Sonar Members Club No.22

日: 2015年3月9日

直線的な国境、カナダとアメリカの国境ー領土問題ー

2015 MAR 9 15:15:27 pm by 中村 順一

国境とは言うまでもなく、国と国との境であり、ある民族と違う民族との境であるケースも多い。国によっては、大きな山が国境になっていたり、大きな川が国境になっていたりする。自然の地形を基にした国境が多いのだが、直線的な緯線や経線を使った国境も世界中に見られる。

例えばアフリカである。エジプトとスーダン、エジプトとリビアなどである。1884年にビスマルクが欧州諸国に呼びかけてベルリン会議開き、アフリカの植民地分割の基礎を決定した。よく言われるように、欧州諸国は自分の分け前の確保ばかりを考え、アフリカの民族(部族)やその文化を考慮せず、経度や緯度に沿って地域を分け合ったため、直線的な国境線が数多く生まれてしまった。また中東もしかりで、これはオスマン帝国の分割を決めた1915年のサイクス・ピコ協定がベースになっている。何という自己中心的な発想であろうか。これが20世紀まで、平気で行われていた、領土の分捕り合戦なのである。

世界最大の国境はカナダ=アメリカ合衆国の国境である。国境の長さは8891KMにも及ぶが、カナダにとっては唯一の国境である。カナダは唯一の国と国境を接する国としては世界最大の国家である。現在のカナダ=アメリカ国境はアメリカ独立戦争を終わらせた1783年のパリ条約で創られた。その後、英国領北アメリカとアメリカ合衆国は共に西方への領土拡張を競い、1818年の2国間協議により、カナダのオンタリオ州とアメリカのミネソタ州の州境にあるウッズ湖の北西部分からロッキー山脈まで北緯49度線に沿って国境が西に延伸された。その後、両国の主張は食い違っていたが、1846年のオレゴン条約で解決され、ロッキー山脈を西に過ぎても北緯49度線を国境とすることになった。こうして世界最長の直線国境が誕生したのである。

カナダとアメリカ合衆国の国境は、調べてみると興味深く、山岳地や深い森林地帯、大草原、農地、5大湖、セントローレンス川、さらには太平洋、大西洋、および北極海の水上国境等さまざまだ。アフリカ・中東の事情に似ているが、両国の国境はモホーク族インディアンの領土アクウェサスネを2分してしまっており、バーモント州とケベック州では幾つかの建物の中を通っている。これらの建物が造られたのは国境が正式に決められる以前のことだった。メイン州とニューブランズウィック州の国境は古いゴルフ場の中を通っている。

あまり報じられていないが、カナダとアメリカにも国境論争は存在する。①ボーフォート海(アラスカ州とユーコン準州)、②ディクソン・エントランス(アラスカ州とブリティッシュコロンビア州)、③ファン・デフカ海峡(ワシントン州とブリティッシュコロンビア州)、④マチアス・シール島とノースロック(メイン州とニューブランズウィック州)等である。ボーフォート海では石油探鉱が発見されているが、領海に関し、カナダとアメリカの主張が異なるため、石油採掘すら中断している状況だという。日本とどこかの国みたいではないか。

領土問題は世界中に存在する。カナダとアメリカの例を見ても、経線や緯線での直線的な国境も、領土問題を発生させないためには意外に知恵なのかも知れない。もちろん、帝国主義的な植民地分割は論外だが。

国境を考える Ⅵ

 

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