと虫が沸き、固まり、味もブルーチーズそっくりになる。これをシーぜと呼ぶが、Cheesと同じ語源になるのではないか。
 年2回のシーズンに実ると、家族8人でも食いきれず、又、飽きるのか転がって蹴飛ばしている。
 それを拾ってきて発酵させ蒸留すると焼酎が出来る。
 誰もやっていないので、作って農業博覧会に出品すると大騒ぎになり、大統領まで試飲に来て「これを企業する者には優先的に融資するように」と言ってくれた。その後CESと政府機関で講演を頼まれ、作り方を披露した。
 この趣旨は島で売られている安酒(ラム、テキーラ、ウイスキーなど)はほとんどが合成酒で米国では販売できない代物だ。ほとんどが肝臓をやられ、重病になる。
自分たちの酒は自分たちで作ろうと教えたのだが、其処まで手間暇を掛けてまで作る人は少ないようだ。

パンの実 焼酎

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