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ポンペイ通信 独白

2018 JAN 19 21:21:33 pm by トム 市原

胡椒の乾燥で忙しくてメシを炊くのを忘れていた。
そうだ、乾蕎麦があった。
湯を沸かし蕎麦を出すと妙に黒っぽい。
よく見るとそば君 全身カビだらけ、これしかすぐ食える物は無いので、湯に放り込むと真っ黒。
出して水で良く洗い再度煮込むと、ばんざーい!! 食えた。
カビ毒は怖いと言うけど、未だ何ともない。

終戦後の黄変米からくらべりゃたいした事はないだろう。

オーストラリアで捕虜になった日本兵は支給された米が黄色、赤色のカビが生えた米だった。
「こんなもの食えない」と文句を言うと「おかしいなあ豚は食ってるぞ」と、言われたそうだ。

戦後の話をすると代用食と称するものが配給されて、寒天で固めた20cm位の醤油色でひじきが入って居る。
まずくて食えた物ではない、さすがにお袋も捨てた。

昭和40年頃まで床屋の髪の毛を買う業者がいて、これからアミノ酸を抽出して醤油を作るそうだ。
今でも中国では当たり前らしい。

その他、見なくなった物に「鋳掛け屋」露天で鍋釜の穴を塞ぐ人。
「ばくだん屋」配給のトウモロコシを持って行くと釜に放り込み、火で圧力を高め、頃合いを見計らって蓋をあけると「バンッ」と大きな音がして、瞬間にはぜたのが金網の袋の中へ勢いよく飛び込んでくる。
金は取らないで持って来た穀類の一部をもらっていたらしい。
洟垂れ小僧どもは耳を塞ぎながら遠巻きにながめていた。
今で言うポップコーンの事だ。
親の目を盗んでは女中にせがんでトウモロコシを持って行った悪ガキだった。

「くず屋」背中に竹籠を背負い、落ちている紙類を拾い歩き、それを仕切り屋に売り、なにがしかの銭にする。
「モク拾い」落ちているタバコの吸い殻を集め、再生して売る商売だ。
吸いながら歩いて居る人を後ろから附いて歩く奴を見かけた事がある。

その他、天秤棒をかついだ「金魚屋、風鈴売り、魚屋」が来る。

家に子供を背負った女が来て、お袋に「米軍から支給された石鹸を売り歩いているので買って欲しい」
あわれに思ったのか数個買った、MAID IN USAと書いてある。
しかし、入浴に使うとすぐに溶けてしまう、包み紙をみると Maid in USAの行を変えて、小さくOUITA,、何のことはない 大分県宇佐市の事だった。

電柱の張り紙にも色々あった。

「尋ね人」「女中募集」「犬猫買います」猫は三味線用、犬の皮はチョッキ、肉は食用に貴重なタンパク源だ。
お袋が「ハンバーグを作ってあげるからあそこのマーケットの合い挽きを買っておいで、あそこの肉屋が一番美味しいから」
数日してから犬肉を混ぜていることがばれて挙げられたそうだ。
道理で河原に遊びに行くと犬の骨がごろごろしていて、当時貴重なドラム缶も転がっていたっけ。

昭和35年頃はまだ上野の地下道には浮浪者、今で言うホームレスが所狭しと寝転んで居る、中には8歳くらいの女の子を連れた男もいた。
哀れに思ったけど、その後今ではどうしているのだろう?
東北、北海道出身者が多く、すこしでも故郷に近い上野に集まるそうだ、人間の本能かな?

酔って前後不覚になると地球の自転と反対方向へ歩くそうだが、西室様、本当ですか?

浮浪者の事は「ルンペン」とも言った。
ドイツ語らしいけど「ルンペンストーブ」も有った「一度大量の石炭を入れると後は何もしなくて済む」が由来らしい。

不動産屋の張り紙に「貸間有ります、一畳千円」当時は畳一枚分が千円の通り相場だったらしい。
大学へ通うために田舎から出てきた友人が不動産屋の「5畳位千円」を見て、確かめもせず飛び込んで金を払って教えられた家に行くと、板敷きの長い廊下が千円だった。
寒いし、他の部屋の住人が寝て居るそいつをまたいで厠へいくので参ったそうだ。

ああ、昭和は遠くなりにけり。

              埴生亭主人独白。

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